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福島原発と被曝労働 石丸 小四郎(著) - 明石書店
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福島原発と被曝労働 隠された労働現場、過去から未来への警告

発行:明石書店
四六判
264ページ
上製
定価 2,300円+税
ISBN
978-4-7503-3751-7
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2013年1月
書店発売日
登録日
2013年1月28日
最終更新日
2013年9月24日
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書評掲載情報

2013-05-12 毎日新聞

紹介

原発稼働からこれまで多数の労働者が被曝の後遺症に苦しみ、命を失った者もいるが、労災認定された者はわずかしかいない。今後、福島原発事故収束のために多数の労働者が働かざるをえないが、彼らの健康を守るにはどうすればよいのか。労災認定の支援に取り組んできた著者たちが労働現場の実態を明らかにし、必要とされる対策を提言する。

目次

 まえがき


第1部 福島の今

第1章 未曾有の原発震災(3・11)に直面して
 数字に現れない多数の犠牲
 行政と東電に重い責任
 合理化がもたらした人災

第2章 緊急時被曝労働者の今
 緊急時(2011年3月11日以降)労働者の高線量被曝
 高線量被曝を容認した東電と政府
 放射線被曝が避けられない原発内労働
 被曝労働者の「安全と健康管理」は守られてきたのか


第2部 原発下請け労働者はどのように働いてきたのか

第3章 1980年代半ばまでの福島下請け労働者
 1 福島原発下請け労働者の実態
 2 長尾光明さん(多発性骨髄腫)労災認定までの経過
 3 長尾光明さんが語る原発内被曝労働の実態

第4章 1980年代後半以降の専門技能下請け労働者の実態
 1 福島原発の老朽化に伴う合理化で苦しむ労働者
 2 喜友名正さん(悪性リンパ腫)労災認定までの経過
 3 長尾・喜友名両氏の労災認定から見えてきたこと


第3部 被曝労働者の健康を守るために

第5章 低線量被曝の危険を暴く原発労働者の国際的な疫学調査

第6章 すべての原発被曝労働者、緊急時被曝労働者の救済への課題
 1 原発被曝労働者の労災認定の拡大と「健康管理手帳」の交付を
 2 福島事故被曝労働者すべてに国の責任による救済を


 あとがきにかえて

前書きなど

まえがき

(…前略…)

 本書は、以下の3つを読者の皆様に理解していただくために編集したものである。
 第一に、福島原発事故を契機に、これまで闇に葬り去られてきた原発労働者の労働、生活、健康に焦点を当て、それらの実態について紹介し、彼らの健康被害に対する補償要求の実現のために役立つこと。
 第二に、福島原発事故の被災者が怒りや憤り、不安と悲しみを乗り越えて、脱原発の思いを語る姿を理解していただくこと。同時に、事故収束作業にかかわる労働者が高線量下でこれまで以上の被曝を余儀なくされ、極度の緊張を強いられている実態と、彼らの健康管理とその被害の補償が政府の責任として喫緊の課題であることに理解を深めていただくこと。
 第三に、放射線被曝の危険性がどのように過小評価されてきたのか、原発労働者の労災補償制度が国際的にどのように進展し、日本ではどのようになってきているのかを明らかにし、労働者の健康管理と被曝による被害の補償のために今後どのような方向を目指すべきかについての議論を深めていただくことである。
 本書は、第1部「福島の今」、第2部「原発下請け労働者はどのように働いてきたのか」、第3部「被曝労働者の健康を守るために」の3部で構成されている。
 第1部第1章には、福島原発事故を経験した石丸が『月刊労働組合』に執筆した「未曾有の原発震災に直面して」を掲載している。被災住民の置かれた現状、福島事故をもたらした責任について、できるだけ生の声が届くよう記述した。第2章では、事故で破壊され、高濃度に汚染された原発敷地内で、事故の収束のために働いている緊急時労働者についての現状と問題点を指摘する。
 第2部は、福島原発事故以前の原発労働者、特に下請け労働者の実態と健康被害に対する補償の闘いについて詳述する。ここでは、運転初期の1980年代と80年代後半以降現在までに分けて整理する。
 1980年代は、事故と故障続きの福島第一原発で働く下請け労働者の実態と、そこで監督として働いた長尾さんが多発性骨髄腫を発病し、その補償のための労災認定までの経過を整理する。監督としての立場から下請け労働者の実態にも精通していた長尾さんの話も付け加える。
 1980年代後半以降は、原発の老朽化が進行し、事故や故障が多発してきた時期であった。1991年には美浜原発2号炉で蒸気発生器のギロチン破断が起こり、緊急炉心冷却装置(ECCS)の作動という重大事故が発生した。また1995年には、浜岡原発3号機での原子炉再循環系配管の溶接部分での応力腐食割れが発見された。これは、沸騰水型原発の根本的欠陥である応力腐食割れが福島第一原発1号炉のような古い原発だけでなく、その後改良されたと宣伝されてきた新しい沸騰水型原発の炉心部の構造にまで及んでいたことを示すものであった。この時期には、加圧水型原発および沸騰水型原発の点検、補修、改良、工事のために専門技能労働者が大量に動員された。蒸気発生器細管の点検に従事した喜友名さんは悪性リンパ腫で死亡し、その労災認定に向けての闘いが取り組まれた。
 1980年代の長尾さん、1990年以降の喜友名さん、この2人の労災認定をめぐる闘いの経過をたどるとともに、原発内の被曝労働、特に下請け労働者の実態について詳述する。
 第3部第5章では、放射線被曝の危険性についての国際的な調査研究や理論的考察について検討する。原発労働者の放射線被曝による健康被害は、これまで過小に評価されてきた。それは、核兵器開発や原発を推進する国際的な勢力が被曝の被害を闇に葬ってきたからである。しかし、被曝の被害を受けた人たちの闘いを背景に、事実に基づく多くの調査研究が行われ、過小評価が明らかにされてきた。その結果、アメリカのクリントン・ゴア教書に代表されるように、被曝労働者の国の責任による補償制度は大幅に拡大した。ここでは被曝労働者の国際的な疫学調査を中心として国際放射線防護委員会(ICRP)の被曝の被害の過小評価について検討する。
 第6章では、原発被曝労働者の健康被害の補償、特に労災の認定を巡る日本政府の姿勢と問題点を考察し、労災の申請が困難である現状と現行の労災補償保険法の問題点を指摘する。特に、労災対象疾病の拡大と離職後の健康管理に欠かせない健康管理手帳の交付の意義について考察する。
 同時に、3・11福島事故の収束作業で高線量を被曝している福島事故被曝労働者に対して、米国の「クリントン・ゴア教書」やロシアの「チェルノブイリリスト99」を参考として、国の責任による彼らの健康管理と被害の補償についての必要性について考察する。
 最後に、原発被曝労働者の救済への闘いが、脱原発の運動と結びついて大きなうねりとなっていくことを期待するものである。

著者プロフィール

石丸 小四郎  (イシマル コシロウ)  (

1943年秋田県生まれ。1964年より福島県富岡町在住。双葉地方原発反対同盟代表。3・11原発事故以降、脱原発のために全国各地で講演、第23回(2011年)多田瑤子反権力人権賞受賞。

建部 暹  (タテベ ノボル)  (

1945年兵庫県生まれ。大阪大学大学院理学研究科博士課程単位取得。理学博士。1977年、大阪府立高校教諭。2006年退職。原発被曝労働者救援に携わる。ヒバク反対キャンペーン共同代表。

寺西 清  (テラニシ キヨシ)  (

1943年兵庫県生まれ。大阪大学大学院理学研究科博士課程単位取得。理学博士。1973年兵庫県立衛生研究所研究員、2004年退職。福島原発被曝労働者の調査に参加、ヒバク反対キャンペーン会員。

村田 三郎  (ムラタ サブロウ)  (

1947年高知県生まれ。大阪大学医学部卒業。内科医。1978年から阪南中央病院に勤務、同病院副院長(現)。水俣病、原爆被爆者、原発被曝労働者等の健康診断・治療にかかわる。

上記内容は本書刊行時のものです。