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ステレオタイプとは何か
「固定観念」から「世界を理解する“説明力”」へ
原書: STEREOTYPES AS EXPLANATIONS
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2007年2月
- 書店発売日
- 2007年2月26日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
人は世界を理解するためにステレオタイプを形成する――本書は,これまで否定的に理解されてきたステレオタイプをとらえ直し,その形成過程,つまり人間が社会集団に対する印象や見方をどのように発展させるかを社会心理学の最新理論で精査した初めての成果。
目次
はしがき
(クレイグ・マクガーティ、ビンセント・Y・イゼルビット、ラッセル・スピアーズ)
第1章 ステレオタイプ形成の社会的・文化的・認知的要因
(クレイグ・マクガーティ、ビンセント・Y・イゼルビット、ラッセル・スピアーズ)
第2章 カテゴリー形成としてのステレオタイプ形成
(クレイグ・マクガーティ)
第3章 主観的本質主義とステレオタイプの生起
(ビンセント・Y・イゼルビット、スティーブ・ロッヒャー)
第4章 ステレオタイプの内容形成における理論の役割
(パトリシア・M・ブラウン、ジョン・C・ターナー)
第5章 錯誤相関とステレオタイプ形成:集団差異と認知的バイアスを理解する
(マリエット・バーンドセン、ラッセル・スピアーズ、ジュープ・バン・デル・プライト、クレイグ・マクガーティ)
第6章 依存性と集団に関するステレオタイプ的信念の形成:対人間の認知から集団間の認知へ
(オリビエ・コルネイユ、ビンセント・Y・イゼルビット)
第7章 ステレオタイプ形成における4タイプ:必要な手段による差異化
(ラッセル・スピアーズ)
第8章 個人の心象から世界の集合的道具へ:共有されたステレオタイプによって集団はどのように社会的現実を表象し変化させるか
(S・アレクサンダー・ハスラム、ジョン・C・ターナー、ペネロペ・J・オークス、キャサリン・J・レイノルズ、ベルトイアン・ドーゼ)
第9章 結論:ステレオタイプは選択的で、可変的で、そして議論のある説明である
(クレイグ・マクガーティ、ラッセル・スピアーズ、ビンセント・Y・イゼルビット)
引用文献
人名索引
事項索引
監修・監訳者あとがき
前書きなど
監修・監訳者あとがき
本書はCraig McGarty,Vincent Y.Yzerbyt,Russell Spears (Eds.) STEREOTYPES AS EXPLANATIONS, Cambridge University Press, 2002の全訳である。Craig McGarty(クレイグ・マクガーティ)はオーストラリア国立大学、Vincent Y. Yzerbyt(ビンセント・Y・イゼルビット)はベルギーのルーヴァン・カトリック大学、Russell Spears(ラッセル・スピアーズ)はアムステルダム大学に所属し、集団間関係、ステレオタイプ、偏見、社会的認知といった社会心理学の重要なテーマの研究を続けている研究者である。
本書を訳出するに至った経緯は、社会心理学を専攻し、大学院時代から集団間葛藤や偏見・差別に関心を抱き、細々とステレオタイプ研究をしてきた監修者と、監訳者である有馬、山下が出会い、新たなステレオタイプ研究を日本に紹介しようと意気投合したことに始まる。その後、訳者の大坪氏と山崎氏[崎は大が立]との話し合いのもと、本書の翻訳を決意した。さらに、監修者の勤務先である武蔵大学において、若手の研究者も交えてステレオタイプ研究の新しい動向について話し合うべく、2006年に「武蔵社会心理学研究会」を発足させた。本書の翻訳は、この研究会の最初の共同作業である。
日本では、認知の誤りや歪みとして否定的な面が強調されることの多いステレオタイプであるが、集団間関係を理解するうえで、マイナス面だけではない可能性をも探る研究をしたいと検討していたところで本書に出合った。ややもすると、詳しい実験手順の説明に気をとられてしまうが、本書の内容は、ステレオタイプを多面的に捉え直したものであり、原著に記されている以下の要約によく表れている。
ステレオタイプ化は社会心理学の重大な争点の1つである。しかしながらステレオタイプが‘なぜ’また‘いかに’形成されるかについて、まだ多くは知られていない。
本書は、ステレオタイプの形成過程、すなわち我々が社会集団に対する印象や見方をどのように発展させるかについて精査した初めてのものである。
ステレオタイプ化に対する伝統的なアプローチでは、ステレオタイプは誤った、歪んだ過程によるものと仮定されている。しかし、本書はそれとは全く異なり、ステレオタイプは社会集団のある局面、とりわけ集団間関係を説明するために形成されるという主張を展開する。この説を発展させるために、本書ではステレオタイプ形成についての古典的なアプローチと現代的なアプローチを詳しく検討し、カテゴリー形成、本質主義、誤った関連づけ、相互依存、社会的現実、共有されたステレオタイプといった新しい概念を重視している。
本書の結論は、ステレオタイプはまさに‘説明’であるということ、また同時に、ステレオタイプは極めて選択的で、変容可能で、意見の分かれる説明であるというものである。
本訳書が日本での今後のステレオタイプ研究の発展に少しでも貢献できるなら幸甚である。
2006年12月
監修者 国広陽子
監訳者 有馬明恵、山下玲子
上記内容は本書刊行時のものです。