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相互依存のグローバル経済学
国際公共性を見すえて
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2008年12月
- 書店発売日
- 2008年12月5日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
世界中にグローバリゼーションが進展しつつある現実をふまえ、「相互依存」の観点から、これからの地球経済を分析し展望する「国際公共経済学」の試み。同時に、標準的な経済学教科書としても使えるよう、既存理論の紹介や具体的事例、練習問題まで多数収録。
目次
はじめに
表紙カバー写真について
第 I 部 貿易における相互依存
第1章 グローバルな相互依存
第1節 グローバル化とは何か
第2節 相互依存とは何か
第3節 国境なき経済とは何か
第4節 日本のグローバリゼーションは進んでいるか
第5節 経済的相互依存の例示
第2章 自由貿易による相互利益
第1節 どんな社会にも通用する分業の原理
第2節 貿易の種類
第3節 比較生産費説(自由貿易の原理、リカード・モデル)
第4節 自由貿易からの利益(gains from free trade)
第5節 交易条件(terms of trade)
第6節 ヘクシャー・オリーンの要素賦存定理
第7節 要素価格均等化定理
――ヘクシャー・オリーン(H・O)の第二の定理
第8節 リプチンスキー定理
第9節 ストルパー・サミュエルソン定理
第10節 レオンティエフ逆説
第3章 貿易、投資、雁行形態、空間経済学
第1節 国際投資と貿易
第2節 プロダクト・ライフ・サイクル理論(Product Life Cycle, PLC)
第3節 雁行形態論(Flying-geese Pattern of Economic Development)
第4節 PLC理論と雁行形態論の類似点と限界
第5節 ダニングの直接投資論(OLI, 折衷論)
第6節 空間経済学
第7節 事例研究――産業集積と直接投資(マレーシア、タイ)
第8節 知識資本の経済学
第4章 貿易政策と経済統合
第1節 貿易政策(従価関税、数量規制)
第2節 貿易自由化(GATT・WTOの関税引き下げ)
第3節 経済統合の分類
第4節 経済統合の効果
第5節 経済統合の動向
第6節 歴史の皮肉?
第7節 APEC――特徴と可能性
第II部 金融における相互依存
第5章 国際収支と国民所得――理論と実際
第1節 日本の国際収支
第2節 国際収支とマクロ経済(ISバランス論)
第3節 複式簿記
第4節 国際収支調整の理論
第5節 国際収支の動向――世界、米国、中国
第6章 外国為替と国際通貨
第1節 外国為替
第2節 為替相場
第3節 国際通貨とドル、ユーロ、円
第4節 為替相場を分析する諸理論
第5節 国際収支と為替相場
第7章 国際金融とグローバリゼーション
第1節 国際金融市場
第2節 実際の金融取引――デリバティブ市場
第3節 日本の金融規制緩和――金融ビッグバン
第4節 事例研究――アジア通貨金融危機
第5節 国際マクロ経済学のトリレンマ理論
第6節 金融グローバリゼーションの拡大と深化
第III部 経済開発における相互依存
第8章 南北問題の歴史と変貌(1980年代までの傾向)
第1節 南北問題の登場と推移
第2節 困難な途上国の経済的自立
第3節 南の団結――UNCTADとNIEO
第4節 南南問題、持続可能な開発、東西問題の消失
第5節 貧困の原因と政府の役割
第6節 事例研究――アフリカの後発性:アフロ・ペシミズム
第9章 人間中心の経済開発(1990年代以降の傾向)
第1節 開発とは何か――根本的な見直し
第2節 UNDPの「人間開発指数」(HDI)
第3節 1990年代の新潮流――南南協力と参加型開発
第4節 人間中心の開発とミレニアム開発目標
第5節 将来も続く南北格差
第6節 第8・9章のまとめ――21世紀の課題
第10章 IT革命と経済社会の変化
第1節 地球規模のIT革命
第2節 工業化社会と情報化社会
第3節 情報革命の4つの特徴
第4節 IT革命とグローバリゼーション
第5節 ITサービス貿易と経済過程(エントロピーの増大)
第6節 商取引の4要素、ITサービス貿易の種類
第7節 ITサービス貿易の捕捉と計測
第8節 IT革命の帰結
第11章 経済学と国際公共哲学
第1節 新しい経済学の考え方
第2節 公共哲学と主流派経済学
第3節 開発経済学と公共哲学の接近
第4節 「形而上のグローバリズム」と「形而下のグローバリゼーション」
第5節 公共性の比較――WTO,FTA,APEC
第6節 経済系と生態系――人口、資源、エコロジー、公共性
第7節 総括と展望――「国際公共哲学」の萌芽
第IV部 総括
第12章 グローバリゼーションの光と影
第1節 グローバリゼーションの光と影
第2節 グローバリゼーションにともなう経済的な「不等価交換」
第3節 異質な他者とグローナカルな相互依存
第4節 途上国とグローバリゼーション
第5節 相互依存のグローバル時代における日本の役割
全体の結論
参考文献
索引
あとがき
前書きなど
はじめに
国際経済学におけるささやかな新機軸の試みを世に問いたい。標準的な国際経済学の教科書が扱う理論や事実をすべてカバーしながら、本書は一貫して、相互依存論やグローバリゼーションに焦点を合わせる。これらは21世紀の地球経済におけるキー・ワードである。未来の世界経済で必要なのは、グローバリゼーションの進行を当然視しつつも、相互依存のマイナス面やデメリット(demerit)をできるだけ減らし、そのプラス面やメリット(merit)をできるだけ増やす態度である、と私たちは考える。
こういう考え方から、本書は次のような12の疑問に答えようとする。
(1)相互依存とは何か。日本のグローバリゼーションは進んでいるか。
(2)比較優位はいかに決まるか。自由貿易はどんな相互利益をもたらすか。
(3)海外直接投資はどのように決まるか。雁行形態論や空間経済学との関連はどうか。
(4)貿易政策と経済統合はどれほど重要か。互いにどう関連するか。
(5)国際収支と国民所得は理論と実際においてどう関係しているか。
(6)外国為替や為替相場とは何か。国際通貨や国際収支との関連はどうか。
(7)国際金融の実際はどうか。金融グローバリゼーションはどう進むか。
(8)南北問題や「南南問題」はどうして生じるか。南北相互依存の課題は何か。
(9)経済開発のどんな見直しがなぜなされてきたか。どんな策が有効か。
(10)IT革命の貿易やグローバル社会への影響はどうか。
(11)国際公共哲学はなぜ必要か。主流派経済学との関係はどうか。
(12)グローバリゼーションはどんな光と影を伴うか。影(マイナス面)を減らすにはどうしたらよいか。
本書の新しい工夫(新機軸)をあえて述べるなら、以下の5つになる。
(a)相互依存(正の相互依存、負の相互依存/脆弱性相互依存、感受性相互依存など)に終始注目し、グローバリゼーションというキー・ワードで全体をまとめた。
(b)理論のみならず具体的事例(case study)を重視した。海外の現地での経験を随所に織り込んで、机上の空論を避けながら内容をより面白くするよう工夫した。筆者の一人が調査や滞在や出張、国際会議や奉仕活動などで住んだり訪れたりした国は47カ国になるが、そういう経験の積み重ねが本書の背後にある。
(c)イラストや図表を多用して初めて学ぶ学生の理解を助けるようにした。表のデータは最新のものを使用し、今日の読者のニーズに応じるよう心がけた。章末により高度な、より最近の話題を紹介する節もあり、研究者のニーズにも応じられるよう工夫している。参考文献や問題を加えて、さらに学びたい学生のニーズにも対応できるようにした。なお、問題の解答例は、明石書店のホームページ(http://www.akashi.co.jp/home.htm)内にある本書の詳細ページからダウンロードできるので、適宜検索し活用していただきたい。留学したいという学生のためには、できるだけ英語の表現も追加した。英語のほうが分かりやすいことも多い。なお、本書掲載の写真はすべて筆者(阿部)撮影のものである。
(d)通期(1年間)の国際経済学の教科書にも使えるように工夫した。全体は12章までに限定したので、ほぼ2回の授業で1つの章をカバーすることができるであろう。
(e)いただいたコメントや批判を取り入れ改良を積み重ねた。多くの章は長年にわたって授業やゼミで用いてきた教材であり、日本人学生や留学生との質疑応答の後に随時改良してきたものである。いくつかの章には、内外の国際経済学会や各種の学術雑誌、機関誌、紀要や著書で公表してきたものが含まれている。それぞれの段階でいただいたコメントに応じて内容の改善に努めてきたが、それらを集大成したものが本書である。
(…後略…)
上記内容は本書刊行時のものです。