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紛争と国家建設 山尾 大(著) - 明石書店
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紛争と国家建設 戦後イラクの再建をめぐるポリティクス

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発行:明石書店
A5判
304ページ
上製
定価 4,200円+税
ISBN
978-4-7503-3776-0   COPY
ISBN 13
9784750337760   COPY
ISBN 10h
4-7503-3776-5   COPY
ISBN 10
4750337765   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年3月
書店発売日
登録日
2013年3月27日
最終更新日
2013年8月6日
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書評掲載情報

2021-06-19 日本経済新聞  朝刊
評者: 高橋和夫(国際政治学者)
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紹介

イラク戦争後のイラクで政治対立が継続しているのはなぜか、国家建設が進展しないのはなぜか。本書は「アクター間の関係性」に着目してこれらの要因を探り、戦後イラクの紛争と国家建設、そしてそれをめぐるポリティクスを実証的かつ多角的に描き出す。

目次

 図表一覧

序章 イラクにおける紛争と国家建設
 一.本書の目的
 二.国家建設とそのディレンマ
 三.戦後イラクにおける国家建設への視座
 四.本書の構成

第一章 イラク戦争と戦後政治プロセス
 はじめに
 一.占領統治期
 二.移行期政権――アッラーウィー政権とジャアファリー政権
 三.第一回国民議会選挙と内戦の勃発
 四.第一次マーリキー政権(二〇〇六年五月~二〇一〇年三月)
 五.第二次マーリキー政権(二〇一〇年一一月~二〇一二年六月)
 小括

第二章 民主化を主導する――シーア派宗教界の台頭――
 はじめに
 一.社会は生きていた――戦後の「原子化された社会」
 二.スィースターニーとイラクの民主化
 三.選挙と「イスラーム化」する社会
 四.連携するシーア派宗教界とイスラーム主義政党
 小括

第三章 政党を作る――合従連衡のポリティクス――
 はじめに
 一.「社会なき政党」と「政党なき社会」
 二.政党連合形成の制度的インセンティヴ
 三.「与党」の政策
 四.「野党」の戦略
 五.合従連衡と宗派主義の回避
 小括

第四章 代表を選出する――選挙のポリティクス――
 はじめに
 一.「政治的宗派主義」の勃興――制憲議会選挙(二〇〇五年一月)
 二.「政治的宗派主義」の拡大――第一回国民議会選挙(二〇〇五年一二月)
 三.イラク・ナショナリズムの勝利――第二回地方県議会選挙(二〇〇九年一月)
 四.票の分散と権力分有体制の構築――第二回国民議会選挙(二〇一〇年三月)
 小括

第五章 治安を回復する――部族のポリティクス――
 はじめに
 一.国軍・治安機関の再建とその蹉跌
 二.内戦と集権的治安管理体制の崩壊
 三.部族による覚醒評議会の形成
 四.政治参加と暴力装置の関係という問題
 小括

第六章 財政を運営する――利権配分のポリティクス――
 はじめに
 一.米国の新自由主義経済政策とその蹉跌
 二.新自由主義から利権配分型経済政策へ
 三.中央政府は経済政策をコントロールできるのか
 四.再配分のポリティクス――「二重の競合的パトロン・クライエント」構造の出現
 小括

終章 紛争と国家建設の諸相
 一.国家建設の蹉跌
 二.紛争と国家建設
 三.進展する政治制度構築
 四.ネーション・ビルディングという課題


 あとがき

 参照文献
 索引

前書きなど

序章 イラクにおける紛争と国家建設

 (…前略…)

四.本書の構成

 本書は以下のような構成で論を進める。まず第一章では、本書が分析の対象とする時期(イラク戦争が勃発した二〇〇三年三月から、第二次マーリキー政権において政治闘争が一段落する二〇一二年六月まで)の政治プロセスを、時系列的に概観する。それを通して、本書の議論の前提となる政治・社会的背景を説明することをめざす。具体的には、米軍のイラク侵攻後の暫定移行政府形成、選挙の実施、内戦の勃発、第一次マーリキー政権の政治運営、そして第二次マーリキー政権の形成などの重要な政治変動を俯瞰することになる。
 第二章では、戦後の国家建設のごく初期に民主化が導入されたことに注目し、外部アクターである米国が民主化プロセスをどのように進めようとし、それに対してイラク社会の内部アクターがいかに対抗したのかを明らかにする。とくに注目するのは、シーア派宗教界とその最高権威の戦略である。シーア派宗教界が、米国主導の民主化にどのように対処し、その結果、米国の民主化政策がいかに修正されたのかを分析する。これを通して、国家建設のごく初期段階で内部アクターが民主化の主導権を掌握したことが、国家建設にいかなる影響をもたらしたのかという問題を明らかにしていく。
 第三章では、政党政治に着目し、外部アクターが導入した政党政治の制度が、実際にどのように運営されていったのかを分析する。これを通して明らかになるのは、外部アクターによって民主化のために導入された分権的制度が、内部アクターによって換骨奪胎され、まったく異なる意図のために運営されるようになったこと、しかし、その再編された制度は、戦後イラクの独自の政党システムとして機能し始めたことである。
 第四章では、国民の代表を選出する選挙を詳しく分析することで、選挙が国家建設にいかなる影響を与えているかを明らかにする。とくに注目するのは、選挙が戦後イラクで最も重要な政治イベントとなった点、そして国民の代表を選出するはずの選挙が、回数を重ねるうちにまったく異なる意味づけを持つようになった点である。具体的には、それぞれの選挙にみられる特徴を浮き彫りにすることで、内部アクターの選挙戦略がどのように変容し、それが国家建設にいかなる影響を与えたのかという問題を解きほぐしていく。
 第五章は、治安に着目し、外部アクターが戦後イラクの治安維持のためにいかなる政策を遂行し、それに対して内部アクターがどう対抗したのかを分析する。ここで主として取りあげるのは、国軍や警察機構ではなく、治安の回復に主たる役割を果たした部族である。というのも、軍や警察などの国家機構の再建に失敗した米軍が、部族に依存した治安維持政策にシフトしたからである。これに対して、部族という内部アクターはどのような戦略で対峙し、その戦略が国家建設にいかなる影響を与えたのか、という問題が明らかにされる。
 第六章は、経済─実際には国家建設を進めるうえで必要となる財政とそれをめぐるポリティクス─に着目し、外部アクターが戦後の経済復興のためにいかなる政策を導入しようとしたのかを明らかにしたうえで、その政策が内部アクターによってどのように利用されてきたかを分析する。ここで明らかになるのは、外部アクターが経済復興のために導入した政策が、実際には旧体制下でみられた経済政策と酷似した構造を持つ配分政策へと再編されていったこと、しかしその運営においては、内部アクターの利害調整を促進する独自の財政政策へと発展していったことである。
 最後に終章では、各章で扱った民主化・政党政治・選挙・治安・経済(財政)という国家建設をめぐる五つのポリティクスを、(1)外部アクターの利害と政策、(2)内部アクターの利害と戦略、(3)外部アクターと内部アクターの関係性という「アクター間の関係性」にそって整理しなおしたうえで、それぞれの側面が戦後イラクの国家建設にいかなる影響を与えたのかを明らかにする。それを通して、戦後イラクで政治対立が継続しているのはなぜか、国家建設が進展しないのはなぜかという、本書全体の問いに答える。最後に、紛争と国家建設の実態と本質をどのように理解すべきかについて、本書の結論を提示することになるだろう。
 では、さっそく本文に入っていくこととしよう。

著者プロフィール

山尾 大  (ヤマオ ダイ)  (

1981年滋賀県生まれ。
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科一貫性博士課程修了(博士(地域研究))。
日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、現在、九州大学大学院比較社会文化研究院専任講師。
専攻は、イラク政治、中東政治、比較政治、国際政治。

〈主要著書・論文〉
『現代イラクのイスラーム主義運動――革命運動から政権党への軌跡』(有斐閣、2011年)
「外部介入によるイラクの民主化――戦後民主体制の運営」酒井啓子編『中東政治学』(有斐閣、2012年)
“Iraqi Islamist Parties in International Politics: The Impact of Historical and International Politics on Political Conflict in Post-War Iraq” International Journal of Contemporary Iraqi Studies, 6(1), 2012
“Sectarianism Twisted: Changing Cleavages in the Elections of Post-war Iraq” Arab Studies Quarterly, 34 (1), 2012
「反体制勢力に対する外部アクターの影響――イラク・イスラーム主義政党の戦後政策対立を事例に」『国際政治』(166)、2011年(第5回国際政治学会奨励賞受賞)
“An Islamist Social Movement under the Authoritarian Regime in Iraq during 1990s: A Study on the Shi'ite Leadership of Sadiq al-Sadr and its Socio-political Base” AJAMES, 25 (1), 2009

上記内容は本書刊行時のものです。