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アメリカの対日占領政策とその影響 マーク・カプリオ(編著) - 明石書店
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アメリカの対日占領政策とその影響 (アメリカノタイニチセンリョウセイサクトソノエイキョウ) 日本の政治・社会の転換

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発行:明石書店
四六判
304ページ
上製
定価 2,800円+税
ISBN
978-4-7503-1999-5   COPY
ISBN 13
9784750319995   COPY
ISBN 10h
4-7503-1999-6   COPY
ISBN 10
4750319996   COPY
出版者記号
7503   COPY
Cコード
C0336  
0:一般 3:全集・双書 36:社会
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2004年10月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2015年8月22日
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紹介

連合国の占領は,長期的に戦後日本の政治・経済・社会にどのような影響を与えたのか。民主化と社会正義を求める日本側からの強い要求と米国の改革者との相互関係(もしくはその欠如)という観点から,占領期の改革過程のダイナミクスを多角的に検討する。

目次

まえがき(マーク・カプリオ、杉田米行)
第1章 二次的案件 ―一九五二年から六八年における米国の対外経済政策と日本― (マイケル・A・バーンハート)
 はじめに
 1 占領終了時までの対日経済政策
 2 冷戦期初期の対日経済政策
 3 ケネディ政権後期以降の対日経済政策
 4 高まる日米の経済摩擦
 おわりに
第2章 米国占領下のSCAP食糧政策と日本の経済復興(スティーブン・フックス)
 はじめに
 1 リンクシステム
 2 マッカーサーの警告と視察団
 3 農業協同組合の法制化と農地改革
 4 輸入食糧削減への努力
 5 食糧管理制度と地方分権
 6 食糧政策と産業復興
 おわりに
第3章 占領期の女性労働改革 ―その矛盾と遺産― (豊田真穂)
 はじめに
 1 労働基準法の制定
  1 戦前日本の労働保護と占領初期の指令/2 労働保護課と労働基準法案
 2 労働基準法の施行―SCAPの女性労働政策
  1 生理休暇反対論―「平等」という理想/2 深夜業禁止の施行――SCAPの矛盾
 3 占領終了後の日本で
 おわりに
第4章 米国の対日占領政策と北太平洋海洋資源保護体制の誕生、一九四五―一九五二年(清水さゆり)
 はじめに
 1 北大平洋遠洋漁業をめぐる日米対立と領海問題
 2 SCAPの対日海洋資源政策とその変遷
 3 日米加三国漁業交渉への経緯
 4 北太平洋の公海漁業に関する日米加三国条約の締結
 おわりに
第5章 米国の占領政策が日本の犯罪社会に与えた影響(H・リチャード・フライマン)
 はじめに
 1 タガがはずれた薬物統制
 2 法律と欠落部分
 3 法執行と欠落部分
 4 協力と排除
 5 占領が残したもの
 エピローグ――なぜドイツでは覚醒剤問題が起きなかったか?
第6章 戦後日本医療保険制度の変遷 ―転換点としてのドッジ=ライン、一九四五―一九六一年― (杉田米行)
 はじめに
 1 結果における平等
 2 理想主義的医療保険制度案
 3 ドッジ=ライン――日本医療保険制度の転換点
 4 国民皆保険への道
 おわりに
第7章 旧植民地出身者の処遇 ―占領期日本における韓国・朝鮮人居住者の政治的地位形成― (マーク・カプリオ)
 はじめに
 1 戦時中の朝鮮人認識および米国の占領準備
 2 占領政策と朝鮮人の行為
 3 朝鮮人の帰国と日本定住の困難
 結論――「最終的な解決」と在日韓国・朝鮮人の地位
第8章 米国の日本占領と戦後日中関係の岐路 ―日中戦後経済関係の分断をめぐって― (清水さゆり)
 はじめに
 1 占領下の日本と中国内戦
 2 日中貿易の再開をめぐる米国の政策
 3 日中貿易をめぐる日本政府の政策と民間団体の活動
 4 日中貿易統制に向けての米国の外交政策
 5 対中国貿易統制の多国間枠組みの制定をめぐる日米外交
 おわりに

前書きなど

 本書は連合国の占領が戦後日本の政治・経済・社会に与えた長期的影響を精査した研究書である。本書では、米国の改革者と日本側からの民主化と社会正義を求める強い要求との相互関係(もしくはその欠如)という共通テーマを念頭に置きながら、いろいろな角度から占領期の改革過程のダイナミクスを検討している。 第1章「二次的案件―一九五二年から六八年における米国の対外経済政策と日本―」で、マイケル・A・バーンハートは、外交や安全保障分野と比較して資料的制約が少ないにもかかわらず、二〇世紀の米国の対外経済政策がほとんど研究されてこなかったと述べている。さらに、対外経済政策決定過程においても、それは第一義的に米国政府と議会の応酬の産物であると同時に、各種機関の争いにより形成されていったものであり、日本のことなど眼中にもなかったと論じている。つまり、一九五〇年代・六〇年代に米国の対日経済政策といったものは存在しなかった。日本はそれなりの比重は占めたものの、あくまでも二義的な地位に置かれており、逆に日本はこの相対的無関心を利用して独自の政策を追求したと結論づけている。 第2章「米国占領下のSCAP食糧政策と日本の経済復興」で、スティーブン・フックスは、占領当局が直面した経済的混乱の中心には食糧問題があったと主張する。国内食糧増産を目指した占領当局の政策は、日本の食糧輸入依存体制を変えることはなかったが、戦後、米国最大の農産物輸出市場として日本が重要な役割を果たすこととなった。フックスは、占領中、国内食糧生産を補うために小麦・トウモロコシなどが輸入され、高度経済成長期までに、日本は米国農産物の広大な市場となっていたと論じる。現在でも日本は米国農産物輸出のもっとも重要な市場の一つとして位置づけられている。 第3章「占領期の女性労働改革―その矛盾と遺産―」で、豊田真穂は女性保護という観点から占領期の女性労働改革とその後の議論の展開を検討している。豊田は女性に対する時間外・深夜労働を制限する条項が撤廃された改正労働基準法(一九九九年四月一日施行)を高く評価している。本章では、深夜業禁止と生理休暇に関する議論に焦点を当てながら、一九四七年に制定された労働基準法の制定過程、占領下での施行、およびその改正に至るまでの経緯を検証している。 第4章「米国の対日占領政策と北太平洋海洋資源保護体制の誕生、一九四五―一九五二年」で、清水さゆりは、従来の占領史研究においてほとんど取りあげられることがなかった漁業資源の国際保護体制への日本の統合過程を検討し、それが米国の対日占領政策と第二次世界大戦講和の遺産の一環であると主張している。本章では主として、漁業という天然資源発掘型産業の多国間統制制度の構築をめぐって占領終結間際に行なわれた日米間の駆け引きと、米国国内の特殊利益を強く反映していた日米加三国間漁業条約を考察の対象としている。 第5章「米国の占領政策が日本の犯罪社会に与えた影響」で、H・リチャード・フライマンは、米国の対日占領政策が日本の薬物市場と薬物取り締まりに与えた影響について考察している。本章では、第二次世界大戦以前の厳重な国内取り締まりから占領下の日本での覚醒剤の流行の高まりへの移行状況、占領当局の薬物政策が日本に与えた影響、および占領期における警察・組織犯罪グループ・少数外国人の間の協力や疎外のパターン形成過程について検討している。 第6章「戦後日本医療保険制度の変遷――転換点としてのドッジ=ライン、一九四五―一九六一年―」で、杉田米行は終戦から一九六一年の国民皆保険達成までの医療保険制度の構築過程を分析している。杉田は戦後日本の医療保障体制の基調となった結果における平等主義の源泉、占領初期に打ち出された数々の理想主義的医療保障論、日本医療保険制度面でのドッジ=ラインの意義を順次検討し、ドッジ=ラインこそが、日本医療保険制度の一大転換点だと主張している。 在日朝鮮・韓国人は全員母国へ帰国する予定になっていた。日本に残留を希望する者には日本人とまったく同様の権利が与えられることになっていたが、占領軍は次第にその政策を変更させていった。第7章「旧植民地出身者の処遇―占領期日本における韓国・朝鮮人居住者の政治的地位形成―」でマーク・カプリオはこの政策転換の原因を究明し、それが戦後日本における在日朝鮮・韓国人に与えた影響を検討する。カプリオは、在日朝鮮人が置かれた状況という点から見た場合、占領軍の遺産は、日本の民主主義の実験において、彼らを取り込んだ法制度などよりも、この問題への関与の拒否したことに存在すると主張する。占領軍は日本人と朝鮮人の歴史的関係を認識し、この問題への積極的な関与を避けたのである。 第8章「米国の日本占領と戦後日中関係の岐路―日中戦後経済関係の分断をめぐって―」で、清水さゆりは、日本と中国の経済的紐帯に焦点をしぼり、占領期と独立回復直後という米国の極東政策の影響力がきわめて絶大であった時期に、日本政府と民間の利害関係者がその束縛からの自由を求め、そして挫折していった過程を明らかにしている。清水は、戦後しばらく日本が抱き続けた中国市場というアジア域内の潜在的巨大市場との緊密な経済関係とそれに裏打ちされるアジア主義的連帯の構想が、米国という域外超大国が紡ぎだす戦略的要請と多国間外交の重圧下に潜伏を余儀なくされた冷戦期の歴史的現実の一断面であると主張している。 従来、連合軍の対日占領政策の研究では安全保障や経済の問題が重視されていた。本書は、従来の占領研究ではあまりスポットライトがあてられていなかった分野を中心に検討した。その結果は占領政策の遺産がもつ多様性である。占領期のみならず、長期的な時間軸を取って検討してみると、その多様性がよく理解できる。占領研究は幅が広く、奥行きが深い。これまであまり研究されてこなかった分野を「新規開拓」することも重要である。そういった意味で本書が対日占領研究の幅を広げる第一歩となれば幸いである。二〇〇四年一〇月 マーク・カプリオ         杉田米行

著者プロフィール

マーク・カプリオ  (カプリオ,マーク)  (編著

マーク・カプリオ(Mark Caprio)<br>立教大学法学部教授。

杉田 米行  (スギタ ヨネユキ)  (編著

大阪外国語大学アメリカ講座助教授。

上記内容は本書刊行時のものです。