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仕事がしたい! 発達障害がある人の就労相談
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2010年2月
- 書店発売日
- 2010年2月2日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
高機能自閉症やアスペルガー症候群、LDやADHDのような発達障害をかかえる人は就労のどこでつまずくのか。継続的な就労を実現するために必要な支援と考え方とは? 経験豊富な支援者と当事者の視点から本当に必要で効果が期待できる支援の枠組みを示す。
目次
はじめに
第1章 発達障害の特性と生きづらさの理解
第1節 発達障害の特性
1 知的障害と発達障害
2 LD(学習障害)とは
3 ADHD(注意欠陥多動性障害)とは
4 自閉症とは
5 アスペルガー症候群とは
6 その他
第2節 発達障害と社会的問題
1 虐待と発達障害
2 いじめと発達障害
3 不登校、ひきこもりと発達障害
4 非行と発達障害
5 就労困難と発達障害
第2章 発達障害がある人の就労を取り巻く課題
第1節 就労に向けた教育の課題
1 教科教育の課題
2 高等教育と発達障害がある人の就労
第2節 就労を支える制度と企業の課題
1 障害者の雇用の促進等に関する法律
(1)職業リハビリテーション
(2)障害者雇用率制度
(3)障害者雇用納付金制度
2 就職に向けての準備や訓練
職業準備支援
就労移行支援事業
職場適応訓練
公共職業訓練
3 企業との関係
(1)ミスジョブマッチング
(2)同僚・上司の無理解
第3章 発達障害がある人の就労支援のポイント
第1節 早期からの職業教育
1 学校から就労への移行支援
(1)発達障害に詳しい教員の養成
(2)保護者・クラスメートに対する発達障害理解教育
(3)ITP(個別移行計画)
第2節 就労支援のポイント
1 ジョブコーチといった支援のついた就労
2 適切なジョブマッチング
3 職場との連携
自閉症スペクトラムの人の場合
LDの人の場合
ADHDの人の場合
第3節 医療との関係
第4節 ソーシャルスキルの再検討
第4章 支援者・当事者からみた就労支援の実際
【支援者の立場から】
1 本人の意思決定を尊重して「待つ」支援
――高齢・障害者雇用支援機構 愛知障害者職業センター(井上恭子)
2 専門的支援を通して自己効力感を高める
――高齢・障害者雇用支援機構 東京障害者職業センター(松原孝恵)
3 発達障害グレーゾーンの若者の支援
――とちぎ若者サポートステーション(中野謙作)
4 障害の受容から始まる支援
――たちかわ若者ステーション(古賀和香子)
5 「自分で理解し自分で決定する」就労支援
――それいゆ西部地域センター(水野敦之)
6 障害特性に応じた継続的支援の道すじ
――くしろ・ねむろ障がい者就業・生活支援センターぷれん(高谷さふみ)
7 復職支援に必要な自信と安心の回復
――広島中央障害者就業・生活支援センター(宮崎聡)
――広島県発達障害者支援センター(西村浩二)
8 知的障害特別支援学校における就労支援
――小倉北特別支援学校(樋口陽子)
――福岡教育大学大学院(納富恵子)
9 特別支援教育での進路指導と就労支援
――滋賀県立日野高等学校(山口比呂美)
10 工業高校でのSSTと構造化による支援
――大阪府立佐野工科高等学校(松野良彦)
【当事者の立場から】
1 言語聴覚士という仕事から開けた世界(村上由美)
2 仕事の適性を見つける手助けがほしい(高橋今日子)
3 早期に支援にアクセスできなかったら……(高森明)
前書きなど
はじめに
平成17年に施行された発達障害者支援法によって、従来支援の対象外だったLD、ADHDおよび自閉症、アスペルガー症候群等の広汎性発達障害の人たちが障害者として認められるようになりました。しかしながら、身体障害者、知的障害者、精神障害者のように手帳で障害を証明することができないため、就職の際に障害者として雇用される障害者雇用率制度に該当するわけではありません。よって、企業側からみると現段階では障害者雇用の対象者として発達障害者を考慮することは少ない現状です。
(…中略…)
本書の事例においても、そのような自閉症スペクトラムの人たちが数多く占めているのは、わが国の企業ではまず適切な対人関係を保てることが求められるからかもしれません。
しかし、対人関係を適切にとることが難しいのが自閉症スペクトラムの人たちであるのに、対人関係スキルを求めても限界があります。
よって、就労支援を行う際には違う視点で支援をしていく必要があります。
まずは発達障害の人の興味・関心・能力に合った仕事のマッチングです。主体はあくまでも発達障害の人であって、支援者ではありません。昨今の厳しい雇用状況に鑑みて、「今は派遣切りの時代だから仕事は選べない」という就労支援関係者がいます。だからといって、発達障害当事者のニーズを無視した職場を選んだとしたら、就職することはできたとしても決して長続きはしないでしょう。まずは発達障害当事者の仕事に対するニーズを知ることから始める必要があります(ニーズアセスメント)。
ここで問題が出てきます。定型発達の人たちは仕事を探す際に、その仕事についてよく知っています。仕事の内容を自ら調べたり、先輩や知人から情報を得たり、自ら体験する人もいるでしょう。このように自らが就こうとする仕事を知るということで、その仕事をやりたい、その職種に就きたいというニーズを示すことができるのです。しかしながら、発達障害の人の中には自らニーズを示すことができない人も多いのです。それは小学校・中学校・高校・大学といった学校教育ではどちらかというと受け身の態勢であり、言われたことをやっていればなんとか対応できる部分もありました。そのため、自ら情報を集めたり体験したりする機会が少なかったからだと考えます。発達障害の人の就労支援の最初の段階では、いろいろな仕事を伝えることから支援が始まります。そして、いくつか体験をし、自ら「この仕事は楽しい」「この仕事ならできる」というニーズを引き出したうえで、彼らに適したジョブマッチングを設定しなければなりません。
また、一方で企業が発達障害に対する認識が低ければ、企業に対して発達障害の説明をする必要もあるでしょう。人事担当者はもちろんですが、一緒に働く同僚や上司の人たちに対して発達障害の基本的な特徴、そして一緒に働く発達障害当事者の特性や得手不得手なども伝えておくことが大切になります。
その意味では、発達障害の人の就労支援担当者は発達障害の特性を知っているだけではなく、その企業の職務内容をきちんと把握しておく必要があります。従来のジョブコーチのサポートは主に知的障害者が対象でした。支援の中身は、ジョブコーチが知的障害者の従事する仕事を前もって習得し、その後知的障害者と一緒に職場に入り、仕事のやり方を指導しながら知的障害者が仕事を覚えるまで援助していくといったものでした。しかし、発達障害の人の場合、職務そのものはジョブコーチが簡単に学習して教えることができるものばかりではありません。よって、発達障害当事者と企業との間に入って仲介するいわば通訳の役割を果たすことになるわけです。そういった意味では、ジョブコーチというより仕事と発達障害の人との関係をうまくコーディネートしていくジョブコーディネーターという名称がふさわしいかもしれません。
本書によって、発達障害の人のジョブコーディネーターの専門性が高まることと期待しています。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。
