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心理臨床を見直す“介在”療法 衣斐 哲臣(編) - 明石書店
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心理臨床を見直す“介在”療法 対人援助の新しい視点

発行:明石書店
A5判
308ページ
並製
定価 2,800円+税
ISBN
978-4-7503-3598-8
Cコード
C0011
一般 単行本 心理(学)
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2012年5月
書店発売日
登録日
2012年5月23日
最終更新日
2012年5月23日
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紹介

対人援助のための理論や技法は数多くあり、援助者が人を支援する場面では二者の間に必ずそれらが“介在”する。現場の第一線の臨床家がこの“介在”視点に立ち自らの実践を語り、既成の学派や立場の違いを超えて心理療法および対人援助のあり方を再考する試み。

目次

まえがき

第1部 “介在”視点の提唱:メタ・ポジションから“介在させているもの”を語る(衣斐哲臣)

 グレゴリー・ベイトソンの一節
 ○○を介在させたアプローチ
 “介在”視点の発想――バドミントン“介在”アプローチの事例
 イルカと出会った日――室戸ドルフィンセンターの一日
 “介在”視点の提唱――穴とアラ、そして今後の展開に向けて


第2部 私の“介在”療法を語る

1 プレイセラピー
 【Introduction】津川流エリクソニアン・アプローチへのアプローチ
 ○遊び“介在”療法への招待(津川秀夫)
  はじめに
  「非指示」という遊び方
  ミルトン・エリクソン
  変化の種
  見立てと手立て
  おわりに

2 箱庭療法
 【Introduction】拝啓 ユング派分析家 川戸圓様
 ○箱庭を介在させて心に関わる(川戸圓)
  はじめに
  激しく瞬きをする4歳のA君
  箱庭療法とは
  「箱庭」と「風景」
  おわりに

3 臨床動作法
 【Introduction】動作を介在させたコミュニケーションの魅力
 ○臨床動作法を介在させた援助の展開(吉川吉美)
  はじめに
  臨床動作法について
  臨床動作法による“介在”のしかた
  臨床動作法による“介在”事例
  おわりに――考察にかえて
   付録:動作課題

4 精神分析
 【Introduction】精神分析を“介在”視点から「大胆に」捉える
 ○「私」と「クライエント」のあいだに“介在”するもの――精神分析的治療構造論の観点から(佐野直哉)
  はじめに
  “介在物”としての治療構造
  “介在”概念をめぐって――単科精神病院臨床での“介在物”
  “介在”という視点からみた個人精神分析的心理療法
  精神分析学における治療技法の発展
  「修正技法」から一個の「治療技法」としての確立へ
  おわりに――私の面接室について

5 クライエント中心療法
 【Introduction】「クライエント中心療法」を介在させた夜中のコラボ
 ○クライエント中心療法を“介在”の基盤として(伊藤研一)
  はじめに
  “介在”療法としてのクライエント中心療法
  幼稚園・小学校時代を通して集団不適応を示していた小学校6年生男子A君の事例
  さまざまな“介在”を支える見立てとフォーカシング

6 森田療法
 【Introduction】山田流現代版森田療法のすすめ
 ○森田療法を介在させる――「あるがまま」を体現させるセラピストの役割(山田秀世)
  はじめに
  現代版・森田療法のエッセンス
  放念と介在
  着手と介在
  観照と介在
  おわりに

7 内観療法
 【Introduction】自己の内面を見つめ自己を探究する手段=内観=“介在”
 ○内観法を介在させた自己探究(三木善彦)
  自己の探究
  内観療法の方法
  内観面接の意義
  摂食障害の女子大学生の事例
  私の“介在”療法としての内観療法

8 心理検査
 【Introduction】K式発達検査を介在させた川畑流発達臨床の世界
 ○心理検査が介在する発達臨床(川畑隆)
  K式発達検査の概要
  介在する場所(1)――子どもと検査者との間
  介在する場所(2)――保護者と検査者(助言者)との間
  介在する場所(3)――検査者と関係者との間
  K式発達検査を介在させることの意味

9 催眠療法
 【Introduction】催眠療法“介在”アプローチ開眼に向けて
 ○治療の場としてのトランス空間とコミュニケーション・ツールとしての催眠現象(松木繁)
  はじめに
  “介在”という観点からみた催眠療法の新たな臨床観・世界観
  コミュニケーション・ツールとしての催眠現象――現象の意味性と利用に関する考察
  まとめ

10 グループ療法
 【Introduction】セラピーにおける“介在”視点は当たり前
 心理療法にグループを介在させることの意味(高良聖)
  はじめに
  グループを介在させる効用
  グループセラピストの役割
  セラピスト覚え書き

11 家族療法
 【Introduction】私の家族療法との出会い
 ○「家族介在療法」あるいは「家族療法介在療法」(坂本真佐哉)
  はじめに
  なぜ「私」は「家族(介在)療法」なのか
  家族療法を心理援助に介在させることの意味
  おわりに

12 認知行動療法
 【Introduction】“介在”視点の有効性は実証できるのか?
 ○認知行動療法は「認知」と「行動」を介在させるのか?(東斉彰)
  メタ・ポジションと“介在”
  認知行動療法とは
  認知行動療法は何を介在させるのか
  おわりに

13 ゲシュタルト療法
 【Introduction】触媒としてのセラピスト
 ○セラピストの“介在”が何よりも要請される心理療法(倉戸ヨシヤ)
  はじめに
  エンプティ・チェア技法
  自立のきっかけをんだエンプティ・チェア技法の例
  気づきをもたらすセラピストの機能
  考察

14 解決志向アプローチ
 【Introduction】質問を介在させる――遠山流「質問学」
 ○質問を“介在”させる援助的会話(遠山宜哉)
  質問を意識する
  ミラクル・クエスチョン
  コーピング・クエスチョン
  質問のことば遣いに現れる前提
  質問の“毒”
  質問の投げかけ方、置き方
  終助詞の味わい
  質問を“介在”させるとは
  おわりに

15 EMDR
 【Introduction】EMDRを介在させることの魅力と期待
 ○EMDRを介在させて否定的記憶を変える(市井雅哉)
  EMDRの評価
  環境が介在している場合
  記憶が介在している場合
  援助の方法
  肯定的資源の少ない場合
  まとめ


第3部 “介在”療法の実践を語る

1 イルカ介在療法の精神医学的効果の研究(惣田聡子)
 イルカ介在療法に携わるまで
 イルカ介在療法とは?
 ハワイでのイルカ介在療法
 研究の概要およびスタッフ
 評価方法
 セラピー・セッションのプログラム
 イルカ介在療法の模索
 結果と考察

2 「怒りのコントロール教育プログラム」を介在させた事例――キレる中学生男子の支援(北谷多樹子)
 はじめに
 事例――エイタ:中学3年生男子
 考察とまとめ

3 描画テスト“介在”アプローチ――児童相談所でのバウムテスト・人物画の活用(戸倉幸恵)
 児童相談所という現場
 描画テストを介在させた面接の進め方の実際
 介在するものとしての描画テストの特性

4 RDIを介在させた自閉症治療――「普通(の人)になること」を目指す療育(白木孝二)
 RDIとは
 RDIの目標
 RDIの特徴と姿勢
 2つの中心テーマ
 RDIの介在の特徴
 おわりに

5 ライフストーリーワーク(LSW)を介在させた社会的養護の子どもへのアプローチ(山本智佳央)
 自分の生い立ちがわからない子どもたち
 子どもに過去を伝える
 施設で暮らす子どもたちのライフストーリーに焦点を当てたアプローチ
 心理職としての支援パラダイムの転換
 LSWを介在させることの意義

6 「ほほえみ」を介在させた地域づくりプロジェクトの実践――なぜ、地域は動き始めたのか(山本菜穂子)
 「ほほえみ」前夜
 「ほほえみ」との出会い
 「ほほえみ」を手にする方法
 「ほほえみ」隊の絆づくり
 「ほほえみ」の介在で動き始めた地域


第4部 “介在”療法論考(吉川悟)

 はじめに
 “介在”という用語をめぐって
 援助技術を「行使する」ということ
 技術はイルカや施術者を超えるものなのか
 再度“介在”をめぐって
 おわりに代えて


あとがき

前書きなど

あとがき(衣斐哲臣)

 本書は、児童福祉の雑誌「そだちと臨床」(『そだちと臨床』編集委員会編、明石書店)の6号(2009年)から10号(2011年)にかけて連載したものをスタートとしています。年2号の発行のため、あとの原稿の累積を待ちきれず、読者からの好評価を後押しとし、一気に書籍化する企画を進めました。それでも発行までに1年半かかりました。この間に“介在”療法をテーマとした仲間内の議論やワークショップを行いました。著者や編集者とやりとりしたメールは500通余り。その多くの議論を含めた現時点の到達点が本書です。
 私にとって本書は大きなチャレンジでした。理由は2つ。1つは、大胆にも「心理臨床を見直す」と風呂敷を広げた“介在”視点の提唱です。もう1つは、その“介在”視点をひっさげて、かくも多くの心理臨床の大御所やリーダー、そして現場のユニークな実践者など、豪華メンバーに執筆を依頼し、私が編者を果たしたことです。思えば贅沢なときでした。執筆の快諾を得たとき、原稿に目を通すとき、introductionを書くためのメールやりとりのとき、校正時にちょっとした注文をつけるとき、各タイトルを決定するとき……。まるで心理療法界を揺るがすような気負いと錯覚、はたまた“わらべのごときわれなりき”のドキドキ感のときでした。
 同時に、貴重な玉稿が集まるにつれ、児童相談所の一職員である私ごときがこれをまとめるのは、とても無謀なことに思えました。おまけに現職は、虐待ケース対応などにより、年柄年中、夜10時~12時の帰宅と脳の飽和を余儀なくしました。その中で皆さんの原稿は、私の脳を切り替え知的好奇心を満たしエネルギーとなりました。
 “介在”視点は、決してむずかしい視点ではありませんが、一見当たり前のようでいて、目から鱗が落ちるようなポジションを与えてくれます。パラダイムの転換と評した人もいます。援助者と対象者の間に“介在させているもの”を想定することで、私主体の視界でそこに起きていること(対人関係や相互作用)を見ることができます。そこから生まれたナラティヴが本書の内容でもあります。
 第2部の各心理療法を語る試みはもちろんのこと、第3部のイルカ、怒りのコントロール教育プログラム、描画テスト、RDI、ライフストーリーワーク、ほほえみを介在させた語りは、各執筆者のオリジナリティがあふれ「“介在”視点による実践報告」という新たなカテゴリーを登場させました。
 さらに、“介在”視点による今後の展開の1つの軸が、第4部の吉川悟氏の論考により提示されました。私自身、氏の含蓄深淵な内容を正確に咀嚼しえたか不明ですが、氏は“介在”視点を俯瞰し「AがBに対して、ある目的のためにCを用いた」という構造を示しました。これを、「“介在人”がユーザーやクライエントに対して、ある目的のために“介在物”を用いた」と言い換えて全編を読み直したとき、私の論点もより明確になりました。率直な批判を含め、「“介在”視点が、統合的・実践的な見地から心理療法そのものの存在意義やそこで起こっている現象そのものを再考する新概念である」と評価いただいた吉川氏の論考は、今後にぜひつなぎたいものです。
 さて、広げた風呂敷がどこまで通用するのか、意外に便利な古き風呂敷のよさが見直されるのか、そして新たな未来を包み込むのか……、おわりに際してもメタの議論は尽きません。私とあなたの間に介在するものを想定する“介在”視点を介在させた取り組みが、ひとまず本書のような成果物を生み出しました。

 (…後略…)

著者プロフィール

衣斐 哲臣  (イビ テツオミ)  (

岐阜県生まれ。1980年関西学院大学文学部心理学科を卒業。国保日高総合病院精神科(臨床心理士)を経て、1995年から和歌山県子ども・女性・障害者相談センター(児童相談所)勤務。現在、子ども相談課長。臨床心理士。専門領域は臨床心理学と児童福祉。
主著書:『子ども相談・資源活用のワザ――児童福祉と家族支援のための心理臨床』(金剛出版)、『児童虐待へのブリーフセラピー』『システム論からみた援助組織の協働』(共著、金剛出版)、『発達相談と援助――新版K式発達検査2001を用いた心理臨床』(共著、ミネルヴァ書房)、他。

追記

執筆者一覧


衣斐 哲臣(いび・てつおみ)
津川 秀夫(つがわ・ひでお)
川戸 圓(かわと・まどか)
吉川 吉美(よしかわ・よしみ)
佐野 直哉(さの・なおや)
伊藤 研一(いとう・けんいち)
山田 秀世(やまだ・ひでよ)
三木 善彦(みき・よしひこ)
川畑 隆(かわばた・たかし)
松木 繁(まつき・しげる)
高良 聖(たから・きよし)
坂本 真佐哉(さかもと・まさや)
東 斉彰(あずま・なりあき)
倉戸 ヨシヤ(くらと・よしや)
遠山 宜哉(とおやま・のぶや)
市井 雅哉(いちい・まさや)
惣田 聡子(そうた・さとこ)
北谷 多樹子(きたたに・たきこ)
戸倉 幸恵(とくら・さちえ)
白木 孝二(しらき・こうじ)
山本 智佳央(やまもと・ちかお)
山本 菜穂子(やまもと・なおこ)
吉川 悟(よしかわ・さとる)

上記内容は本書刊行時のものです。