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監獄と人権2
現代の拷問・名古屋刑務所事件はなぜ起きたか
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2004年5月
- 書店発売日
- 2004年5月27日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
名古屋刑務所事件で白日の下にさらされた,革手錠・独居拘禁による殺人,死刑確定者への面会・通信の厳しい制限……枚挙に暇がない,日本の監獄の人権侵害の実態を暴き,施設の開放化・透明化と,国際水準に合致する監獄法の全面改正を訴える。
目次
まえがき
第1部 名古屋刑務所事件の再発を防ぐにはどうすればよいのか
第2部 刑事被拘禁者の人権保障にかかわる諸課題
1 名古屋刑務所事件――現代の拷問はなぜ起きたのか 事件の再発を防ぐためにはどのような改革が必要か――
2 刑は重くなっているか――過剰拘禁と厳罰化をめぐって――
3 警察拘禁制度の改革と拷問等禁止条約
4 未決被拘禁者の生活
5 拘禁施設職員等に対する人権教育について
第3部 海外の監獄事情
1 イギリス刑事司法・監獄調査報告書――刑事司法改革と監獄制度改革をめぐって――
2 オランダの刑事施設を訪ねて
3 ヨーロッパ拷問防止委員会(CPT)を訪ねて
4 ヨーロッパ拷問防止委員会「トルコに関する公式声明」
第4部 日本の刑事拘禁施設における人権状況
(コラム 監獄映画ガイド)
前書きなど
まえがき 規約人権委員会の最終見解 監獄人権センターが設立されたのが一九九五年二月のことである。一九九五年一二月に私が編者となって『監獄と人権』を明石書店から出版していただいた。それから、早くも九年あまりが経過した。 本書は、刑務所における人権保障の確立を求めて、監獄人権センターの仲間たちと取り組んできたこの九年間の苦闘の中で考えてきたことの中間的な決算ということになる。この九年間を振り返ると二つの大きな出来事が私たちの活動の節目であったことがわかる。 まず、第一は一九九八年一一月の規約人権委員会の最終見解であり、第二は二〇〇一年一〇月の名古屋刑務所事件の発覚であった。 一九九五年にはヒューマンライツ・ウォッチの日本の監獄に関するレポートが、一九九七~九八年にはアムネスティ・インターナショナルの日本の監獄などに関する二つのレポートが公表された。そして、このような国際人権団体の支援の中で、一九九八年の自由権規約委員会の審査は、国内のあらゆる人権団体にとってそうであったように、監獄人権センターにとっても、決定的に重要なものであった。そして、私たちは、ささいな規則の適用、革手錠の使用、長期の独居拘禁、死刑確定者の面会・通信の厳しい制限などに深刻な懸念を表明し、国内人権機関の設立と刑務所について信頼できる不服審査システムの導入、法執行官や裁判官を対象とする人権教育の実施などを勧告する歴史的な最終見解を手にすることができたのである。本書には、規約人権委員会に提出したレポートから事例部分を第4部として抜粋し、また、この勧告直後に日弁連主催の集会で人権教育について講演した「拘禁施設職員等に対する人権教育について」を第2部5として再録した。 名古屋事件の発生 この最終見解に対する法務省の対応をどのように評価するかは困難な問題である。法務省はこの勧告を無視したわけではない。当時私たちが特に問題としていた革手錠の使用については、これを厳格に限定する通達を発して人権侵害を防止しようとした。しかし、このような対応はまったく不十分なものであり、名古屋事件の発生を未然に防ぐことができなかった。私には一つの悔いがある。それは、規約人権委員会の最終見解の後、革手錠の使用件数が全国で減少したことに気を許し、名古屋事件の発生を予見できなかったことである。そして、ここでの最大の問題は、名古屋刑務所では監獄人権センターへの手紙の発信も妨害されていたし、そもそも不服申立そのものが厳しく敵視されていたということである。ここから、施設の開放化・透明化を進めることが何よりも事件の再発防止につながるという教訓が導き出される。 行刑改革会議の提言に至るロビー活動 二〇〇一年一〇月の名古屋刑務所事件の発覚から、死亡帳の開示、行刑改革会議の設立、そしてその審議を経て行刑改革会議の提言へと至った時期は、私たちにとっても疾風怒濤の時期であった。国会議員の力で明らかになった法務省の内部資料の分析のために幾晩も徹夜に近い作業が必要だった。行刑改革会議は、きわめてスピードの速い、出口の時期の決まっている会議体であった。対策も電光石火の対応が必要となった。私たちは、副代表の菊田幸一明治大学教授を行刑改革会議の委員として送ることができた。センターは日弁連の活動ともリンクして、できうる限りのロビー活動を行刑改革会議の委員・事務局に対して展開した。 監獄人権センターは、受刑者に対するアンケートの実施と海外調査の実施を強く主張し、これを実現させることができた。今回の行刑改革が一本骨の通った哲学をもつことができたのは、少なからぬ委員が実際に海外の刑務所を視察し、ヨーロッパにおける人間性を尊重した処遇の実態に直にふれたことが大きな根拠となっているように思われる。第3部に海外の監獄事情をレポートすることとしたのは、このような海外の刑務所の実態や、これを査察するヨーロッパ拷問防止委員会のような活動に一般の方々も理解と興味をもっていただきたいからである。(後略)
上記内容は本書刊行時のものです。