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親権と子どもの福祉 平田 厚(著) - 明石書店
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親権と子どもの福祉 児童虐待時代に親の権利はどうあるべきか

発行:明石書店
A5判
448ページ
上製
定価 5,500円+税
ISBN
978-4-7503-3258-1
Cコード
C0032
一般 単行本 法律
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年8月
書店発売日
登録日
2010年8月24日
最終更新日
2011年9月16日
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紹介

児童虐待増加とともに改正に向けての議論が始まった親権法。法改正の論点・動向を整理するとともに、日本とイングランドの親権概念の成立と変遷をトレースすることにより、子の最善の利益のために親権法はどうあるべきなのかを考える。

目次

 はしがき

第1部 親権法と児童虐待防止法
 第1章 親権と児童虐待の関係
  第1節 親権と児童虐待の歴史
  第2節 民法・児童虐待防止法・児童福祉法
 第2章 親権法の争点
  第1節 親権復活の問題
  第2節 子の引渡請求権
  第3節 面接交渉権(面会と交流)
  第4節 利益相反行為
  第5節 親権喪失の要件
  第6節 ドイツ民法・フランス民法の検討
 第3章 親権法改正に向けて
  第1節 今までの議論
  第2節 2010年(平成22年)の法制審議会での検討事項
  第3節 親権法改正案の検討

第2部 わが国における親権概念の成立と変遷
 はじめに
 第1章 わが国における親権法前史
  第1節 古代における親の権利
  第2節 中世における親の権利
  第3節 江戸時代における親の権利
 第2章 旧民法における親権概念
  第1節 親権概念の成立と展開
  第2節 民法以外における親権の取り扱い
 第3章 明治民法における親権概念
  第1節 明治民法と親権
  第2節 親権と社会法的規制
 第4章 日本文学における明治期の親権概念
  はじめに
  第1節 明治中期における親権
  第2節 明治後期における親権
 第5章 明治民法から現行民法へ
  第1節 大正デモクラシーと親権
  第2節 太平洋戦争と親権
  第3節 現行民法の成立

第3部 イングランドにおける親権概念の成立と変遷
 はじめに
 第1章 親権法前史
  第1節 16世紀の児童をめぐる法と社会
  第2節 17世紀の児童をめぐる法と社会
 第2章 親権概念の成立
  第1節 18世紀の児童保護立法
  第2節 フィリップ・アリエス学説とそれに対する批判
  第3節 社会的要因――18世紀における人口の急成長
  第4節 思想的要因――自然法思想の展開
 第3章 親権概念の確立
  第1節 19世紀における救貧法改正と親権
  第2節 コモン・ロー上の親権概念の確立
  第3節 児童虐待と親権奪の理論
  第4節 社会的基盤(1)=産業革命
  第5節 社会的基盤(2)=都市化と消費生活
  第6節 思想的基盤――自然法思想から功利主義哲学へ
  第7節 公教育の成立と親権
 第4章 親権概念の変容
  第1節 帝国主義下の経済と社会
  第2節 「国家の児童」概念の成立
  第3節 戦争の時代における経済と社会
  第4節 子の福祉の進展と親権
  第5節 資本主義黄金期の経済と社会
  第6節 親の有責性から福祉アプローチへ
  第7節 成長減退・インフレ期の経済と社会
  第8節 親権からパートナーシップへ

前書きなど

はしがき

 ここ数年来、少子化が進展して子どもに対する関心・配慮が高まっている反面、非常に痛ましい児童虐待の報道も枚挙にいとまがない。そのような状況の中で、子どもの命のかけがえのなさを見つめ直そうとするヒューマニスティックな議論とともに、戦争や産業のための国家資産として子どもの存在を捉え直そうとする動きも出てきており、まさに両極端な議論が同時進行している。そのような意味で、子どもをめぐる議論は混沌としているのである。
 こうした状況の中で、子どもに関する法律を改正していこうという動きも活発化している。大きなテーマとしては、家事審判法改正による「子ども代理人制度」の創設、民法改正による親権の一時停止・一部停止制度の創設、児童虐待防止法の改正による虐待対応の充実、などが挙げられよう。1994年(平成6年)には、わが国でも子どもの権利条約が批准され、子どもを保護の客体でなく、意見表明する主体として位置づけるように要請されている。また、児童虐待の事実がどんどん明るみに出てきたことから、2000年(平成12年)に議員立法によって「児童虐待の防止に関する法律」が成立した。子どもを意見表明する主体として捉える動きと子どもを虐待される客体として捉える動きは、正反対の方向を向いているようであるが、子ども中心主義の表と裏あるいは光と影の問題を表すことになる。
 子どもを単なる国家資産として捉えてしまうと、一人ひとりの子どもの顔は見えなくなってしまうだろう。大事なのは、子どもという抽象的な存在について一定の価値のもとに保護することではなく、人格を形成しつつある一人ひとりの子どもの命のかけがえのなさについてありのままに尊重することだろう。現在問題となっている法律上の議論の方向は、後者のような一人ひとりの子どもの命のかけがえのなさを捉えていこうとしているものだと評価することができる。したがって、今後の立法におけるキーワードは、抽象的な概念にとどまらない「子どもの福祉」や「子どもの最善の利益」でなければならない。
 本書では、親権法の歴史をトレースすることによって、真に子どもの福祉を目的とする親権法の行方について、法改正の動向を踏まえながら見定めようとするものである。第1部では、親権と児童虐待に関わる法的な論点について広く考察し、今後の立法論について私見を展開している。第2部では、わが国における親権法の成立と変遷について、主として法意識的な視点から歴史的にトレースしている。第3部では、先進国であったイングランドにおいて、主として社会経済史的な視点から、親権法がどのように成立し変遷してきたか、これからどのような方向に向かおうとしているのか、などについて歴史的にトレースしている。

(…後略…)

著者プロフィール

平田 厚  (ヒラタ アツシ)  (

弁護士。
1985年3月東京大学経済学部卒業、1990年4月第二東京弁護士会登録。
1996年9月~1997年9月ルーヴァン・カソリック大学(ベルギー)へ留学。
2004年4月明治大学法科大学院専任教授就任(民法担当)。
2005年2月クレオール日比谷法律事務所設立(パートナー)。
[主な著書]
『新しい福祉的支援と民事的支援――英国コミュニティケア改革とわが国の社会福祉基礎構造』(筒井書房、2000年)、『介護保険サービス契約書の実務解説』(日本法令、2000年)、『これからの権利擁護――「対話」「信頼」「寛容」を築く』(筒井書房、2001年)、『社会福祉法人・福祉施設のための実践・リスクマネジメント』(全国社会福祉協議会、2002年)、『知的障害者の自己決定権(増補版)』(エンパワメント研究所、2002年)、『高齢者の生活・福祉の法律相談』(編著、2004年)(青林書院)、『家族と扶養――社会福祉は家族をどうとらえるか』(筒井書房、2005年)、『高齢者福祉サービス事業者のためのQ&A 苦情・トラブル・事故の法律相談』(清文社、2007年)『家族法――Law School(第3版)』(日本加除出版、2009年)、『成年年齢――18歳成人論の意味と課題』(ぎょうせい、2009年)。

上記内容は本書刊行時のものです。