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不完全犯罪ファイル2
最新科学捜査が挑んだ殺人・凶悪事件
原書: MURDER TWO: THE SECOND CASEBOOK OF FORENSIC DETECTION
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2006年2月
- 書店発売日
- 2006年2月7日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2010年3月15日
紹介
血痕,脳指紋,DNA鑑定,法昆虫学,復顔,毛髪と繊維,プロファイリング,死後経過時間,声紋……。科学捜査,法医学の進歩によって驚くべき解決を見た,世界4大陸で現実に起きた88の殺人事件・凶悪事件のファイル。まさに事実は小説よりも奇なりの傑作。
目次
ジョン・アラン事件/Allan, Jhon-1998
ロウエル・エイモス事件/Amos, Lowell-1994
トロイ・アームストロング事件/Armstrong, Troy-1992
フランク・アトウッド事件/Atwood, Frank-1984
ロイ・ベック・ジュニア事件/Beck, Roy, Jr.-1996
イポリットとリディ・ド・ボカルメ事件/Bocarme, Hyppolyte and Lydie de-1850
ブース・ディリンジャー事件/Booth Deringer, The-1997
アール・ブラムブレット事件/Bramblett, Earl-1994
グレゴリー・ブラウンとダーリーン・バックナー事件/Brown, Gregory, and Darlene Buckner-1995
エドウィン・ブッシュ事件/Bush, Edwin-1961
ブライアン・カルザコルト事件/Calzacorto, Brian-1990
ステュアート・キャンベル事件/Campbell, Stuart-2001
サー・ロジャー・ケイスメント日記事件/Casement, Sir Roger, Diaries-2000
ハドン・クラーク事件/Clark, Hadden-1992
マーティン・コルウェル事件/Colwell, Martin-1925
フレデリック・クロウ事件/Crowe, Frederick-1968
ジェームズ・ロバート・クルス事件/Cruz, James Robert-1993
ジョーン・カーリー事件/Curley, Joann-1991
ハワード・エルキンズ事件/Elkins, Howard-1969
フレデリック・エメット=ダン事件/Emmett-Dunne, Frederick-1953
ジェイク・フリーグル事件/Fleagle, Jake-1928
デイヴィッド・フレディアーニ事件/Frediani, David-1985
テリー・ギブス事件/Gibbs, Terry-1999
ジョージ・グリーン事件/Green, George-1938
ジョージ・グァルトニー事件/Gwaltney, George-1982
ジョン・ヘイ事件/Haigh, John-1949
ジェームズ・ハンラッティ事件/Hanratty, James-1961
ルイス・ハリー事件/Harry, Lewis-1986
エリック・ヘイデン事件/Hayden, Eric-1995
スティーヴン・ヘフリン事件/Heflin, Steven-1976
ウィリアム・A・ハイタワー事件/Hightower, William A.-1921
デイヴィッドとジョイ・フッカー事件/Hooker, David and Joy-1993
ウィルバー・ハワード事件/Howard, Wilbur-1976
アイスマン事件/Iceman, The-1991
マーク・ジャーマン事件/Jarman, Mark-1990
クレイトン・ジョンソン事件/Johnson, Clayton-1989
ブライアン・モーリス・ジョーンズ事件/Jones, Bryan Maurice-1985
シオドア・カジンスキー事件/Kaczynski, Theodore-1978
ジーン・カイデル事件/Keidel, Gene-1966
ロジャー・キビー事件/Kibbe, Roger-1986
カセム・ラシャール事件/Lachaal, Kassem-1986
マリー・ラファルジュ/事件Lafarge, Marie-1840
アンジェロ・ジョン・ラマルカ事件/LaMarca, Angelo John-1956
エドワード・レオンスキー事件/Leonski, Edward-1942
ジョージ・マッケイ事件/Mackay, George (Alias "John Williams")-1912
エルマー・マカーディ事件/McCurdy, Elmer-1976
デイヴィッド・マイヤーホファー事件/Meierhofer, David-1973
デイヴィッド・ミドルトン事件/Middleton, David-1995
ウォルター・リーロイ・ムーディ・ジュニア事件/Moody, Walter Leroy, Jr.-1989
モルモン遺言書事件/Mormon Will, The-1976
アール・モリス事件/Morris, Earl-1989
ケヴィン・モリソン事件/Morrison, Kevin-1996
リチャード・オヴァートン事件/Overton, Richard-1988
スタンリー・パトレクとジョゼフ・ステプカ事件/Patrek, Stanley, and Joseph Stepka-1945
ライザ・ペン事件/Peng, Lisa-1993
サムソン・ペレーラ事件/Perera, Samson-1983
ペルシャ・ミイラ事件/Persian Mummy, The-2000
チャーリー・フィリップス事件/Phillips, Charlie-1980
フォーンマスターズ事件/Phonemasters, The-1994
ウィリアム・ポドモア事件/Podmore, William-1929
エドモン・ド・ラ・ポムレ事件/Pommerais, Edmond de la-1863
デニス・ラーゾとスティーヴン・アッツォリーニ事件/Raso, Dennis, and Stephen Azzolini-1978
ジェームズ・ロバートソン事件/Robertson, James-1950
キース・ローズ事件/Rose, Keith-1981
ダーリー・ルーティエ事件/Routier, Darlie-1996
スティーヴン・シャー事件/Scher, Stephen-1976
ジョン・シュニーバーガー事件/Schneeberger, John-1992
ロジャー・セヴァーズ事件/Severs, Roger-1993
ポーラ・シムズ事件/Sims, Paula-1989
ウドハム・シン事件/Singh, Udham-1940
テヴフィク・シヴリ事件/Sivri, Tevfik-1988
デニス・スモーリー事件/Smalley, Dennis-1991
ティモシー・スペンサー事件/Spencer, Timothy-1984
サー・リー・スタック襲撃事件/Stack, Sir Lee-1924
バーバラ・ステイガー事件/Stager, Barbara-1988
パトリシア・ストーリングズ事件/Stallings, Patricia-1989
エリック・テツナー事件/Tetzner, Erich-1929
シャルル=ルイ・テオバル事件/Theobald, Charles-Louis-1847
ジャック・ウンターヴェーガー事件/Unterweger, Jack-1991
ヴィレム・ファン・リー事件/van Rie, Willem-1959
ダレン・ヴィカーズ事件/Vickers, Darren-1997
ヴィンランドの地図事件/Vinland Map, The-1965
アルバート・ウォーカー事件/Walker, Albert-1996
レイモンド・ホワイト事件/White, Raymond-1939
グスタフ・ウィルソン事件/Wilson, Gustav-1963
ポール・ウルフ事件/Wolf, Paul-1982
ウィリアム・ザフ事件/Zaph, William-1861
前書きなど
序 文
人間は二千年以上にわたって科学知識によって犯罪を解決しようと努力してきた。ローマ時代の医師たちは人が死ぬと必ず検死をして死因を見つけ出そうとした。これが犯罪事件にも拡大されたのが紀元前四四年のこと、最も有名なローマ人、ユリウス・カエサルが刺し殺されたときである。この場合、「フーダニット(犯人は誰か)」について大きな謎はなかった。だが、検死が行なわれたという事実は、人間の好奇心が犯罪捜査の幅をいかに広げていったかをよく表わしている。
誕生のときは前途洋々に見えたが、あとに続いたのは混乱の時代だった。異邦人の大群がヨーロッパに押し寄せ、ローマを略奪し、大陸全体を暗黒時代に投げ込んだ。ギリシャ・ローマの知識は踏みにじられ、ほとんどは永久に失われた。それから千年間の科学は、せいぜいがおぼろげな記憶のようなものである。復活がなされたのは世界の反対側でのことだった。一二四八年、中国の書物『洗断愚』は絞殺と溺死の症状をいかに見分けるかや、水に入る前にすでに死んでいたかどうかを決定する方法などについて初歩的な記述を展開した。大したものではないが、犯罪現場の綿密な調査を強調しているこの本は、今日科学捜査と呼ばれるものの方針を初めて書きとめたものとして重要である。
ヨーロッパがこれに追いつくには何世紀もかかった。それでも、罪のあるなしを決定するには、容疑者の手を火や湯の中に突っ込んだりするよりも、科学のほうが信頼できる手段となるのではないかと考えられるようになってきた。この考え方はヴィクトリア時代に、とくにフランスとドイツで、後にイギリスで花開き、イギリスから大西洋を渡ってアメリカにも広がった。それ以来、科学捜査の進歩が、犯罪解決を別の次元に推し進めた。弾道学から毒物学、脳指紋、法人類学、デジタル画像強調処理まで、その他すべての犯罪学研究所は悪との戦いを続けている。
本書はその進歩を記録しようとする試みである。九六年[明石書店、二〇〇〇年]の前作『不完全犯罪ファイル』と同じように、法医学によって驚くべき解決を見た典型的な事件を幅広く取り上げている。事件は四大陸にまたがり、参照しやすいようにアルファベット順に提示されている。どの事件の解決にも法医学的なひねりがあり、新機軸があり、月並みではない。それは直感的な閃きかもしれないし、さらにありそうなのは労を惜しまない調査と研究の結果だろう。毒物の正体を突き止め、弾丸の出所を突き止めようとする最初のぎごちない試みから、地上にいる人間の位置をピンポイントで知ることのできるGPSの技術まで、本書では、戦いの前線がどれほど多方面にわたっているかを示している。というのは、指紋やDNA鑑定が法医学世界のスターだということに誰も異論はないだろうが(どちらも最大級の見出しに値する)、ほかにも、同じくらい重要なたくさんの進歩があり、そうしたものも正当な評価を受けてしかるべきだと思うからだ。
本書は殺人事件の捜査を主に取り上げている。それにはちゃんとした理由がある。先端の法医学は非常に高くつく。そして、法執行機関には他の役所と同じように予算というものがあるのだ。予算はどうしても最も憎むべき犯罪に振り向けられることになる。しかし、目立たないところに目をやれば、法医学研究室が他の分野で勝利を収めている例が数多く見つかるだろう。
個々の事例のあいだに載せられた虫眼鏡のアイコンのついた記事は、主要な科学的進展とその進歩が生み出された経過を説明したものだ(前作に出てきた技術も大幅に見直され、内容も豊富になっている)。本書は法医学の素人向けに書かれているので、専門用語は最低限に抑えられている。犯罪者を裁くためのすばらしい技術を理解するのに物理や化学の学位はいらない。また、こうした進歩の流れを理解するのに役立つ年表もついている。
前作を出版したあとでいただいた読者の手紙に共通していたのは、法医学の偉大な先駆者たちへの賛嘆の念だった。ハインリヒ、ラカサーニュ、ヘルパーンほか、こうした科学者、発明家、捜査官の発見と、ときにはまったくの強情さが犯罪との戦いに革命を起こしたのである。そんなわけで、本書には二五人の有名人の横顔と関わった事件の説明を載せた。やはり虫眼鏡のアイコンで示している。これが、漠然としていることの多い有名人の個性にいくらかでも現実感を与え、彼らの特徴である激しい競争心を明らかにできることを願っている。
法医学の力を見せつける例がこのように並べられると、当然だが次のような疑問が出てくる。これほど優れた科学が利用できるのに、世界中の刑務所人口がこれまでにないほど膨れ続けているのはなぜなのか? たしかに、駆け出しの犯罪者なら、発覚は避けられないことに気づいて、しぶしぶとでも法を守ることにするのではないだろうか? その答えを説明する鍵は、最も重大な犯罪は主に一握りの常習犯によって犯され、そうした犯罪者は他の生き方ができないししようとも思わないという事実にある。しかし、もうひとつ理由がある。人間は悪を行なうにも実に創意に富んでいることである。現代の犯罪者は、まわりの社会と同じように前進し続ける。今日では、そうした人間は妄想に駆られて摩天楼を倒壊させる。インターネットのチャットルームで疑うことを知らない若い犠牲者を手なづけ、街角や会議室で麻薬を取引し、マウスのクリックで数百万ドルを吸い上げる。ある大陸で殺人を犯し、飛行機にとび乗り、世界を半周してまた殺人を犯す。要するに、現代の犯罪者は、先祖が想像もできなかったほどの、極めつけの無法行為をやってのけられるのだ。そして、この傾向が留まる兆しはなく、法医学は永遠にそれを追い続けなくてはならないのである。
もっと殺風景なレベルでも、戦いは容赦なく続く。次のようなことを考えてみてほしい。二〇〇一年にFBIが発表した数字によれば、アメリカでは三四分に一人が殺されている。暴力事件は五秒ごとに起きている。そして一時間につき三〇人の女性がレイプされ、性的な暴行を受けている(実際に起きた事件の大半は届け出られないと思われる)。恐ろしい数字だ。もしも法科学研究所がなかったとしたら、この数字がどれほど悪化するだろうか。
もうこれ以上の科学などいらない。わたしたちに必要なのは、「いい」科学だ。別の本で、法医学の歴史上でも陰鬱な出来事について扱ったことがある(『証拠の問題』、ウィリー社、二〇〇三年参照)。証拠をあいまいにしてしまう迎合的な「鑑定証人」はいつでも悩みの種だが、本書にはそうした出来事がほとんど登場しない。これは、知恵と良識への信念を示すものである。
本書の確信が偉大な科学の勝利にあるのは確かだが、人間的要素の大きさも見過ごされてはならない。ここに取り上げた事件のそれぞれには被害者がいる。断ち切られた命があり、おぞましい攻撃を受けた女性、騙された人々、嘆き悲しむ遺族がいる。こうした被害者にとって、現代の法医学研究所にある試験管や電子顕微鏡その他の道具は、単に感心するような話題というだけではなく、無慈悲で不当な世界でひとかけらの正義を勝ち取るためのたった一つの希望なのである。
上記内容は本書刊行時のものです。