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マスメディア 再生への戦略 世古 一穂(著) - 明石書店
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マスメディア 再生への戦略 (マスメディアサイセイヘノセンリャク) NPO・NGO・市民との協働 (エヌピーオーエヌジーオーシミントノキョウドウ)

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発行:明石書店
四六判
240ページ
並製
定価 2,200円+税
ISBN
978-4-7503-3044-0   COPY
ISBN 13
9784750330440   COPY
ISBN 10h
4-7503-3044-2   COPY
ISBN 10
4750330442   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫僅少
初版年月日
2009年8月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2012年1月18日
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紹介

「客観報道」を標榜しながらも、国家や政府に寄り添いつづける日本のマスメディア――。市民セクターと協働する「公共するジャーナリズム」への転換を求め、市民に開かれた新たなるメディア検証組織の創設を訴える。

目次

 はじめに

第I章 マスメディアに必要な「市民の視点」
 1 オバマとメディアとNPO
 2 一市民であること
 3 「市民の視点」と「国民の目線」のちがい
 4 マスメディア記者とジャーナリズム
 5 新聞記事はどのようにつくられるのか――そのプロセスと責任の所在

第II章 公共するジャーナリズムとは何か
 1 「集中過熱取材」と「一極集中報道」のなかで見失われた市民社会の動き――「阪神・淡路大震災」取材を貫いた私的ジャーナリズムの陥穽
 2 操作される情報に対する市民側のメディアリテラシー――「オウム真理教事件」取材に見る公的ジャーナリズムの限界
 3 マスメディアとNPOの協働の成功事例――「コミュニティ・レストランプロジェクト」
 4 マスメディアと市民メディアの協働――コミュニティFMとG8メディアネットワーク
 5 マスメディアと国際的な市民活動の協働の可能性――日中韓のNPO/NGO/市民ネットワーキング

第III章 参加協働型市民社会へのパラダイムシフト
 1 参加協働型市民社会とは
 2 NPO、市民参加、協働――その真の意味
 3 東アジア型市民社会を拓く

第IV章 マスメディア改革に必要な「公共(する)哲学」――哲学者・金泰昌氏との対話

 おわりに――「日本版アクリメド」創設に向けて

 あとがき
 参考文献

前書きなど

   あとがき

(…前略…)

 筆者はこの10年、「NPO研修・情報センター」という人材養成の中間支援NPOを創って市民、NPO、行政、企業の橋渡し役となる協働コーディネーターの養成に取り組んできた。と同時に、食を核にしたコミュニティ再生プロジェクト「コミュニティ・レストラン」や酒蔵を核にしたまちづくりを進める「酒蔵環境研究会」といった実践活動をするNPOを数々展開してきた。
 その過程で、新聞、テレビ等多数のマスメディアの取材を受けてきた。しかし、マスメディアの取材を受けるたびに記者やデスクのNPOや市民社会に対する根本的な理解不足や、市民社会構築に向けてのマスメディアの人々の役割認識の薄さを感じてきた。
 共著者の土田修さんとは2000年春にコミュニティ・レストランの取材にこられたのが最初の出会いであった。そのころのことを思い出して話をしてみると、私が話していることばのひとつひとつ、NPO、NGO、市民公益、本来の第3セクター、公共哲学等々のことばが宇宙人のことばのようだったといわれる。
 それまで事件記者としてバリバリやってきた土田さんにとって取材対象はもっぱらいわゆる「お上」であり、そこを取材対象にしているうちに記者も「上から目線」になって「市民」を見ていたということだったのだろう。私はコミュニティ・レストランの事象だけを記事にするのではなく、その社会的な意味、市民社会の萌芽を記事にしてほしいとかなり議論した。
 普通の新聞記者の場合は「はいはい分かりました」といって結局コミュニティ・レストランの料理をつくっている場面や食べている場面をチャカチャカと写真にとって、こんな珍しい、またはおもしろいものができましたよ、という感じの記事にまとめて、おわり。取材も多くて2回、多くの場合は1回だけというのが多い。
 テレビの場合はもっと露骨に、絵になる場面を要求される。理念やミッションはともかく、絵になる場面が必要という取材姿勢は各局一律だ。理由をきくと、「自分は世古さんのいうことはわかるが上の指示でどうにもならない」というおきまりのことばが返ってくる。
 共著者の土田さんの場合は少しちがった。はじめは宇宙語にしか聞こえなかった私のことばをなんとか理解しようと何冊かNPO関連や私の著書を読んでコミレスの現場取材にも何回か来たうえで、ようやく記事にするというスタイルだった。NPOのことを本気で勉強しようと私が大学でやっていたNPO論の講義も聞きにきてくれた。
 私が伝えたい市民社会の本質的な意味、これからの社会は政治家や企業に任せておくのではだめで、自発的な市民がNPO/NGOとして公共を担う必要性と、そのことをマスメディアとしてきちんと伝え、市民社会をわが国でも実現していく必要性について議論した。活動と取材、報道が併走してきたまれな例であろう。
 そのことは本書で土田さんが書いているコミレスやNPOをめぐる動きや日中韓のNPO/NGOについての項目からもよく読み取れると思う。
 こうした対話と経験を通じて、「一市民としての視点」の意味を身体感覚でわかる記者が書く記事は明らかにちがう。マスメディアの記者にNPOや市民社会についてもっと知ってもらえば記事の質もあがり、市民社会を構築していくことに大きな力になると痛感した。
 本書はこうした思いから我々の対話と実践のプロセスを明らかにすることによって、マスメディアを変え、市民との協働を進めることの意義を伝えたいと思って構想した。
 構想から出版まで1年半かかったのはどのテーマをどのように取り上げ、どのように書くか、本当の意味での共著者として、とことん対話、取材、協働してきたためだ。また市民メディアやコミレスやメディアをめぐる状況についてもできるだけ最近の動きを書きつつ、5年、10年後に読んでいただいても意味のある書き方にしようと努力したのもその一因である。
 また、公共するマスメディアのあり方を公共哲学という新しい分野から理論的にも補強しておこうと公共哲学共働研究所の金泰昌氏との鼎談を入れた。従来のマスメディア論とは異なる新しい視点や気づきがあると思う。

(…後略…)

   2009年8月  世古一穂

著者プロフィール

世古 一穂  (セコ カズホ)  (

京都市生まれ。神戸大学文学部哲学科(社会学専攻)卒業、大阪大学大学院工学研究科博士課程後期修了。
生活科学研究所主任研究員をへて、特定非営利活動促進法の制定に尽力した。人材養成を専門とする中間支援NPO「NPO研修・情報センター」を1997年11月に開設。同センターは99年東京都より特定非営利活動法人の認証を取得、代表理事として現在に至る。
2006年より金沢大学大学院人間社会環境研究科教授。現在、日本NPO学会理事。酒蔵環境研究会代表幹事。1998年度から「食」を核にしたNPOの起業モデルである「コミュニティ・レストラン」プロジェクトを立ち上げ、ネットワークの代表を務めている。
現在、政策提言フォーラム委員(環境省)、地球環境戦略委員会委員(環境省)、社会実験推進委員会委員(国土交通省)等。その他これまでに地方制度調査会審議委員(総務省)、産業構造審議会委員(経済産業省)、中央環境審議会専門委員(環境省)等の審議会、委員会委員多数歴任。
編著に『協働コーディネーター』(ぎょうせい、2007年)、『コミュニティ・レストラン』(日本評論社、2007年)、『挑戦する酒蔵』(農文協、2007年)、『参加と協働のデザイン』(学芸出版社、近刊)。著書に『協働のデザイン』(学芸出版社、2001年)他多数。

土田 修  (ツチダ オサム)  (

金沢市生まれ。名古屋大学文学部卒業。
中日新聞社入社後、名古屋本社社会部、北陸本社報道部、東京本社社会部、川崎支局、立川支局をへて、現在、東京本社首都圏編集部次長。この間、愛知県警、石川県警(春秋クラブ)、警視庁(七社会)、警察庁、事件遊軍、外務省(霞クラブ)、東京社会部ニュースデスク、総務省を担当し、阪神・淡路大震災、オウム真理教事件、住専問題、旧陸軍登戸研究所、フィリピン・カモテス諸島医療奉仕、日中韓NPOネットワーク、コミュニティ・レストランプロジェクトなどを取材。
一方、NPO法人の「NPO研修・情報センター」「シーズ」「ATTACジャパン」の会員や、フランスの月刊評論紙「ル・モンド・ディプロマティーク」日本語版の翻訳スタッフなど、さまざまなボランティア・市民活動に携わっている。日本マス・コミニュケーション学会会員、NPO公共哲学研究会会員。
共著に『なごや新三百景』(中日新聞社、1987年)、『挑戦する酒蔵――本物の日本酒をもとめて』(農文協、2007年)。著書に『南海の真珠カモテス――元学徒兵のフィリピン医療奉仕』(邂逅社、近刊)等。

上記内容は本書刊行時のものです。