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教育研究とエビデンス 国立教育政策研究所(編) - 明石書店
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教育研究とエビデンス 国際的動向と日本の現状と課題

発行:明石書店
A5判
376ページ
並製
定価 3,800円+税
ISBN
978-4-7503-3607-7
Cコード
C0037
一般 単行本 教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2012年5月
書店発売日
登録日
2012年5月17日
最終更新日
2012年5月24日
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書評掲載情報

2012-12-23 朝日新聞
評者: 川端裕人(作家)

紹介

学力の評価や教育政策の判断の際に活用されるエビデンスとはどのようなものか? 本書は、エビデンスの産出・活用について、その国際的動向や、医学などの先行分野における取り組みを概観するとともに、日本の教育分野における将来性や課題を明らかにする。

目次

 はしがき(国立教育政策研究所次長:大槻達也)
 概要

第I部 英国と米国におけるエビデンス活用の系譜

第1章 英国におけるエビデンスに基づく教育政策の展開(惣脇宏)
 第1節 はじめに
 第2節 エビデンスとは何か
  2.1 政策と実践において「つかう」エビデンス
  2.2 質の高い研究が「つくる」エビデンス
  2.3 研究から政策や実践に「つたえる」エビデンス
 第3節 英国の教育政策におけるエビデンスの重視
  3.1 問われる教育研究の在り方
  3.2 政府の現代化と教育雇用省の対応
 第4節 エビデンスに基づく教育政策に関する課題
  4.1 投資の必要
  4.2 普及の促進
  4.3 関係者の理解と参加
 第5節 おわりに

第2章 ランダム化比較試験とメタアナリシスの発展(惣脇宏)
 第1節 はじめに
 第2節 「実験する社会」とペリー就学前計画
  2.1 キャンベルの「実験する社会」
  2.2 貧困との闘いと教育政策研究
  2.3 ペリー就学前計画
  2.4 初期の重要なRCT
 第3節 学級規模縮小の効果
  3.1 メタアナリシス
  3.2 大規模RCTによるテネシー州のSTARプロジェクト
  3.3 今後必要とされる研究
 第4節 メタアナリシスの発展
  4.1 学校財政支出と教育効果
  4.2 宿題の効果
 第5節 キャリア・アカデミー研究
  5.1 1980~90年代の動向
  5.2 キャリア・アカデミー研究
 第6節 読みの研究からNCLB法へ
  6.1 読みの指導と「科学的根拠に基づく読みの研究」
  6.2 NCLB法と「科学的根拠に基づく研究」
 第7節 おわりに

第3章 米国のエビデンス仲介機関の機能と課題(豊 浩子)
 第1節 はじめに
 第2節 WWC設立の背景
  2.1 米国の教育改革の動向
  2.2 教育政策における科学的エビデンスの推進
  2.3 科学的根拠の基準としてのRCT
 第3節 WWCの概要
  3.1 トピック分野
  3.2 現在のトピック分野と「トピックレポート」
  3.3 「トピックレポート」の例:小学校の算数
  3.4 「介入レポート」
  3.5 「実践ガイド」
  3.6 「実践ガイド」の例:「大学までの道のりをサポートするには:高校には何ができるか」
  3.7 「クイックレビュー」
  3.8 「マルチメディア」
 第4節 WWCの課題
  4.1 RCT最優先に関わる問題
  4.2 現行の教育改革におけるWWCの課題

第II部 OECDと欧州の取り組み

第4章 OECDプロジェクトに見るエビデンスと教育的成果(トム・シュラー、籾井圭子訳)
 第1節 はじめに
 第2節 より広い文脈:測定及び成果への考え方の変化
 第3節 学習の社会的成果
 第4節 教育R&D
 第5節 教育R&Dへの体系的なアプローチ:ハンガリーの事例
 第6節 教育研究を超えて:脳科学と学習
 第7節 おわりに:日本の今後のアジェンダの提言

第5章 エビデンス活用の推進に向けた欧州の取り組み(籾井圭子)
 第1節 はじめに
 第2節 「エビデンス」の活用とは何か
  2.1 「エビデンス」とは
  2.2 「エビデンス」、「知識」及び「研究」の関係
  2.3 「エビデンス」の活用とは
  2.3 「知識」の種類
 第3節 欧州委員会委託事業について
  3.1 2010年委託事業
  3.2 2011年委託事業
 第4節 欧州における議論の経緯
  4.1 欧州の基本的な枠組み:リスボン戦略以降の動向
  4.2 欧州におけるエビデンス活用の推進に向けた具体的な議論
  4.3 知識の産出、普及、活用に関する欧州各国の取り組み
  4.4 欧州のエビデンス活用の推進の今後の方向性
 第5節 おわりに:日本におけるエビデンス活用の推進に向けた考察

第III部 我が国の動き

第6章 日本のエビデンスに基づく医療(EBM)の動きからのレッスン(津谷喜一郎)
 第1節 はじめに
 第2節 「EBMの3人の父」
 第3節 EBMとコクラン共同計画の誕生と日本への紹介
 第4節 診療ガイドラインにおける日本医師会とのトラブル
 第5節 教育のRCTにおける倫理

第7章 エビデンス情報に基づくソーシャルワークの実践に向けて(秋山薊二)
 第1節 はじめに
 第2節 EBPの論理を築くクリティカル・シンキング
 第3節 EBP(エビデンスに基づく実践)の実相
 第4節 ソーシャルワークと教育実践の共通課題
 第5節 教育結果を測定するということ
 第6節 日本の教育とソーシャルワークの方向性に関する課題
 第7節 モダンとポスト・モダンの揺れ
 第8節 エビデンス情報に基づく教育(実践)について
 第9節 おわりに

第8章 知識社会における教育研究エビデンスの課題(岩崎久美子)
 第1節 はじめに
 第2節 研究成果の有効性と活用
  2.1 活用に刺激された研究
  2.2 知識社会における知識
  2.3 社会的アカウンタビリティとしての研究
  2.4 医療と教育の知識マネジメントの類似点と相違点
 第3節 エビデンスの産出の課題
  3.1 エビデンスの定義と研究の質の保証
  3.2 教育研究の科学性と技術化
  3.3 エビデンスの統合とネットワークの必要性
 第4節 エビデンスの普及の課題
  4.1 仲介機関としての米国シンクタンク
  4.2 日本におけるシンクタンク
 第5節 エビデンスの活用の課題
  5.1 2つのコミュニティ
  5.2 2つのコミュニティの連携・交流
 第6節 おわりに:政策科学研究としての科学的手法の採用

第9章 エビデンスを活用した教育政策形成(大槻達也)
 第1節 はじめに
 第2節 学習指導要領改訂とエビデンス
  2.1 戦後教育改革期の「学力問題」と学習指導要領(試案)の検証:昭和20年代
  2.2 全国学力調査と学習指導要領改訂:昭和30年代、同40年代
  2.3 中教審による明治以降の教育の検証と学習指導要領改訂:昭和50年代
  2.4 教育課程実施状況調査と学習指導要領改訂:平成元年、同10年代
  2.5 「学力テストの時代」と学習指導要領改訂:平成20年代
 第3節 中教審46答申とエビデンス
  3.1 先導的試行
  3.2 教育者・研究者・行政担当者による「三位一体の協力体制」
 第4節 政策形成・実践におけるエビデンス活用に向けて
  4.1 エビデンスの産出、収集、蓄積・流通の仕組みの構築
  4.2 ステークホルダー間の共同関係の構築
  4.3 エビデンスについての普及・啓発、人材養成・配置と財政支援
 第5節 おわりに

 付録A 「教育研究におけるエビデンスとは」〈教育改革国際シンポジウム講演録〉
  A1 「エビデンスと教育の効果」(トム・シュラー)
  A2 「米国におけるエビデンス活用の現状と課題」(トーマス・クック)
  A3 「英国におけるエビデンス活用の現状と課題」(デイビッド・ゴゥ)
  A4 パネルディスカッション「教育におけるエビデンスの活用に向けて」(フロアーとの対話)
 付録B 用語解説

前書きなど

 「エビデンス」は、根拠や科学的実証と訳される言葉である。近年、教育の世界でも、政策と研究の接する領域で、この「エビデンス」という言葉を多く耳にするようになった。その大きな理由は、教育への社会的投資に対する一般の人々への説明責任が生じていること、あるいは財政危機に直面する多くの先進諸国が競争的に財源を確保するため、資金を投入することを支持する根拠が求められていることがある。同時に、ウェブなどを介して情報が一般的に流通する現代社会では、政策立案者のみならず、誰しもが何かを選択する際、信頼できる判断材料として、統計や実験など根拠あるデータを志向するようになる。このように、「エビデンス」という言葉は、科学的なデータに基づき、誰もが納得でき、かつ自ら判断が行える、透明化された情報を求める社会的な動きを象徴するものと言えよう。
 しかし、同時に、この「エビデンス」という言葉は、その定義をめぐって議論の多いものでもある。その理由は、研究者によって供給されるものと、政策立案者による需要に応じて用いられるものでは、「エビデンス」という言葉が意味する内容が異なる場合が多いからである。
 例えば、医療分野で用いられる「エビデンス」という言葉は、原則として、ランダムに振り分けられた2つの等質のグループのうち、1つのグループに投薬や治療を行った結果を集め、統計手法でその有効性を確認することで得られるものを指す。このランダム化比較試験(randomized controlled trial, RCT)の結果をメタアナリシスにより統計的に統合することで得られたものが、最良の「エビデンス」なのである。米国では、科学的実証主義によるこのような厳格な立場が、社会科学にあっても顕著であり、教育分野も例外ではない。厳密な手法に基づく「エビデンス」は、厳格な手続きゆえに量産できない。そのため、「エビデンス」を国際的にレビューし、それをウェブ上で公開しようとする試みとして、医療分野におけるコクラン共同計画(The Cochrane Collaboration)があり、それを後追いした社会科学分野(教育、刑事司法、社会福祉)におけるキャンベル共同計画(The Campbell Collaboration)のような動きをもたらしている。このような取り組みは、研究者主導の知識の供給として、従来から行われてきたのである。
 一方、政策立案者が、政策決定の裏付けを明示し、政策の有効性を明らかにしようとする場合、目的に応じ、有用となるデータ、知識、情報など、時には量的データのみならず質的データも含む多様なものを用いる。そのため、有益なデータの政策活用という意味で「エビデンス」という言葉を広く用いる場合も多く、その場合の「エビデンス」とは、ランダム化比較試験結果をメタアナリシスにより統計的に統合して得られたものとは限らない。そのため、英国などでは、「エビデンス情報に照らした(evidence informed)」といった言葉が好まれ、データの政策活用に際し、現実的な解釈で「エビデンス」という言葉を用いているように思われる。
 本書は、このように、「エビデンス」という言葉の多義性を前提に、この言葉に集約される研究と政策の関係を問う論点を取り上げる。

(本書「概要」より抜粋)

著者プロフィール

大槻 達也  (オオツキ タツヤ)  (

 1958年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。文部科学省教科書課長、教育課程課長、私学行政課長、政策課長、国立教育政策研究所教育課程研究センター長、次長を経て、現在は、日本私立学校振興・共済事業団理事。主な著書に、『実践的学力向上論:「確かな学力」を育成する47人の教師』(共著、学事出版、2004年)、『かけがえなきこの教室に集う:大村はま白寿記念文集』(共著、小学館、2004年)、『学校を変える「組織マネジメント力」(シリーズ学校力1)』(共著、ぎょうせい、2005年)などがある。

惣脇 宏  (ソウワキ ヒロシ)  (

 1957年生まれ。1980年東京大学法学部卒業。同年文部省入省。文部科学省学校健康教育課長、香川県教育委員会教育長、国立教育政策研究所次長、文部科学省生涯学習総括官などを経て、現在は、大学入試センター理事。主な論文等に、「カリフォルニア州の児童保護事件:ホームスクーリングと未成年裁判所の就学命令」(『国立教育政策研究所紀要』第138集、2009年)、「『習得・活用・探求』を生かしたカリキュラムづくり」(『悠+(はるか・プラス)』4月号、2008年)、「学ぶ意欲を高める学習指導の改善」(『初等教育資料』813号、2006年)などがある。

豊 浩子  (ユタカ コウコ)  (

 1967年生まれ。東京大学教育学部卒業、米国カリフォルニア大学バークレー校教育大学院Ph.D.候補。東海大学講師等を経て、現在、国立教育政策研究所研究協力者、有限会社イデスト取締役。主な著書・論文・訳書に、Learning to Monitor Lifelong Learning(共著、National Center for Research in Vocational Education、1997)、「親とのコミュニケーションがキャリア発達に与える影響」(国立教育政策研究所編『キャリア教育への招待』東洋館出版社、2007年)、『教育とエビデンス:政策と研究の協同に向けて』(OECD教育研究革新センター編著、共訳、明石書店、2009年)などがある。

トム・シュラー  (シュラー,トム)  (

 前OECD教育研究革新センター(CERI)長。主な著書に、The Benefits of Learning: The Impact of Education on Health, Family Life and Social Capital(with John Preston et al., Routledge 2003)、International Perspectives on Lifelong Learning(edited with David Istance and Hans Schutze, Open University Press 2002)、Social Capital: Critical Perspectives (edited with Stephen Baron and John Field, OUP 2000)などがある。

籾井 圭子  (モミイ ケイコ)  (

 1972年生まれ。1995年慶應義塾大学法学部卒業。マギル大学教育行政学修士。1995年文部省入省後、OECD教育研究革新センター(CERI)アナリスト、文部科学省高等教育局国際企画室専門官、同初等中等教育局教育制度改革室専門官を経て、現在は、国立教育政策研究所総括研究官。主な著書・訳書に、「大学生の読書の状況と読解力について」(国立教育政策研究所編『読書教育への招待:確かな学力と豊かな心を育てるために』東洋館出版社、2010年)、『グローバル人材育成のための大学評価指標:大学はグローバル展開企業の要請に応えられるか』(共著、協同出版、2011年)、『教育と健康・社会的関与:学習の社会的成果を検証する』(OECD教育研究革新センター編著、共訳、明石書店、2011年)などがある。

津谷 喜一郎  (ツタニ キイチロウ)  (

 1950年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。医学博士。北里研究所附属東洋医学総合研究所、WHO西太平洋地域事務局初代伝統医学担当医官、ハーバード大学武見国際保健講座研究員、東京医科歯科大学難治疾患研究所臨床薬理学部門を経て、2001年より東京大学大学院薬学系研究科医薬経済学客員教授。2008年より同・医薬政策学特任教授。WHO医薬品評価諮問委員会委員。主な著編書・訳書に『臨床研究と疫学研究のための国際ルール集』(共編著、ライフサイエンス出版、2008年)、『世界伝統医学大全』(訳、平凡社、1995年)などがある。

秋山 薊二  (アキヤマ ケイジ)  (

 1947年生まれ。ランバス大学(メジャー・社会学)卒業、ダルハウジー大学大学院ソーシャルワーク修士。弘前学院大学助教授を経て、現在は、関東学院大学文学部(現代社会学科)教授。主な著書に『ソーシャルワーク:過程とその展開』(共著、海声社、1984年)、『ジェネラル・ソーシャルワーク』(編著、光生館、2000年)、主な論文に「Evidence-Basedソーシャルワークの理念と方法」(『ソーシャルワーク研究』Vol.31,No.2、相川書房、2005年)、「エビデンスに基づくソーシャルワーク(EBP, EBS)に対する誤解の諸相――EBSの実相とPBR-」(関東学院大学文学部紀要 第112号、2008年)、“A comparison between Japanese and British research papers in key academic journals”, International Social Work, Vol.50, No.2, 2007年などがある。

岩崎 久美子  (イワサキ クミコ)  (

 1962年生まれ。筑波大学大学院教育研究科修了。現在は、国立教育政策研究所総括研究官。主な著書・訳書に、『在外日本人のナショナル・アイデンティティ』(編著、明石書店、2007年)、『国際バカロレア:世界が認める卓越した教育プログラム』(編著、明石書店、2007年)、『教育とエビデンス:政策と研究の協同に向けて』(OECD教育研究革新センター編著、共訳、明石書店、2009年)、『知識の創造・普及・活用:学習社会のナレッジ・マネジメント』(OECD教育研究革新センター編著、共訳、明石書店、2012年)などがある。

上記内容は本書刊行時のものです。