版元ドットコム

探せる、使える、本の情報

文芸 新書 社会一般 資格・試験 ビジネス スポーツ・健康 趣味・実用 ゲーム 芸能・タレント テレビ・映画化 芸術 哲学・宗教 歴史・地理 社会科学 教育 自然科学 医学 工業・工学 コンピュータ 語学・辞事典 学参 児童図書 ヤングアダルト 全集 文庫 コミック文庫 コミックス(欠番扱) コミックス(雑誌扱) コミックス(書籍) コミックス(廉価版) ムック 雑誌 増刊 別冊 ラノベ
知的障害者の一般就労 陳 麗◆(著) - 明石書店
.

知的障害者の一般就労 本人の「成長する力」を信じ続ける支援

発行:明石書店
A5判
212ページ
上製
定価 3,300円+税
ISBN
978-4-7503-3096-9
Cコード
C0036
一般 単行本 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2009年11月
書店発売日
登録日
2011年6月27日
最終更新日
2011年6月27日
このエントリーをはてなブックマークに追加

紹介

知的障害者の一般就労・継続就労を成功させる鍵として「コンピテンス」(環境に働きかけ、効果的に操作する能力)の発達に基づいた支援を探る。当事者、母親、職場同僚、企業経営者などへの詳細なインタービューを通して、ほんとうに必要なニーズを明らかにする。

目次

 はじめに

第1章 「成長を促す支援」の研究に向けて――コンピテンスの考え方と探求方法
 第1節 コンピテンスの発達と社会的成長
 第2節 資料の収集・分析方法
  1 インタビュー協力者の概要とインタビュー内容と分析方法
  2 資料の分析方法――「ニーズの呻き」の「了解」

第2章 なぜ知的障害者が一般就労で成功できたのか――個人的要因と環境的要因の視点
 第1節 知的障害者の一般就労の実態
 第2節 インタビューの協力者の概況
 第3節 事例の概要
  1 小林さんの場合
  2 岩崎さんの場合
  3 大塚さんの場合
  4 工藤さんの場合
  5 岡村さんの場合
 第4節 考察
  1 環境因子
  2 個人因子
  3 知的障害者への就労支援の課題
 第5節 要約

第3章 母親の支援がもつ意味――母親自身の支援課題とニーズ
 第1節 母親に注目した理由
 第2節 インタビュー協力者の概況
 第3節 生活歴からその成長と支援の必要性を解明する
  1 浅野さんの場合
  2 池田さんの場合
 第4節 考察
  1 成長過程における母親の知的障害者への支援課題
  2 母親自身の支援課題とニーズ
  3 アタッチメントとコンピテンスの支援関係
 第5節 要約

第4章 福祉的就労現場の代表者の姿勢がもつ意味――一般就労への移行のキーパーソンとして
 第1節 福祉的就労現場の代表者に注目した理由
 第2節 インタビュー協力者の概況
 第3節 事例の概要
  1 松井さんの場合
  2 早川さんの場合
  3 田中さんの場合
  4 田島さんの場合
  5 戸山さんの場合
  6 内藤さんの場合
  7 川島さんの場合
 第4節 考察
  1 施設の類型および支援理念
  2 施設長の支援理念の形成要因
  3 一般就労に移行する支援
 第5節 要約

第5章 職場同僚からの支援がもつ意味――職場のナチュラルサポートのキーパーソンとして
 第1節 職場同僚に注目した理由
 第2節 インタビュー協力者の概況
 第3節 職場同僚大山さんから見た鎌田さん
  1 鎌田さんの入社
  2 就労支援の過程
  3 鎌田さんの継続就労への支援
 第4節 考察
  1 支援者と被支援者の支援関係持続メカニズム
  2 大山さんによる支援過程とその内容
  3 二者間支援関係を支える支援体制
 第5節 要約

第6章 企業経営者の支援姿勢がもつ意味――企業の社会的責任の発展の重要性
 第1節 企業経営者に注目した理由
 第2節 インタビュー協力者の概況
 第3節 安田さんの概要
  1 知的障害者の雇用・支援実態
  2 安田さんの経歴と福祉理念
 第4節 考察
  1 企業の社会的責任
  2 企業家のボランタリズムの精神
  3 支援システムの形成
 第5節 要約

第7章 グループホーム世話人の支援活動が就労継続に与える意味――ニーズとしての就労継続を支援する姿勢
 第1節 グループホーム世話人に注目した理由
 第2節 インタビュー協力者の概況
 第3節 事例の概要
  1 グループホームの開設
  2 職場生活への支援
  3 地域生活を含む日常生活への支援
  4 支援の理由
  5 今後の課題
 第4節 考察
  1 ニーズをめぐる概念の検討
  2 継続就労という目標に向けてのニーズ
  3 ニーズに応じる支援
 第5節 要約

第8章 要約と総合的考察――知的障害者の就労におけるコンピテンスの意義
 第1節 コンピテンスから発信したシグナル
  1 環境に適応するためのシグナル
  2 支援者の共感・感動を引き出すシグナル
 第2節 就労・継続就労の成功要因としてのコンピテンスの発達
  1 事例に見るコンピテンスの発達
  2 コンピテンスの発達をもたらす支援の要因
 第3節 就労・継続就労の失敗要因としてのコンピテンスの発達阻害
  1 事例に見るコンピテンスの衰退・発達阻害
  2 コンピテンスの発達を阻害する支援
 第4節 要約

 文献一覧

前書きなど

はじめに

(…前略…)

 まず、第1章では、知的障害者の就労を成功させる要因として、本書のキーとなる概念である「コンピテンス」や、資料の収集・分析方法について示す。知的障害者は「何か欠けた人」「支援を要する人」という受身の視点ではなく、本人には「力」があり、その可能性を信じて支援していこうとする姿勢を示す。
 第2章では、筆者自身が行ったインタビューから、知的障害者が一般就労に成功する要因として、個人要因・環境要因からとらえていく必要があることを示す。ここでは、屈辱的な環境でも、呻きながらも懸命に生きている知的障害者の生命力が垣間見られる。
 第3章では、筆者自身が行ったインタビューから、母親自身もさまざまなニーズを抱えていることを示す。それはたとえば、障害受容、途方に暮れる母親への支援、知的障害者の「社会的自立」である。そして社会的自立という最大の親の悩みを解決するには、自ら支援者を探し出す知的障害者のもつコンピテンスと、それに応えるアタッチメント概念が重要となる。
 第4章は、施設経営者・施設長・代表者に対するインタビュー結果を示す。ここで、施設の支援理念と支援体制の方向を大きく左右する施設経営者・施設長・代表者などの支援理念こそが知的障害者の個別ニーズに応じた支援を実現するための最重要要因となりうることを示す。
 第5章では、職場の同僚に着目してインタビューした。同僚が、いかにして要支援の重度知的障害者を継続的に支援できるかは、同僚とほかの支援者(たとえば、障害者の家族や地域生活支援機関の職員)との関係のみならず、同僚(とくに、キーパーソン)と障害のある従業員との関係にこそ焦点が当てられるべきことを示す。
 第6章では、一般就労の場における継続就労の成功要因としての「企業経営者による支援」の重要性に着目し、企業経営者のインタビューを通して、その支援の形成プロセスを探ることを試みた。障害者雇用の経営理念を実現するには、企業が内部の支援体制を整えることと、外部の支援機関や公的な助成制度を利用すること、さらに企業の障害者雇用責任を社会が承認することなどが必要である。各企業は、それぞれの事情や方針にしたがって、それぞれの支援システムを構築する。その支援システムが、やがて社内に障害との共存の文化を形成していくのである。
 第7章では、グループホーム世話人が知的障害者の継続就労に対して行う日常的支援過程を通して、継続就労の達成要因を探った。そこで、利用者の継続就労を成功裡に支援してきたグループホーム世話人の事例を取り上げた。利用者に合ったニーズの把握と支援ができた理由は、利用者主体の支援を行うことであり、また利用者と“共感”する支援姿勢に基づくものであった。
 第8章は、それぞれの事例を詳細に検討した結果、知的障害者が一般就労を継続することができた成功事例においては、本人にコンピテンスの発達が見られること、本人の社会的成長を見据えた支援が行われていること、そして、当事者の顕在的・潜在的なニーズへの支援者からの適切な応答が見られることが明らかとなるだろう。
 それぞれの章で述べるとおり、知的障害者の一般就労に及ぼす環境の影響はとても大きい。それは確かに正しく評価していく必要があるだろう。しかし、どのような状況でもコンピテンスを信じて成長させる姿勢の重要性を、繰り返し述べておきたい。筆者は日々地道にかつ誠実に知的障害者支援の現場で活躍しておられる方々に敬意を表したい。その方々に少しでも本書をお役に立てていただければ幸いである。

著者プロフィール

陳 麗◆  (チェン リィティン)  (

上智社会福祉専門学校専任教員。2005年、淑徳大学大学院社会学研究科社会福祉学専攻博士後期課程修了(社会福祉学博士)。中華民国智障者家長総会事務局勤務・社会福祉専門員[台湾台北市](日本の「全日本手をつなぐ育成会」に相当)等を経て現職。社会福祉士。
主な論文に、「知的障害者の一般就労継続に対する職場同僚の支援活動について」『社会福祉学』第45巻1号(2004.11)、「知的障害者の一般就労継続に対する企業経営者の支援活動について」『淑徳大学大学院研究紀要』第12号(2005.3)、「生活ホーム世話人の支援活動からみた知的障害者の一般就労継続要因」『職業リハビリテーション』第19巻1号(2005.9)、「知的障害者の一般就労に影響を及ぼす要因の解明」『社会福祉学』第47巻4号(2007.2)、「台湾の障害福祉の展開に関する検討」『上智社会福祉専門学
校紀要』第4号(2009.4)、‘A Study on a Clarification of Factors Influencing Competitive Employment of Persons with Intellectual Disabilities’,“Japanese Journal of Social Services”, No.5(2009.10)など。また訳書に『今求められるソーシャルワーク・マネジメント』(共訳、久美出版、2009)がある。

(◆=[女亭])

上記内容は本書刊行時のものです。