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夢をかなえる力
児童養護施設を巣立った子どもたちの進学と自立の物語
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2010年8月
- 書店発売日
- 2010年9月2日
- 登録日
- 2010年12月3日
- 最終更新日
- 2012年8月20日
書評掲載情報
2010-09-05 | 読売新聞 |
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紹介
児童養護施設からの大学等への進学率は、一般進学率の5分の1に過ぎない。経済的理由から進学をあきらめざるをえない子どもたちの多い中、逆境を乗り越えて進学・就職を果たした若者たちが綴る、自立への苦労と喜び、社会に対する思い、そして後輩へのメッセージ。
目次
まえがき
1 施設の暮らし、そしてこれから
・目標を持って生きていこう(津野貴大)
・初心を大切に(つばさ)
・産んでくれてありがとう(古葉成美)
・夢を見て……(夢子)
・自分が好きです(藤本枝里)
・私が大学生になった理由(小日向翔子)
・Never Too Late(松本隼人)
・夢の実現に向けて(さくら)
・学ぶ楽しさを知って(ひまわり)
・支えてくれる人たち(三本広志)
・施設の生活があったから(島原史郎)
・施設出身者の現実(古田夏央)
■コラム1 海が今日も輝いています―――奨学生からの手紙〈1〉
2 私の学生生活
・卒園後の生活をふまえて(飯田周平)
・一緒に祝福したい(ちびまるこ)
・理解してくれる人を大事に(浦山彩)
・今、思うコト(瀬尾春奈)
・ラグビーと出会って(町田辰憲)
・勝負の年を迎えて(刀坂昌輝)
・岐阜から東京、そしてイギリスへ(櫛田香織)
・動き出さなければ(毛利晃信)
・弓道の精神に学ぶ(曹建楠)
・ありがとう(ミルクティー)
■コラム2 楽しく仕事をしています―――奨学生からの手紙〈2〉
3 夢をかなえるために
・幸せへの道(もりこ)
・粗食の日(飯田淳二)
・がんばるのはこれからだ(小谷美沙子)
・ステキな未来は、つらそうな道にもたくさんある。(米田美沙)
・WILL(RC)
・看護師になるために(三宅莉加)
・飛行機にあこがれる(トビ)
・前を向いて(中尾友美)
・一歩(飛永勝博)
・夢をあきらめないで(佐藤春加)
■コラム3 好きな言葉は「ありがとう」
4 仕事・子育て、社会に出た今思うこと
・大学院を辞めたこと(もっこす)
・SEとして働く誇り(小田祐二)
・新しい家族(みさ)
・友達の大切さ・家族の重み・そして自立(やま)
・エール(淳人)
・夢から自立へ(志村千秋)
・立派な百姓を育てたい(あをによし)
・世の中意外となんとかなる!(千葉の小原庄助)
・誰の人生でもない、自分の人生を大切に(小川季実子)
・自分を愛せるようになりました(恩田由香里)
■コラム4 実話に重なる「鐘の鳴る丘」
アンケートにみる施設からの進学者の思い
児童養護施設で育った子どもの大学等への進学状況
応援歌―――施設からはばたく若者たちへ(藤原禎一:厚生労働省家庭福祉課長)
あとがきにかえて(福島一雄:全国児童養護施設協議会元会長)
参考資料 児童養護施設等で育った子どもが受けられる奨学金
前書きなど
まえがき(杉本正三:読売光と愛の事業団)
NHKのラジオドラマ『鐘の鳴る丘』の放送が、戦後の1947年7月から始まった。復員兵が、戦災孤児らと日本アルプスの麓の丘に少年施設を作り、苦難に負けず力強く生き抜いていく姿は大反響を巻き起こし、3年半に及ぶ国民的な大ヒット番組となった。
ドラマと現実が響きあうように、現在の多くの児童養護施設はこの時期に相前後して設立されている。行き場のない孤児を見かねて引き取り、私財を投げ打ち、わが子と同じに寝食をともにした民間人や宗教人も少なくなかった。
それから60年余も平和な時代が続き、日本は豊かな世界一の長寿国となった。しかし、その国で今また、児童養護施設(全国に569か所)に暮らす子どもたちの数はジリジリと増え、2年前にほぼ20年ぶりに3万人の大台に乗り、2009年3月現在で3万476人を数える。厚生労働省は、さらに2014年度には、社会的養護を必要とする子どもが2割程度増えると見込み、家庭的な小規模住宅型ホームや里親家庭などを中心に、その受け入れ先の整備を急いでいる。親のない子は減ったが、地域共同体の力が弱まり、格差の拡大、家庭崩壊が進む中で、親に見離されたり、親から虐待を受けたりする子どもが増えているからだ。近年の児童虐待の増加・蔓延ぶりは、児童虐待防止法の施行(2000年)によって拍車がかかっているが、被害者の子どもにとってみれば、現代は、まさに戦災にも匹敵する災厄期である。周囲が豊かであるがゆえに、その心の傷は、日本中がおしなべて貧しく、戦災孤児救済に共感の広がった時代に比べ、より深いのではないだろうか。
(…中略…)
奨学生の出身は北海道から沖縄まで全国に及ぶ。施設を巣立つまでに周囲から受けた恩に報いたいと、教育、保育、介護などの福祉分野、あるいは弱者のために働ける職へ進路を決めるケースが多い。こうした進学を夢みる奨学生の作文をまとめた『夢 追いかけて』(中央公論新社)を7年前に刊行した際、自らも施設で育った経験のある作家の井上ひさし氏は、「自分の運命を進んで受け容れ、人生の困難に雄々しく立ち向かう彼らの健気な生き方そのものが感動的なのだ」と感想を寄せ、「どんなに冷えた心も、ここに収められた文章が、かならず溶かして熱くするだろう」とエールを送ってくださった。
今回の本書は、その続編でもあり、主に進学後の体験を奨学生やOBにつづってもらった。後輩たちの役に立てるならと、ためらいをはねのけて筆をとり、つらい過去や挫折体験、その時々の心情まで包み隠さず吐露してくれた彼らの勇気に感謝するとともに、泉下の井上氏にこの書を捧げたい。そして、彼らを支える児童養護施設はじめ支援関係者の皆さん、資料提供などでご協力いただいたNHK、上毛新聞、鐘の鳴る丘少年の家、ワラの家、SBI子ども希望財団、東京都社会福祉協議会児童部会リービングケア委員会、出版を勧め、導いてくださった明石書店の石井昭男・吉澤あき両氏のご尽力にも厚く御礼申し上げたい。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。