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リンカーン ジョシュア・ウルフ・シェンク(著) - 明石書店
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リンカーン うつ病を糧に偉大さを鍛え上げた大統領
原書: Lincoln's Melancholy: How Depression Challenged a President and Fueled His Greatness

発行:明石書店
四六判
452ページ
上製
定価 3,800円+税
ISBN
978-4-7503-3809-5
Cコード
C0022
一般 単行本 外国歴史
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年7月
書店発売日
登録日
2013年7月17日
最終更新日
2013年9月20日
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書評掲載情報

2013-08-25 東京新聞/中日新聞
評者: 横山良(甲南大学教授・アメリカ史)

紹介

奴隷制を廃止し、南北戦争での国家分裂の危機を回避した偉大にして稀代の大統領・リンカーン。高く評価される政治手腕、奥深い間尺の背景にはリンカーンのもつ鬱病があった。鬱病のハンディキャップを耐える精神操作によって、視野と才幹の深みに到達できたという逆説を膨大な資料に基づき開示した異色の評伝。

目次

 プレリュード
 序文

第1部
 第1章 世間はあいつはクレイジーだと言った
 第2章 ものすさまじき天与の才能
 第3章 今生きている人間の中で、私ほど惨めな人間はいない

第2部
 第4章 セルフ=メイド・マン
 第5章 欠陥? いや不運だ
 第6章 理性の統治
 第7章 わが気塞ぎとうつのはけ口


第3部
 第8章 その正確な形と色
 第9章 われらが潜り抜ける炎の裁き
 第10章 われらにも智慧は浮かぶ

 エピローグ
 後記
 謝辞
 原注
 参考文献

 訳者あとがき

前書きなど

訳者あとがき

「セルフ=メイド・マン」? 「セルフ=メイキング・マン」では?

○同時代人の見たリンカーン像
 同時代人が自分らの世代を代表する人物に挙って夢中になる場合と、同時代では人気にむらがあったのに、後世になればなるほどその人物が輝きを増してくる場合がある。
 リンカーンは明らかに後者の場合で、それだけ彼が幾世代も経ないと理解できかねる、奥深い間尺を持ち合わせていたことになる。
 いや、黒人の人権がほぼ確立されたはずの後世のわれわれの目には、リンカーンが当時置かれていた微妙な立場は奴隷や黒人に対する彼の曖昧な姿勢にブレとなって表れ、性急に彼の差別性を浮かび上がらせてしまう傾向すらある。周知の通り、リンカーンは奴隷制廃止より、奴隷制ゆえに起きた合衆国連邦の瓦解防止を優先させた。つまり、連邦内で奴隷制を漸進的に廃止していくことが大前提で、連邦が消えてしまっては元も子もない。しかし、この基本姿勢は、渦中に置かれた黒人にはもどかしいかぎりで、同時代有数の黒人活動家フレデリック・ダグラスはリンカーンへの強い失望を口にした。
 それはともかく、本書はリンカーンのうつ病がその間尺の奥深さに関係していた構造を克明に説き明かして、読む者を圧倒する。訳者は本書を7年ツンドク、2012年初めに読了と、ずいぶん遅れた。この間、これだけの磁力を持つ作品が、日本で翻訳されなかったことに驚きを禁じえなかった。
 訳者の場合、リンカーンの間尺よりも、後世の彼の「神格化」によって彼に対する関心が麻痺しており、書評依頼など受け身で読んだリンカーン本ではその麻痺から十分に解放されず、本書によって初めて麻痺から劇的に救出された。一挙にリンカーンが身近な存在に切り替わったのである。つまり、うつ病というハンデイキャップこそ、それに耐える精神操作によって、リンカーンが余人には真似できない視野と才幹の深みに到達できたという深遠な逆説を、著者がわれわれの眼前に開示してくれた(キーツが言う、おなじみの「ネガティヴ・ケイパビリテイ」の具現でもある)。この開示によってこそ、リンカーンは訳者には一挙に身近な存在に変貌を遂げた。(……)

 (…後略…)

著者プロフィール

ジョシュア・ウルフ・シェンク  (シェンク,ジョシュア・ウルフ)  (

著名な評論家、ワシントン・カレッジのオニール文学館館長。彼の論考は『ニューヨーカー』、『アトランティック・マンスリー』、『ワシントン・ポスト』、『ニューヨーク・タイムズ』その他、数多くの媒体に掲載されてきた。彼の論考「ぼく自身のメランコリー」は、全米ベストセラー『神聖ならざる亡霊――うつ病の作家たち』に収録された。
シェンクは、2006年のヒストリー・チャネルの記録映画『リンカーン』の主任コンサルタントで、「エイブラハム・リンカーン生誕200年委員会」の諮問委員の1人。これまで浴してきた栄誉は、カーター・センターの精神衛生ジャーナリズム分野でロザリン・カーター・フェローシップ、「ニューヨーク芸術財団のノンフィクション分野のフェローシップなどがある。シェンクが講演する分野は、精神衛生問題、歴史、現代政治・文化である。

越智 道雄  (オチ ミチオ)  (

1936年愛媛県生まれ。明治大学名誉教授。日本翻訳家協会評議員、日本ポップカルチャー学会顧問、日本ペンクラブ会員(元理事、元国際委員長)。
《主要著訳書》
著書:『ワスプ(WASP) アメリカン・エリートはどうつくられるか』(中公新書)、『ブッシュ家とケネディ家』(朝日選書)、『なぜアメリカ大統領は戦争をしたがるのか?』(アスキー新書)、『誰がオバマを大統領に選んだのか』(NTT出版)、『オバマ・ショック』(町山智浩との共著、集英社新書)、『アメリカ合衆国の異端児たち』『大英帝国の異端児たち』(共に日経プレミアシリーズ)、『ジョージ・ソロス伝』『覇権国家アメリカの中国「新・封じ込め」戦略の全貌』(共に李白社、発売元ビジネス社)、『オーストラリアを知るための58章〈第3版〉』『大統領選からアメリカを知るための57章』『ニューヨークからアメリカを知るための54章』『カリフォルニアからアメリカを知るための76章』(共に明石書店)ほか多数。
訳書:『ヴィジュアル・ヒストリー アメリカ 植民地時代から覇権国家の未来まで』(アレン・ワインスタインほか著)、『白人の歴史』(ネル・アーヴィン・ペインター著、共に東洋書林)ほか多数。

上記内容は本書刊行時のものです。