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子ども虐待と貧困 松本 伊智朗(編著) - 明石書店
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子ども虐待と貧困 「忘れられた子ども」のいない社会をめざして

発行:明石書店
四六判
256ページ
並製
定価 1,900円+税
ISBN
978-4-7503-3136-2
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2010年2月
書店発売日
登録日
2010年3月25日
最終更新日
2012年1月19日
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紹介

子ども虐待の背景としての貧困は現場ではかねて認識されてきたが、様々な偏見への懸念からその関係を問うことはタブー視されてきた。子どもの貧困が可視化され始め、今ようやく子ども虐待と貧困の関係が問いかけられる。どちらをもなくすことを願う待望の書。

目次

序章 いま、なぜ「子ども虐待と貧困」か(松本伊智朗)
 1 本書の主張と問題提起
 2 本書の構成と本章の課題
 3 子育て家族をめぐる貧困の現状
 4 調査結果に見る子ども虐待と貧困
 5 不利と困難の複合的側面
 6 「子ども虐待」と「貧困」の論争的な性格
 7 子ども虐待問題と貧困の再発見
 8 貧困と社会的共感
 序章補論 貧困という概念

第1章 児童相談所から見る子ども虐待と貧困(清水克之)
 1 毎日寄せられる子ども虐待通告
 2 重症な子ども虐待の生活条件調査
 3 子ども虐待は貧困問題と強い関係
 4 家庭に対する基盤整備を
 5 だれひとり「忘れられた子ども」のいない社会をめざして

第2章 母子保健から見る子ども虐待と家族の貧困(佐藤拓)
 1 見えてこない貧困への支援と母子保健
 2 保健機関の調査から見る貧困
 3 母子保健から子どもと家族の貧困に支援を行うために

第3章 学校教育から見る子ども虐待と貧困(峯本耕治)
 1 「見えにくい不利」防止と学校の役割――問題意識
 2 貧困が学齢期の子どもにもたらす「見えにくい不利」
 3 より深刻な「見えにくい不利」
 4 学校は貧困の世代間連鎖を防ぐ最大の公的システム
 5 学校でこそできる虐待防止と家族支援

第4章 自立援助ホームから見る子どもの「自立」と貧困(村井美紀)
 1 自立援助ホームの子どもたちの家庭の貧困
 2 自立援助ホームにたどり着くまで
 3 利用者が抱えるリスクと将来見通しの困難さ
 4 自立援助ホームの支援方法と内容
 5 自立の見通しとその後
 6 自立援助ホームの限界
 7 公的責任の不明瞭性

第5章 日米の先行研究に学ぶ子ども虐待と貧困(山野良一)
 1 いくつかの事例から――はじめに
 2 アメリカにおける調査・研究から
 3 日本における調査・研究から
 4 貧困が子ども虐待につながる経路(1)
 5 貧困が子ども虐待につながる経路(2)
 6 市民の使命として――おわりに

 あとがき(松本伊智朗)

前書きなど

序章 いま、なぜ「子ども虐待と貧困」か

   (…略…)

2 本書の構成と本章の課題

 ここで本書の構成を述べておきたい。
 第1章では、自治体における調査結果が検討されると同時に、児童相談所から見た実態が示される。執筆の清水は、やはり児童福祉司として長い経験を持つ。
 第2章から第4章にかけては、子どもの年齢段階ごとの課題を意識した構成になっている。第2章では、母子保健の現場から見える家族の現実と支援のあり方が示される。執筆の佐藤は医師として長い経験を持ち、母子保健の現場から子ども虐待に関する著作と政策提言も多い。第3章では学校という場から見える子どもの現実と、学校を舞台とした社会福祉的援助の可能性について議論される。執筆の峯本は子どもの権利に関心を寄せる弁護士であり、自身がスクールソーシャルワークとその組織化の活動に身を置いている。子ども虐待問題や教育・学校に関する著作と発言も多い。第4章では自立援助ホームを場にして、社会的自立に関わって子ども・青年の直面する困難と支援のあり方が示される。執筆の村井は児童養護問題とソーシャルワークを研究対象とする研究者であり、自身も自立援助ホームの運営に携わっている。
 第5章では、アメリカでの研究成果の概観と日本の児童相談所での実践の経験から、問題の整理がなされる。執筆の山野は長い経験を持つ児童相談所の児童福祉司であり、アメリカでの留学・研究の経験がある。貧困と子ども虐待に関する発言と著作も多い。
 これらの各章に共通するのは、「子ども虐待と貧困」という枠組み、子ども・家族の直面する困難を具体的に示す試み、そして、政策と実践の課題として現実的に議論する観点である。本章ではそれらの前段として、「子ども虐待と貧困」を議論する際の視角を試論的に整理しておきたい。執筆の松本は、貧困研究をベースにしながら児童養護問題と子ども虐待問題に関心を寄せる研究者である。以下では貧困に関する共通理解を整理するとともに、子ども虐待と貧困がそれぞれに論争的な概念であるがゆえに安易な結び付けは危険をはらむこと、したがって、それぞれの概念の深化が理論的課題としてあること、しかし、それにもかかわらず実践的な問題として避けて通れないこと、そして、この問題の議論は困難の渦中にある家族と子どもの支援のあり方と同時に、社会のあり方の問い直しを射程に含まざるをえないことなどを、読者とともに考えてみたい。

   (…後略…)

著者プロフィール

松本 伊智朗  (マツモト イチロウ)  (編著

1959年生まれ。札幌学院大学人文学部教授。専門分野は児童福祉論、貧困研究。北海道子どもの虐待防止協会運営委員、研究誌『貧困研究』(明石書店)編集委員などを務める。日本子どもの虐待防止学会評議員。
主な著書に『子どもの貧困白書』(編集委員、明石書店、2009年)、『子どもの貧困――子ども時代のしあわせ平等のために』(浅井春夫、湯澤直美と共編著、明石書店、2008年)、『子ども虐待 介入と支援のはざまで――「ケアする社会」の構築に向けて』(小林美智子と共編著、明石書店、2007年)など。

清水 克之  (シミズ カツユキ)  (

1967年生まれ。広島県東部こども家庭センター勤務。児童福祉司。1998年~2005年まで広島県福山児童相談所(現・広島県東部こども家庭センター)の地域担当児童福祉司、児童虐待対応専任児童福祉司を経て、2006~08年は広島県こども家庭課にて児童虐待防止対策などを担当。2009年から現場に復帰。児童虐待の実態を正確にとらえ発信することが有効な施策につながると、現場と本庁の双方向の立場から取り組んでいる。
共著書に『子どもたちの笑顔 みんなの宝 子育て支援デンタルネグレクトからの気付き(改訂版)』(編集委員、社団法人広島県歯科医師会、2008年)。

佐藤 拓代  (サトウ タクヨ)  (

1951年生まれ。小児科医、産婦人科医を経て1988年に保健所医師に。当時から保健師とともに子どもの虐待に関わり、調査から保健師活動が虐待支援に有効であると言い続けている。特に妊娠期からの虐待予防とネグレクトへの支援の重要性を強調している。日本子どもの虐待防止学会評議員。
主な論文に「虐待とその予防―周産期医学の視点から」『周産期医学』Vol:38(5)、2008年、「保健分野における乳幼児虐待リスクアセスメント指標の評価と虐待予防のためのシステム的な地域保健活動の構築」『子どもの虐待とネグレクト』Vol:10(1)、2008年。共著書に「虐待予防と親支援――保健所からのレポート」『最前線レポート児童虐待はいま――連携システムの構築に向けて』ミネルヴァ書房、2008年。

峯本 耕治  (ミネモト コウジ)  (

1959年生まれ。弁護士。1996~98年イギリス留学、子ども虐待防止について研究。大阪府社会福祉審議会児童措置審査部会委員、吹田市要保護児童対策地域協議会座長、大阪府教育委員会SSW事業スーパーバイザー、滋賀県教育委員SSW的支援事業スーパーバイザー、大阪市教育委員会児童虐待防止支援委員会委員など。
著書に『子どもを虐待から守る制度と介入手法――イギリス児童虐待防止制度から見た日本の課題』(明石書店、2001年)、『子ども虐待介入と支援のはざまで―「ケアする社会」の構築に向けて』(共著、明石書店、2007年)、『スクールソーシャルワークの可能性――学校と福祉の協働・大阪からの発信』(共編著、ミネルヴァ書房、2007年)など。

村井 美紀  (ムライ ミキ)  (

1955年生まれ。東京国際大学准教授。児童福祉領域を中心に、社会福祉援助論を研究・教育している。特に、子ども虐待、そのなかでも、社会的養護のもとに在る子どもへのおとなからの不適切な関わり、人権侵害の問題と、加害者側の抱える困難に関心がある。また、埼玉県の社会的養護のもとにある青少年の自立支援に取り組み、県内3か所の自立援助ホームを運営しているNPO法人の理事も務めている。
共著書に『虐待を受けた子どもへの自立支援――福祉実践からの提言』(編著、中央法規出版、2002年)、『援助職援助論――援助職が「私」を語るということ』(共著、明石書店、2009年)など。

山野 良一  (ヤマノ リョウイチ)  (

1960年生まれ。1985年、福祉専門職として神奈川県入庁。現在、神奈川県厚木児童相談所勤務、児童福祉司。2005~07年にかけて、アメリカ・ワシントン大学ソーシャルワーク学部修士課程に在籍し、児童保護局などでインターンとして働く。ソーシャルワーク修士(MSW)。現在、『なくそう! 子どもの貧困』全国ネットワーク(仮称)の設立に奔走している。
著書に『子どもの最貧国・日本――学力・心身・社会におよぶ諸影響』(光文社新書、2008年)、共著書に『児童虐待のポリティクス―「こころ」の問題から「社会」の問題へ』(明石書店、2006年)、『子どもの貧困白書』(編集委員、明石書店、2009年)。

上記内容は本書刊行時のものです。