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私とあなたここに生まれて 和合 亮一(著) - 明石書店
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私とあなたここに生まれて (ワタシトアナタココニウマレテ)

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発行:明石書店
四六判
200ページ
上製
定価 1,300円+税
ISBN
978-4-7503-3540-7   COPY
ISBN 13
9784750335407   COPY
ISBN 10h
4-7503-3540-1   COPY
ISBN 10
4750335401   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0092  
0:一般 0:単行本 92:日本文学詩歌
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2012年3月
書店発売日
登録日
2012年2月22日
最終更新日
2012年8月9日
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紹介

東日本大震災直後からツイッターで綴った「詩の礫」が多くの人の共感を呼び、以来震災の意味を問い続けている詩人が書き下ろした鎮魂と再起の言葉。被災地南三陸町在住の写真家が撮った美しい写真とのコラボレーションによる写真詩集。

目次

I 息吹

II あなた

III ふるさと

IV 南三陸町にて

V 吹き来る風に

前書きなど

 あとがき

 あの日から、いつも二つの南三陸が心の中をめぐっていた。一つ目は、夏休みに避暑地として訪れていた、震災前の海岸の風景である。私たち家族はそれぞれに、とても南三陵の風景を気に入っていて、しばらくここに過ごしていると心の中から元気になっていくのが分かるのだ。朝は風を受けながら海を遠くまで眺める。昼間はカメラを片手に海沿いをドライブして起伏に富んだ海岸をめぐり、静かな浜辺で泳ぐ。
 夜は海に船の明かりを探しながら、海産物を味わう。私などは杯を重ねながら、家族と一緒に語り合うのが何よりも楽しみだった。夕方に部屋に、海風を入れながらくつろいでいると、息子に静かに教えられた…。部屋の手すりにカモメが止まっているのだ。驚かさないように近づくと、あらためて海鳥の大きさと羽の色の美しさが分かった。自然と共に生きることの意味を、突然の空の訪問者は、少年と私に何も語らずに教えてくれた。

 二つ目は、昨年の十二月の初めの志津川湾の眺めである。震災後に、余震と原発爆発におびえるようにしながら、茶の間で隠れるようにして見つめ続けたあの映像を想起する。黒い津波が牙をむくようにして町を飲み込んでいく姿を。それを忘れてしまったかのように真冬の湾の光景は、広がっている。町のみなさんが避難したという高台へと上がり、町を眺めてみた。あれほどの津波の被害の跡が、かなり整理されていて更地が目立った。

 集められた瓦礫の山が、何か意志を持っているように大きく見えた。今日はとても風が強くて、きちんと立っていられないほどだ。鉄骨しか残っていない防災対策庁舎の前で手を合わせると、辺りはますます暴風になっていく気がする。叫びが聞こえる、泣き声がする、風の残酷な歌。重たく激しい調べを想う。速くに半壊の三階立ての大きな建物を見上げると、ひしゃげた車がその屋上にある。あの高いところまで、波がやって来ていたのだ。

 この二つのどちらもが、私の南三陸なのだ。目を閉じれば真夏の熱い日差しと清清しい湾岸の潮風があり、目を見開けば震災の真顔がある。ここでたくさんの命が生まれ育ち、おだやかに暮らしてきた。そして突然の災いの中で命が消えていった。この季節の移ろいを収めることが出来ないものか。何故。どんなに辛くても雲間に光を求めて、新しい一歩を踏み出すために。この度の刊行を嬉しく思う。

 二〇一二年二月 和合亮一

著者プロフィール

和合 亮一  (ワゴウ リョウイチ)  (

1968年、福島市生まれ。福島市在住。詩人。高校の国語教師。1999年、第一詩集『AFTER』(思潮社)で第4回中原中也賞受賞。2006年、第四詩集『地球頭脳詩篇』(思潮社)で第47回晩翠賞受賞。現代詩の旗手として、詩作のほかにラジオやイベントなど多彩な分野で活躍。著書に『入道雲入道雲入道雲』『黄金少年』(共に思潮社)などの詩集のほか、『パパの子育て奮闘記』(サンガ)、『にほんごの話』(谷川俊太郎との共著、青土社)などのエッセイや対談本がある。2011年3月11日の東日本大震災での被災直後からtwitterで綴った「詩の礫」が話題となる。それらは『詩の礫』(徳間書店)、『詩の黙礼』(新潮社)、『詩の邂逅』(朝日新聞出版)として3冊同時に刊行された。

佐藤 秀昭  (サトウ ヒデアキ)  (写真

1948年、宮城県南三陸町志津川生まれ。宮城県石巻工業高校を卒業後、自動車販売会社の営業マンを経て、1982年から南三陸町志津川で家業の自転車店を継ぐ。南三陸町交通指導隊副隊長を経て、現在は交通安全協会志津川支部長として交通安全活動に携わっている。約7年前、インターネット・ブログを介して写真に魅かれ、以来、美しい南三陸の海山川の営みの写真を撮ることが生活の一部分となった。2011年3月11日の東日本大震災では、防災庁舎のすぐわきにあった自宅が流され、長年撮りためていた写真をすべて流出。しかし、知人に預けていた約1000枚の写真が奇跡的に手元に戻り、本書ではその中から選んだ写真を掲載している。

追記

内容紹介


見開きイメージ画像


上記内容は本書刊行時のものです。