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児童養護施設のソーシャルワークと家族支援 北川 清一(著) - 明石書店
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児童養護施設のソーシャルワークと家族支援 ケース管理のシステム化とアセスメントの方法

発行:明石書店
A5判
272ページ
上製
定価 3,500円+税
ISBN
978-4-7503-3310-6
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年11月
書店発売日
登録日
2011年1月11日
最終更新日
2011年7月11日
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紹介

児童養護施設での支援過程にソーシャルワークはどう介在させることができるのか。筆者が30年以上前から考えてきた本テーマは、現場実践者たちとの研究会でさらに深化した。その学びの成果をもとに経験主義的な支援に科学化・標準化の必要性を論じた刺激的論考。

目次

 はじめに

第1章 児童養護施設で暮らす子どもとその家族の生活断面
 第1節 現代社会における人びとの暮らしと社会福祉
 第2節 児童養護施設で暮らす子どもが抱える背景的課題
 第3節 児童養護施設における「子育ち」支援を取り巻く諸相
 第4節 児童養護施設における家族支援の基本的視座

第2章 児童養護施設におけるソーシャルワークの体系化のために
 第1節 施設養護としての支援過程への評価
 第2節 ソーシャルワークを体系化するための前提的作業
 第3節 児童養護施設実践の中核機能はケアワークなのか
 第4節 家庭支援専門相談員業務の構造

第3章 児童養護施設とクリティカル・ソーシャルワーク
 第1節 施設養護としての支援過程の混迷
 第2節 「クリティカルな眼差し」とソーシャルワークの支援過程
 第3節 クリティカル・ソーシャルワークとは
 第4節 「クリティカルな眼差し」の基本的な視座と施設養護
 第5節 家族を支援する施設養護の科学化のために


第4章 児童養護施設実践の支援原則とソーシャルワーク
 第1節 検討すべき課題の提起
 第2節 実践現場の混乱とアイデンティティの喪失
 第3節 「ワーカー」「利用者」関係から考える施設養護の実践原則
 第4節 「実践原則」から構想する施設養護としての支援過程

第5章 施設養護としての家族支援とケース管理の方法
 第1節 確認すべき課題
 第2節 家族支援の場におけるアセスメントと一元的な管理の意義
 第3節 一元的なケース管理とITを活用するアセスメントの方法
 第4節 施設養護におけるスーパービジョンとケース管理

第6章 家族支援のためのアセスメントと支援計画策定の実際――ケース管理のシステム化を目指して
 第1節 共有したい課題意識
 第2節 事例[1]佐藤峰夫(仮名) 相談受理過程における主訴の誤認識
 第3節 事例[2]神永神(仮名) 義父による実母へのDVと本児への暴力
 第4節 事例[3]田淵明(仮名) 両親の勾留
 第5節 事例[4]木村良人(仮名) 乳児院からの措置変更
 第6節 小括

第7章 グループという場で子どもと家族を支援するソーシャルワーカーに贈る言葉
 第1節 施設養護における「持続可能性」の視点
 第2節 グループ状況における支援=「手を放せ目を離すな」の意味再考
 第3節 おわりに

 あとがき(拙稿一覧)

前書きなど

はじめに

 社会福祉制度の仕組みのなかで今なお措置制度が残り、収容管理的な感覚を払拭できない施設運営が広範に存在し、支援過程に機能するシステムのすべてにおいて時代の潮流に取り残された感のある児童養護施設。現在、このような支援過程に垣間見える、実践者が社会福祉サービスの利用者でもある子ども達との間に引き起こす、事件性を伴う暴力の介在する混乱と混迷は、その証左とする側面もないわけでない。対処すべき課題への明確な方略(strategy)を見出せないまま、追い詰められているかのように語られる実践者としての「苦しみ」と「悲しみ」の構造は、一段と内在化し「たこつぼ化」傾向に拍車がかかる。加えて、社会福祉実践のマインドから乖離することの検証もないまま、闇雲に実践することだけが強調される経験至上主義の「拡散化」は、何かを共有する基盤の醸成を一段と困難にしている。
 本書は、政策主導で施設(建物)サイズの小規模化は進むものの、依然として脱施設化の流れに背を向けているかのようなイメージを持たれがちな実践場の実態と向き合うにあたり、非現実的とも、あるいは現場逃避とも揶揄されるであろうソーシャルワーク論に準拠し、この実践理論の特徴を形づくる「思考の枠組み(perspective)」を起点に編むことにした。それは、生活型社会福祉施設におけるソーシャルワーク実践の態様を探究する者として、その実践の伝統的形態をなす児童養護施設が抱え込んですでに久しいが、機能面および制度面の課題と一度は真剣に対峙する必要があると感じてきたことによる。人として今にも崩れるかのように見える「苦しみ」と「悲しみ」の構造は、それを抱え込んだ実践者と共に超克することが必要となろう。そのことなしにわが国の社会福祉実践が「ソーシャルワーク化」されることはないとの強いこだわりに対する、ささやかな課題提起を企図する「挑戦」でありたいとの思いがあるからである。そして、このような作業の先に、古すぎるとも、そして時代的遺産のようなともいわれる児童養護施設で織りなす子どもと職員とによる暮らしは、もはや、このような場(setting)でしか「命を繋ぐ」術を持ち合わせていない者たちへの「説明責任(accoutability)」を誠実に果たしつつ営むべきとする考えを説き明かしたいとの願いを込めた。

 (…中略…)

 児童養護施設は、入所理由が解消された場合、子どもと措置解除をどのように迎えるかが支援活動の重要なテーマになる。本児は被虐待を主訴(=入所理由)としているが、施設が措置解除に向けて本児と共に構想する支援計画は一体何であったのであろうか。そこで構想されたものは、心の「すさみ」を深化させる意図があったはずもない。しかし、ここで行われた「タイムアウト・ルーム」の利用は、小学校2年生でしかない本児にとって「癒し」になり「立ち直り」に繋がる機会となるよりも、「過酷なまでの試練」を与えたに過ぎなかったように思えてならない。ここにも不適切なかかわりがあったとする内省がスタッフに機能しなかったのは何故なのであろうか。主訴が、本児の生き様にどのような影響を及ぼしているのかを吟味した結果と、現実に行われた「タイムアウト・ルーム」を利用することとの間に見出せる齟齬は、どのように説明することが可能か。そもそも本児に暴力を加えた実母は、施設からどのような支援を受けながら本児の生き方の再生過程にかかわりを持ち、自ら母子関係の修正に参画することになるのか。いずれも判然としないままに、今、彼は児童自立支援施設で暮らしている。
 施設内で散見した本児の暮らしぶりの多様な現実からは、支援過程や支援計画への疑義が、子ども達への権利侵害・人権侵害の可能性を含んで際限なく浮上する。施設養護による支援が「経験と勘と骨と直観」にのみ依拠してきたため、その「つけ」のように、課題解決に見通しも立たないまま、支援課題が一段と複雑化することに加担していたように見えてならない。
 子どもを「置き去り」にしたままの「子育て支援=親や家族への支援(家族支援)」や「子育ち支援=子どもの生き方の支援(本人支援)」はまったく意味をなさない。そこで、本書は、施設養護による支援が、子ども達やその家族(家庭)の「主体形成」に貢献する取り組みになることを企図し、そのための視座をソーシャルワークとの文脈(context)を明確にしながら論究した。内容的に見る限り、序説的研究あるいは試論的研究の域を出るものではないが、「養護原理」について、これを「(治療的)養育論」でも「(チャイルド)ケアワーク論」でもなく、支援論としての基本的コンセプトを「ソーシャルワーク論」に求め、子どもと家族を支援する施設養護の実践体系として提示することに努めてみたい。

著者プロフィール

北川 清一  (キタガワ セイイチ)  (

1952年北海道小樽市生まれ
1978年東北福祉大学大学院社会福祉学研究科修士課程修了
現在、明治学院大学社会学部社会福祉学科教授
救世軍機恵子寮・世光寮(児童養護施設)統括施設長
ソーシャルワーク研究所所長
【主な著書】
『グループワークの基礎理論』海声社、1991年
『社会福祉援助活動』(共編著)岩崎学術出版、1998年
『三訂・児童福祉施設と実践方法』(編著)中央法規出版、2005年
『ソーシャルワーク実践と面接技法』相川書房、2006年
『演習形式によるクリティカル・ソーシャルワークの学び』(共著)中央法規出版、2007年
『ソーシャルワークの研究方法』(共編著)相川書房、2010年

上記内容は本書刊行時のものです。