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現代フィリピンを知るための61章【第2版】 大野 拓司(編著) - 明石書店
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エリア・スタディーズ11

現代フィリピンを知るための61章【第2版】

発行:明石書店
四六判
340ページ
並製
定価 2,000円+税
ISBN
978-4-7503-3056-3
Cコード
C0336
一般 全集・双書 社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2009年9月
書店発売日
登録日
2011年3月18日
最終更新日
2011年3月18日
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紹介

わが国との500年に及ぶ交流の歴史をもち、いっそうその絆を深めるフィリピン。本書は、歴史、政治、経済、社会の仕組み、そして多様な文化や人々の暮らしを、最新のトピックスを交え紹介する。より深く知りたい人のために、巻末に詳細な読書ガイドを付す。

目次

 はじめに
 フィリピン全図

I 歴史を見直す
 第1章 フィリピン人――未来へのアイデンティティ
 第2章 ルーツ――源流を探る
 第3章 マレー世界――海域を行き交うヒト・モノ
 第4章 スペイン時代――植民地支配と住民の抵抗
 第5章 フィリピン革命――国民国家の創出と社会変容
 第6章 ホセ・リサール――国民英雄の遺産
 第7章 アメリカ時代――「恩恵的同化」の呪縛
 第8章 日本占領期――「トモダチ」の圧制
 第9章 独立後の歩み――等身大の国へ
 第10章 フィリピン民族博物館――独立100周年で開設

II 社会と文化を読み解く
 第11章 親族組織と価値観――核家族を超えた空間と関係の広がり
 第12章 教育――学歴・資格社会の光と影
 第13章 国語の形成――多言語国家が抱える苦悩
 第14章 フィリピン語――基礎はタガログ語
 第15章 聖地バナハオ巡礼――精霊信仰とキリスト教
 第16章 聖週間――民衆カトリシズム
 第17章 新宗教――フィリピン生まれのキリスト教会
 第18章 イスラーム――ムスリムってどんな人?
 第19章 市民社会――世界に提示できるモデルのひとつ
 第20章 女性の地位と役割――多様な「性」のはざまで
 第21章 暮らしの断面――マニラと地方の距離は縮むか
 第22章 干魚――作る人・売る人・食べる人
 第23章 フィリピン文学――想像と創造のパレット
 第24章 娯楽と社会批判――リノ・ブロッカ映画の志
 第25章 食文化――何はともあれ食べてみよう
 第26章 ジャーナリズム――ラジオが元気だ
 第27章 警察と犯罪――その限りなく曖昧な境界線
 第28章 「山下財宝」――黄金伝説の眩惑

III 政治を分解する
 第29章 憲法――ナショナリズムとリベラリズム
 第30章 歴代大統領――グロリア・アロヨで独立後10代目
 第31章 議会――三つ巴の「ねじれ現象」
 第32章 選挙――権益を賭けたギャンブル
 第33章 官僚機構――有為な人材リクルートがカギ
 第34章 地方政治――地方支配のメカニズム
 第35章 国軍――文民統制の伝統
 第36章 マルコス政治――開発独裁体制の功罪
 第37章 ピープル・パワー革命――カトリシズムの意味世界
 第38章 イメルダとコリー――欲望と怨念の回廊で出会った二人
 第39章 共産主義勢力――第三の時代に入った左翼運動
 第40章 少数民族――差別と搾取への抵抗
 第41章 中国系移民――そのアイデンティティのゆくえ

IV 経済の実態を知る
 第42章 国民経済――農業・農村開発と投資誘致
 第43章 小口経済――庶民が支えるサリサリ・ストア
 第44章 貿易・投資――ITが構造転換の推進力
 第45章 日本の政府開発援助――両国にとっての意味と必要
 第46章 ビジネス・エリート――ラム酒「タン」ドゥアイと「タン」ミゲル・ビール
 第47章 東ASEAN成長地帯とミンダナオ開発――地域開発の柱として高まる期待
 第48章 農地改革――インフラ構築が不可欠
 第49章 地場産業――鍛冶屋から塩辛づくりまで
 第50章 開発政策――環境問題との相克
 第51章 自然・地理――頻発する災害

V 国際関係から見る
 第52章 対米関係――引き続く過去?
 第53章 フィリピンとASEAN――ミドルパワーとしての貢献
 第54章 南シナ海紛争――スプラトリー諸島の帰属をめぐって
 第55章 海外への出稼ぎと移住――フィリピン人によるグローバリゼーション
 第56章 戦前の日比関係――近代日本の二面性とフィリピン
 第57章 戦後の日比関係――深まる相互依存
 第58章 日比人流――人の往来に見る新しい潮流
 第59章 看護師・介護福祉士――どう乗り越える? 言葉の壁と人材流出問題
 第60章 在日フィリピーノ――ニッポン暮らしもフィリピン流で
 第61章 日本の教会のフィリピン人――フィリピン語のミサ

 フィリピンを知るための文献・情報ガイド

前書きなど

   はじめに

(…前略…)

 フィリピンと日本の間には、500年を超える交流の歴史がある。16世紀半ばのスペインによる植民地統治が始まるはるか以前から、日本人は交易などを目的にルソン島やミンドロ島に足跡をしるしてきた。
 安土桃山から江戸時代初期にかけ、日本の御朱印船などがルソンの港に出入りした。商都大阪の堺港を出た帆船は琉球列島の沖で北東から吹く乾期の季節風を受けながら台湾の島影を右舷のかなたに見送りつつバシー海峡を南下、マニラなどをめざした。往路20日あまりを要する航海であった。マニラには最盛期3000人規模の日本町ができていたという。そこは、中国大陸の南岸や南シナ海周辺の島々から集まる産品と多彩な人々でにぎわっていた。マニラからは、スペインのガレオン船が黒潮に乗り、四国沖から紀州沖、さらには九十九里浜沖へと北上し、赤道海流をとらえて太平洋を横断、スペイン領メキシコの港アカプルコとの間を行き来した。マニラとアカプルコを結ぶガレオン交易はメキシコが独立する19世紀初頭まで続いた。
 しかしこの間、徳川幕府による鎖国政策の導入で日比間の直接的な交易は途絶え、日本町も歴史のかなたに消滅する。
 それから200年あまり。明治の開国とともに、日本人移民の流れは再びフィリピンへと向かう。マニラやセブ、ミンダナオ島のダバオを中心に生活の基盤を築いた日本人は2万5000人あまりに膨らんだ。昭和初期頃までには、アメリカ統治下のフィリピンに東南アジア最大の邦人社会が形成されていた。移住を仲介する拓殖会社も乱立したが、上海あたりで偽造パスポートを手に入れ、密入国・不法滞在する日本人労働者も少なくなかったという。
 だが、太平洋戦争の勃発に続く日本軍の侵攻、占領、軍政、そして敗戦へ。フィリピン諸島は最大の激戦地となり、投入された日本兵60万のざっと9割が没し、フィリピン側にも100万人の犠牲者が出たとされる。日比両国の関係に深い傷跡を刻み込む痛恨の歴史である。
 戦禍の中で念願の独立を果たした新生フィリピンと日本が、国交を正常化したのは1956年になってからである。そして半世紀あまり──。

(…中略…)

 日比両国の関係は500年の歴史を経て今日、貿易や投資、援助を中心にした経済分野ばかりではなく、人の往来や草の根交流なども含め太く緊密になった。「日本・フィリピン経済連携協定」(JPEPA、2008年発効)のもとで、フィリピンから介護士や看護師として日本の労働市場に参入する道が開かれ、日比交流の歴史に新しい一章が加わった。
 わたしたちは、そうしたフィリピンという国の成り立ちや、そこに暮らす人たちのことを、どう理解しているだろうか。どんな関心を寄せてきただろうか。この隣国を、ステレオタイプなイメージに閉じ込めていないだろうか。
 わたしたちは、この本を編むにあたって、フィリピンの歴史や政治、経済、社会の仕組み、さらには文化や暮らしなど幅広い分野について、できるだけ紋切り型の固定観念から解き放たれた視点に立って考えてみたいと思った。グローバルな視角から、この国をみつめ直そうと考えた。そして、未来への視座を念頭に置きつつ、今日のフィリピンを理解しようと構想した。
 初版が出版されたのは、今世紀が明けた2001年1月だった。以来、フィリピンの社会にはさまざまな分野でいくつかの著しい変化も起きている。そうした事情を勘案し、このほど初版をもとに、一部は大きく書き改め、最新のデータなども加え、第2版を編むことにした。
 各章の執筆は、初版と同様、それぞれの分野について第一線で活躍する研究者にお願いした。学生から社会人まで広範な読者を対象に、フィリピン理解の入門書として、また、より深い研究のための手引きに利用していただけるよう心がけた。読者のみなさまに、その目的が少しでもかなえられるなら幸いです。(…略…)

  2009年9月   大野拓司/寺田勇文

著者プロフィール

大野 拓司  (オオノ タクシ)  (編著

朝日新聞記者、中央大学大学院客員講師。アジア・アフリカ・オセアニア地域研究。主な著作にWar Reparations and Pease Settlement: Philippines-Japan Relations 1945-1956 (Manila: Solidaridad Publishing House, 1986)、『新版 入門東南アジア研究』(共著、めこん、1999年)、『現代アジアの統治と共生』(共著、慶應義塾大学出版会、2002年)、『新聞と戦争』(共著、朝日新聞出版、2008年)

寺田 勇文  (テラダ タケフミ)  (編著

上智大学アジア文化研究所教授。主な著作に『暮らしがわかるアジア読本 フィリピン』(共編、河出書房新社、1994年)、『比島宗教班関係史料集』(全2巻、共編、龍渓書舎、1999年)、『東南アジアのキリスト教』(めこん、2002年)、“Christianity and the Japanese Occupation”, Philippines-Japan Relations (Ateneo de Manila University Press, 2003)

上記内容は本書刊行時のものです。