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日本の移民政策を考える 依光 正哲(編著) - 明石書店
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日本の移民政策を考える (ニホンノイミンセイサクヲカンガエル) 人口減少社会の課題

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発行:明石書店
四六判
240ページ
並製
定価 1,800円+税
ISBN
978-4-7503-2182-0   COPY
ISBN 13
9784750321820   COPY
ISBN 10h
4-7503-2182-6   COPY
ISBN 10
4750321826   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0036  
0:一般 0:単行本 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2005年8月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2010年7月21日
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紹介

本格的な少子高齢化社会を迎える日本が,とるべき選択肢とは? 経済成長を維持するための移民の大量受け入れか,一定の安定を目指して限定的に移民を受け入れる道か。一人ひとりの読者が問題を考えるための指標や視点を多面的に提示する。

目次

はしがき
第1部 移民受け入れをどう考えるか?
 はじめに
 第一章 外国人労働者から、外国人、移民へ
  第一節 「外国人労働者」から「外国人」へ
  第二節 「外国人」から「移民」へ
 第二章 移民受け入れに関する議論の整理
  第一節 移民受け入れに関する二つの報告書
  第二節 各省庁の基本姿勢
第2部 既に多くの外国人が国内で働いている
 第一章 外国人労働者導入の経緯
  第一節 一九八〇年代後半の日本経済
  第二節 豊かな社会の労働観と人手不足
  第三節 出入国の管理と外国人労働者
 第二章 どのような外国人が働いているのか
  第一節 就労する外国人の四区分
  第二節 就労を目的とした在留資格の外国人
  第三節 身分または地位に基づく在留資格の外国人
  第四節 非正規就労者(不法就労者)
  第五節 外国人研修生の「研修」と「技能実習」
  第六節 留学生・就学生・家族滞在者のアルバイト
 第三章 いわゆる単純労働分野の問題
  第一節 一九八九年の入管法改正
  第二節 「外国人雇用状況報告」からみた就労状況
  第三節 間接雇用の拡大
 第四章 非正規就労者の抱える労働問題――相談現場からかいま見えてくるもの
  第一節 非正規就労者はどのような企業で就労しているのか
  第二節 労働相談の具体例から
第3部 外国人が日本で生活している
 第一章 従来の制度のなかで外国人が直面する困難
  第一節 「管理の対象」としての外国人
  第二節 社会保障(医療・年金)
  第三節 政治参加
  第四節 子どもの教育
  第五節 労働
 第二章 多文化社会の課題
  第一節 多文化社会の到来
  第二節 多文化化する地域社会の課題
 第三章 地域社会における多文化共生まちづくりへの挑戦――新宿区大久保地域の事例
  第一節 はじめに
  第二節 「お客さま」から「生活者」へ――韓国人経営者のヒヤリングから
  第三節 多文化のまちで共生を目指す――市民団体のヒヤリングから
  第四節 まとめ――知見
  補論 新潟県中越地震、そのとき外国人被災者は?
 第四章 非正規滞在外国人の人権救済に向けて
  第一節 外国人数の増加と多発する人権侵害
  第二節 非正規滞在外国人のおかれている状況
  第三節 具体的な相談事例
  第四節 在留特別許可を求める非正規滞在外国人
  第五節 おわりに
 第五章 判例からみた外国人
  第一節 外国人の法的地位
  第二節 在留をめぐる問題
  第三節 労働をめぐる問題
  第四節 社会保障などをめぐる問題
  第五節 公務就任権をめぐる問題
  第六節 参政権をめぐる問題
  第七節 刑事事件における問題
第4部 どうする? 移民政策
 第一章 「多文化共生庁」がなぜ必要なのか
  第一節 明日の日本を誰が担うのか
  第二節 マイノリティへの配慮と権利保障
  第三節 「外国人」対「日本人」という二項対立的な捉え方からの脱却
  第四節 外国籍住民のまちづくりへの参画と意見を反映する機関が必要
  第五節 ボランティアの有効活用と資格付与システム
  第六節 大学と外国人留学生の問題
  第七節 共生コストの重みと財政支援
  第八節 新聞メディアの外国人犯罪の報道は偏っていないだろうか
 第二章 「多文化共生庁」がもたらすもの
  第一節 共に老後を支えあう
  第二節 法整備への出発――多文化基本法制定の基盤
  第三節 オーバーステイを再考する
  第四節 多文化共生庁の担い手
  第五節 多文化共生への日本人自らの理念
 第三章 移民受け入れに関する考え方
  第一節 人口減少社会の経済展望
  第二節 移民導入問題と労働市場

前書きなど

はしがき
 日本においては、ここ一五年ほどの間に、外国人労働者問題に関する書物は数多く出版されてきたが、移民問題に関する書物はあまり出版されていない。極端にいえば、外国人労働者と移民とではどこが異なりどこが同じなのか、という点の一般的理解もなされていない状況にある。しかし、グローバリゼーションの波のなかで、外国人労働者は今後も増加するであろうし、日本人になる外国籍の人は増加しており、我々は「移民」の問題を避けて通ることができない状況に立ち至っている。
 ところで、外国人労働者問題や移民問題に関しては、論ずる人の立場・認識・目標などによって多種多様な主張がなされ、いわば百家争鳴の状態にあり、移民問題について一つの統一的見解に収斂させるほど議論は煮詰まっていない。
 本書は移民政策研究会の参加メンバー(依光正哲、鈴木江理子、宣 元錫、山口智之、伊奈正高、吉成勝男、山田正記、川村千鶴子、津川 勤)が分担執筆したものであるが、この移民政策研究会でも、参加メンバー個人はそれぞれ異なる意見・主張をもっている。本書では、大きくは「移民受け入れ」の是非に関する意見統一を行わず、また、個々の問題に関する評価についても意見調整を行わず各人の主張を尊重する立場を貫いた。
 本書は移民問題に関する論点を網羅的にカバーしているわけではなく、個々の論点について特定の立場からの主張がなされている。読者は、個々の論点にあるいは賛成しあるいは反対の意見をもつであろう。そして意見・議論を交わすことによって、国民的関心が喚起され、移民問題についての認識が深まり、移民受け入れに関する政策論議がなされるようになるであろう。本書がそのような一連の動きの契機となることを願っている。

 本書の構成を簡潔に記しておく。
 第1部は、移民受け入れ問題をどう考えるのかという問題提起を行っている。本書では、移民を「最初からその国の国民になることを念頭においた外国人」とし、外国人労働者を「基本的には母国に帰ることを前提として他国で働く者」とする。この両者の区別はそれほど厳密ではなく、実際には、「移民」が母国へ帰ったり、「外国人労働者」が母国に帰らずその国の国民になったりすることが多発する。しかし、入国の段階では、移民と外国人労働者は区別され、その扱いも異なる。この第1部では、日本は移民の受け入れを是認していないが、外国人労働者の滞在の長期化に伴い、事実上の「移民」を受け入れていることと等しい状況になっていることを認識すべきである、と主張する。

 第2部では、日本の国内で多くの外国人労働者が働いている現状・実態を明らかにしている。外国人の就労に関しては、統計的に把握することが困難であり、不完全な統計資料や個別情報に基づいて分析せざるを得ないのであるが、本書では、「就労を目的とした」外国人や日系人、外国人技能実習生、留学生のアルバイト、さらに不法就労者について、その就労実態と問題点を示している。ところで、本書では、いわゆる「不法就労」を「非正規就労」と把握する立場をとっている。決して資格外就労やオーバーステイを奨励するためではない。彼・彼女らの多くは日本社会の労働の一翼を担っているにもかかわらず、権利侵害の被害者となるケースが多く、「不法」という表現が彼・彼女らへの人権侵害を助長することにつながりかねない、という配慮からである。

 第3部では、外国人が日本の各地で生活し、地域のレベルでは多文化社会という現実が進展している姿が描かれるとともに、「非正規」の滞在者のおかれている困難な状況が報告され、さらに、判例からみた場合、就労・社会保障・公務就任権・参政権・刑事事件などの領域で外国人がどのような法的地位におかれ、それらがどのように変化しつつあるのか、などが検討される。そして、「外国人政策」が必要であることが主張される。

 第4部では、移民受け入れ政策をどうするのか、という点を考える。ここでは二つの見解が提示される。一方では、外国人と日本人という二項対立的発想から脱却し、日本がどのような移民政策をとるにせよ、「共に生きる」理念を掲げた「多文化共生庁」の設置が提唱されている。他方では、人口減少社会の到来は日本の経済規模を縮小させ、むしろ労働力過剰・大失業時代となる可能性が高く、外国人労働者への依存や移民導入はあまりメリットがない、という主張がなされている。
 本書の随所にはこの国の将来の舵取りに関する見解や提言がなされており、これらの問題提起に対して議論が国民的広がりをもってなされることを切に願うものである。

 最後に本書が世に出ることとなった経緯について簡潔に触れておきたい。本書の執筆のベースとなった移民政策研究会は、二〇〇三年一二月に第一回目の会合を開催し、その後、二〇〇五年四月までに合計一〇回の研究会を開催してきた。毎回、参加メンバーが研究成果を発表したり、特定のテーマに関して招聘した講師の報告を聞いたりして、移民問題に関する認識を深めてきた。そして、その成果を基礎に報告書を取りまとめることとなり、各メンバーは執筆分担に従い、自己の責任においてそれぞれの章・節を執筆し、二〇〇五年二月の段階でほぼ原稿が完成した。完成した報告書は移民問題に関してほんの一歩踏み出したに過ぎない性格ではあるが、この報告書を公刊することは日本における移民研究の空白部分を少しでも埋め、さらに移民問題への国民的関心を惹起するうえで意義のあることと考え、出版の可能性を模索した。

二〇〇五年七月
執筆者を代表して
依光 正哲

著者プロフィール

依光 正哲  (ヨリミツ マサトシ)  (編著

一橋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学
現職:一橋大学大学院社会学研究科教授
主要業績:編著『国際化する日本の労働市場』(東洋経済新報社)

上記内容は本書刊行時のものです。