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ニートがひらく幸福社会ニッポン 二神 能基(著) - 明石書店
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ニートがひらく幸福社会ニッポン 「進化系人類」が働き方・生き方を変える

発行:明石書店
四六判
232ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-7503-3652-7
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2012年8月
書店発売日
登録日
2012年8月20日
最終更新日
2013年6月14日
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紹介

千葉県を本拠とするひきこもり・ニート支援NPO「ニュースタート」の代表、二神能基による最新刊。ニートのもつ力をポジティブに活かすことを提言、今後の少子高齢化・経済縮小時代における「幸せ」「社会の在り方」を根底から問い直す挑発的な書。

目次

序章 2012年の『希望のニート』

第一章 ニートを愛する女性たち
 ニートの婚姻届
 ニートの魅力に気づいた女性たち
 経済力より人間性を重視する女性が創る21世紀型カップル
 ヒモで生きる覚悟を固めた38歳の彼の「男らしさ」
 やる気のない30歳の彼を理学療法士にした彼女の戦略
 「ニートだけど、彼は自分らしさを持っている」
 仕事も、結婚も、子育てもしたい女性たち
 21世紀型価値観と30代女性たち
 「30%の結婚でいい」
 「ビルを建てるよりも、ツガイ(番い)を作るほうが大切である」

第二章 若者たちが求める「ふつうの幸せ」
 ビンボーをゲーム感覚で楽しむ世代
 ニート問題が21世紀の哲学問題である理由
 「勝ち負けから降りる生き方」への共感
 「負けるが勝ち」という生き方
 ニートがリハビリ現場の責任者になる時代
 仕事がつまらなくなった時代
 ポンコツ仲間とのまったりした、ふつうの幸せ
 震災ボランティアで体感した「役立ち」
 イタリア型幸福観
 ニートは21世紀型進化系人類

第三章 ねじれ合う親子の価値観
 成り立たない会話
 20世紀型成功を求め続ける親
 経済成長世代の傲慢さは変わらない
 親の存在そのものが子供を抑圧している
 強迫観念としての「いい子」の危うさ
 問題は、親のコミュニケーション能力
 「親子だからわかり合える」という幻想
 母親に呑み込まれてしまいそうな恐怖心
 二つの価値観で股裂き状態になるニートたち
 34歳でひきこもる息子に「正社員」を切望するパート勤めの母親
 子供の意志を尊重する、物わかりのいい親
 「子供の自主性尊重」の落とし穴
 「NO」の中の「YES」をこそ聞き分ける対話力
 教師の母親を丸刈りにした32歳の息子からのラブレター
 親子問題がこじれると、権力争いから復讐へエスカレートする
 親子の会話が成立しない構造
 違う価値観を認め合う親子関係
 「家族の絆」報道に逃げ腰な若者たち
 若者の希望は「国家破綻」

第四章 20世紀の父親の最後の出番
 「日本では、仕事がそんなに偉いのか!」
 家庭では母親が正社員で、父親はパートタイマー
 21世紀の父原病?
 「隣の車が小さく見えます」世代の寂寞たる日常
 生涯現役世代の自覚なき貧しさ
 「仕事になるから嫌です」が迫る意識改革
 若者たちがニートになることで表現しようとしていること
 娘が選ぶ結婚相手で、彼女の父親観がわかる
 24歳の息子に恫喝されてニヤつく東大卒の父親
 父親を二人目の母親にしてはいけない
 父親は勇気を持って子供の背中を押してほしい
 「5年以内に孫の顔を見せて」作戦

第五章 就労支援から人生支援へ
 「就労が目標」の結果は、「ワーキングプア」を作っただけ?
 ひきこもり70万人と、厚労省の非科学的な新ガイドライン
 ニートの大半は病気ではない
 若者を薬漬けにしてしまう精神科医たち
 コミュニケ―ション力がないのは、むしろ親たちのほうだ
 ワーキングプアからの出発
 「仲間・働き・役立ち」の三本柱で楽しく生きる
 これからの就労支援は人生支援
 ニートの若者には結婚力を!
 結婚の民営化
 NS代表からのリタイア
 ハッピーボランティア
 「子供はいつの時代も最先端」
 「仲間・働き・役立ち」が、21世紀日本のキーワードになる日
 経済縮小時代のハッピーシュリンク(幸福な縮小)

トーク・セッション
 ひきこもり70万人を社会へ
 下流の息子を愛せますか?

 あとがき

前書きなど

序章 2012年の『希望のニート』

 笑うしかない場面だった。
 「古市君、君にとって幸せとは何なんだ?」
少し苛立ち気味だった78歳の田原総一朗が、あの上目遣いで、眉間にしわを寄せた表情でたずねた。東京大学の大学院生で、今話題の一冊である『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社、2011年刊)の著者である26歳の古市憲寿君は、こう即答した。
「チョコレートを食べてるときです」
 田原さんに次の言葉はなかった。わたしが見るに、田原さんは昨今の世代間格差の犠牲者としての若者論とは全く異なる考えを、古市君から引き出そうと必死に挑発していたのだが、彼があまりに手短な返事を淡々と微笑でくり返すことで、暖簾に腕押しのようなもどかしさを感じているようだった。
 それは、2012年2月11日のテレビ朝日『朝まで生テレビ』での一場面。
 この日のテーマは、「激論! 絶望の国の若者の幸福と夢」だった。明らかに古市君の著書を意識したものだ。古市君は、著書で、2010年の内閣府「国民の生活に関する世論調査」で20代男性の65.9%、20代女性の75.2%が現在の生活に満足しているという統計結果を出発点に、若き社会学者としてさまざまな若者を訪ね歩いている。インターネットなど一定の社会インフラが整い、あまりお金を使わなくても、「今、このとき」の幸せをそれなりに感じている若者たちの声を集めている。つまり、若者の貧困を一方的に問題視する専門家たちへの、若者たちによる静かなアンチテーゼを言いふくんだ一冊だ。
 話は戻るが、冒頭の古市君の「チョコレート」発言に頬をゆるめたのは、わたしが理事を務めるニート支援のNPOの若者たちに、「一番欲しいモノは何だ?」とたずねると、ほぼ全員が「別にぃ」という答えを返すことに、かなり慣らされていたせいだ。なかには、「今や非正規社員がメインの世の中だから、そんな時代の流れに乗ってバイトでなんとか食いつなぎながら、その時その時にやりたいことをやって、気楽に生きてゆきましょう」などと、屈託なく話す20代ニートも多い。
 古市君の「チョコレート」発言も、そういった空気の延長線上にありながら、もう一歩前向きに、そして具体的に、そして21世紀に踏み込んで答えてくれている、テレビを観ながら、わたしはそう感じていた。

 ニート支援を18年間続けてきて、最近、大きな変化を感じている。
 30代ニートと比べると、20代ニートの中には挫折感や劣等感からも遠く、学校や職場がつまらなくて、なんとなくひきこもってみたら、意外と長引いちゃって……といったタイプが増えている。じつにケロッとしている。
 経済右肩下がりの時代に生まれ育ってきた20代の場合、社会や未来に夢を持てない状態、そして経済的には希望のない状態が続いている。だからこそ、チョコレートや、ネットでの交流や、テレビの他愛のないバラエティー番組などの、目の前の日常的なものに幸せを見出す感受性をふくらませ、変化や成長のない日々を楽しむことができる。そこに経済成長と上昇志向の前世紀とは明らかに異なる、21世紀型と言える若者の幸福観の登場をわたしは感じている。
 2005年、わたしは62歳でデビュー作『希望のニート』(東洋経済新報社刊、その後、新潮文庫にて再刊)を書いた。幸い出版時にも多くの反響が寄せられたが、率直に書くと、その表題には当時のわたしの願望が多分に込められていた。
 そして2012年の今、ニートこそが21世紀の希望だという考えは、予感から確信に変わっている。
 かつて司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』にロマンを感じ、戦後の経済成長に邁進し、海外から“エコノミック・アニマル”と馬鹿にされてもなお、あくなき経済の上昇と拡大志向の果てにわたしたちが行き着いた、福島第一原子力発電所のメルトダウン事故。その惨状を目の当たりにしてもなお、「経済成長だけが国民を幸せにする」と勝手に思い込んで原発再稼働を譲らない財界幹部と、それを追認する政府。
 そんな懲りない大人社会から離れた、ニートや若者たちの等身大の幸福論にこそ、21世紀の普通の人間へと進化しつつある感受性と可能性を感じる。20世紀のエコノミック・アニマルから21世紀のヒューマン・ビーイングへと、動物から人間へと、若者たちは進化してきたと感じるのだ。
 67年前、チョコレートは、駐留米軍の兵士にねだるしかない高価なお菓子だった。同時に、わたしたちの世代にとっては、アメリカの物量の豊かさを感じる「未来の幸せ」でもあった。それが今では小学生でも近所のコンビニで買える、「ふつうの幸せ」になっている。もはやチョコレートさえあれば、21世紀には経済成長も、原発も、モノの豊かさもいらない。

著者プロフィール

二神 能基  (フタガミ ノウキ)  (

1943年生まれ。早稲田大学卒。愛媛県松山市での中学受験塾、幼稚園経営などを経て、99年、ニート支援のNPO法人「ニュースタート事務局」を千葉県に設立。幼児からニートまで、40年にわたって育成に携わった親子は4000組を超える。早稲田大学講師、千葉県・内閣府等の委員を歴任。21世紀の子育てを支援する「安心親子応援団」事務局長。

上記内容は本書刊行時のものです。