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デジタルゲーム学習 マーク・プレンスキー(著) - 東京電機大学出版局
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デジタルゲーム学習 (デジタルゲームガクシュウ) シリアスゲーム導入・実践ガイド (シリアスゲームドウニュウジッセンガイド)
原書: 0

社会科学
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B5変形判
388ページ
並製
定価 4,300円+税
ISBN
978-4-501-54540-6   COPY
ISBN 13
9784501545406   COPY
ISBN 10h
4-501-54540-2   COPY
ISBN 10
4501545402   COPY
出版者記号
501   COPY
Cコード
C3037  
3:専門 0:単行本 37:教育
出版社在庫情報
在庫あり
初版年月日
2009年4月
書店発売日
登録日
2010年2月18日
最終更新日
2011年10月14日
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目次

第Ⅰ部 デジタルゲーム学習とは
 イントロダクション
  警告―デジタルゲーム学習に適さない人
 第1章 デジタルゲーム学習革命
  さあ,楽しもう!
  デジタルゲーム学習革命がもたらすチャンス
  基礎学習―ただの復習ではない
  ケーススタディ1
  ケーススタディ2
  デジタルゲーム学習が実現すること
  キーメッセージ
 第2章 ゲーム世代―学習者はいかに変化したか
  学習者はどのように変化したか
  彼らは本当に考え方が違うのか?
  デジタルメディア―第二言語
  テレビとの違い―自分で操作するVS.見るだけ
  集中できる長さはどのくらいなのか?
  振り返り―消えゆく技術か?
  ゲーム世代の持つ10の特徴
 第3章 なぜ教育・研修は変わらないのか
  学習内容中心アプローチと学習者中心アプローチ
  AFTRB
  説明と確認テスト
  単線的で論理的なアプローチ
  学習とテクノロジー少史
  「人はどう学ぶのか?」大論争
  インストラクショナルデザイン―役に立つか,立たないか?
  練習の果たす役割
  なぜ変化は困難なのか?
 第4章 デジタルゲーム学習―学習者中心教育の新たな希望
  学習者中心の教育
  学習者テクノロジーは諸刃の剣
  ものすごい潜在能力
  学習者中心の環境に向けて―もし教育の世界が,ゲームの世界みたいだったら?
  今どきの学習者たちをやる気にさせるには
  学習への潜在的なやる気
第Ⅱ部 ゲームはどのように教え,なぜ有効なのか
 第5章 楽しさ,遊び,ゲーム―ゲームの何が人をひきつけるのか?
  楽しさ―偉大なるやる気の素
  楽しさと学習
  プレイ―普遍的な教師
  遊びと学習
  遊びと仕事
  ゲーム―構造を加える
  ゲームがゲームである要素は何か?6つの構造的要因
  ゲーム以外のインタラクティブメディア
  「デジタル」ゲーム
  ゲーム分類法―ゲームのカテゴリー
  コンピュータゲームデザイン
  優れたコンピュータゲームデザインの法則
  デジタルゲームデザインにおける他の重要な要素
  デジタルゲームの優先事項―カルチャーと個人
  デジタルゲームのリテラシー
  まとめ―ゲームの何がこれほど人をひきつけるのか?
 第6章 デジタルゲーム学習―なぜ,どのように機能するのか
  なぜデジタルゲーム学習が機能するのか
  デジタルゲームと学習をどう組み合わせるか
  ゲームスタイルの選択
  オーディエンス―プレイヤーたち
  題材―インタラクティブな学習のタイプ
  ゲームと学習を組み合わせる
  ビジネスと政治的な状況―「政治的に適切であること」
  利用可能な(または必須の)テクノロジー
  開発のために利用可能なリソースと経験
  導入―教育現場での利用
  デジタルゲーム学習の原則
 第7章 子どものためのデジタルゲーム学習―エデュテインメント
  学習ゲームとともに育つ
  幼児のためのデジタルゲーム学習―英才教育!
  幼稚園から高校のデジタルゲーム学習
  大学におけるデジタルゲーム学習
  結論
 第8章 大人のためのデジタルゲーム学習
  大人が遊ぶゲーム
  職場のコンピュータゲーム
  ジョバディ!―秘密の研修ツール
  シミュレーションはゲームなのか?
  デジタルゲーム学習とインターネット
  モバイル機器とデジタルゲーム学習
  結論
第Ⅲ部 先端的な組織の事例
 第9章 企業におけるデジタルゲーム学習―41の事例とケーススタディ:とてもシンプルなものからものすごく複雑なものまで
  組織外に向けた教育
  組織内教育
  最先端のデジタルゲーム学習
  まとめ
第Ⅳ部 導入
 第10章 デジタルゲーム学習をあなたの組織に導入する
  始め方
  利用可能なデジタルゲーム学習のカテゴリー
  あなたの組織に合ったゲーム学習スタイルを測定する
  予算に応じたデジタルゲーム学習の始め方
  デジタルゲーム学習を企業内大学に対応させるには
  ラーニング・マネジメント・システムとデジタルゲーム学習
  まとめ
 第11章 デジタルゲーム学習における教師と研修講師の役割―デジタルゲームを利用した指導
  プレザントビルからの脱出
  教師と研修講師の新たな役割
  なぜ研修講師や教師たちはゲームを作るのか
  実践的に行う
 第12章 経営陣を説得して予算を獲得する―デジタルゲーム学習の企画の立て方
  お値段はいくら?
  予算を獲得する
 第13章 効果を評価する―これは効果があるのか?
  反対者たち
  証拠―何についての議論なのか?
  古い世代はどうする?
  ノンゲーマーはどうなるか?
  障壁を乗り越える
  キャズムを越えて
 第14章 アイデアがあるなら
  モデル
  精神を後世に遣す
  第二のモデル―ツールやエンジンの開発
  企業向け教育研修会社をあてにするな
  ゲーム会社はあてにできるか?
  エデュテインメント会社はどうだろう?
  では,答えは?
 第15章 将来像―私たちはどこへ向かうのか?
  デジタル学習の未来
  デジタルゲームの未来
  デジタルゲーム学習の将来像
  さまざまな課題
注釈
索引
著者・訳者紹介

前書きなど

 訳者まえがき
 本書『デジタルゲーム学習―シリアスゲーム導入・実践ガイド』の原著書『Digital Game-Based learning』は,2001年に米国で出版され,その後の欧米における「シリアスゲーム」の潮流を生むきっかけの一つとなった著作です。21世紀に入り,生まれたときからデジタルメディアに触れて育った「デジタルネイティブ」たちに対して,学校や企業で従来の教育アプローチが機能しなくなってきたという問題を本書では詳しく考察しています。そしてデジタル時代に対応した学習アプローチとして,デジタルゲームを学習メディアとして利用する「デジタルゲーム学習」を提唱し,数々の成功例を生み出した著者の経験やさまざまな分野で進められている豊富な事例をもとに,デジタルゲーム学習の意義や可能性を論じ,導入のためのガイドラインを提示しています。
 著者からの日本語版読者に向けたメッセージにもあるように,本書で著者が論じた「デジタルゲーム学習」は,学習も含め広く社会的用途にデジタルゲームを利用することを提唱した「シリアスゲーム」のコンセプトに進化し,本書が出版されて以降,欧米で急速に関心が高まる動きとなりました。2002年に米国で設立された「シリアスゲーム・イニシアチブ」の先導により,シリアスゲーム推進者たちによる研究と実践のコミュニティが形成されて,各分野で活発な取り組みが進められました。新たにシリアスゲーム開発会社が起こされ,既存のゲーム会社や教育会社もシリアスゲームの開発部門を立ち上げており,非営利財団や研究機関などが各領域で大規模な開発プロジェクトに取り組むようになりました。そのような盛り上がりによって,「シリアスゲーム市場」と呼べる市場が形成されるに至り,本書で将来像として語られている「デジタルゲーム学習市場」は,数年のうちに現実のものとなってきています。
 そのようなシリアスゲームへの関心の高まりのなか,本書はこのテーマで最初に書かれた体系的な導入・実践ガイド,シリアスゲーム入門書の「古典」的な位置づけで認知され,このテーマに関心のある人々から広く読まれてきました。今日では欧米諸国の教育機関で,デジタルゲームと学習,教育ゲーム研究をテーマとした科目が設置されるところも出てきており,そのような教育の場で本書は基礎文献として取り上げられています。
 この欧米におけるシリアスゲームの流れは,2004年頃から徐々に日本に広まり始め,ニンテンドーDSの「脳トレ」ブームを契機とした学習・実用系ソフトウェアの普及の流れとともに,シリアスゲームへの関心が高まる動きにつながりました。2004年より日本のシリアスゲームコミュニティを支援する活動を続ける「シリアスゲームジャパン」による情報発信のほか,ゲーム情報系ウェブサイトや一般メディアでもシリアスゲーム関連のニュースが報じられることも珍しくなくなりました。2006年に経済産業省が設置した「ゲーム産業戦略研究会」の打ち出した「ゲーム産業戦略~ゲーム産業の発展と未来像~」では,ゲーム産業と他産業をつなぐコンセプトとしてシリアスゲームに通じる考え方が示されました。また,2007年度にデジタルコンテンツ協会が「シリアスゲームの現状調査」を実施し,国内のシリアスゲーム研究者,開発者の手によって欧米と日本国内のシリアスゲームの現状が報告され,国内の大学でのシリアスゲーム研究や企業でのシリアスゲーム開発の取り組みが進展している状況が明らかになりました。
 このような国内におけるシリアスゲームへの関心の高まりに対して,シリアスゲームの基本的な知識を学べる入門書やガイドとなる基礎文献が不足している現状が続いていました。2007年に上梓した拙著『シリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲーム』(東京電機大学出版局刊)では,シリアスゲーム概論的な内容を扱っていますが,さらにこのテーマを掘り下げて学び,実践を支援するガイドとなる日本語文献を提供する必要性を感じ,本書の出版を企画しました。
 本書で論じられている「楽しさ」と「学習」の理論的な考察や,古い世代とは異なった「ゲーム世代」の学習者の特徴,開発事例や導入のガイドラインは,出版から8年を経過した今日においても,これまで欧米で担ってきたような「シリアスゲーム入門書」あるいは「シリアスゲーム導入ガイド」となる価値を保ち続けています。本書は,日本語版読者の皆様にもシリアスゲームに関連する知識を掘り下げて学ぶための基礎文献としてご利用いただけると考えています。
 本書は出版からやや時間が経っていることで,本文中で語られている時事的な話題やゲームの事例は,ややレトロな感がある記述の目につくところがあります。たとえば,本書が書かれた2000年頃はソニーのプレイステーション2が発売されて間もない頃で,まだニンテンドーDSやWiiはもちろんのこと,マイクロソフトのXboxも本文中には出てきません。技術的な内容を扱う著作にはこのような情報の鮮度の問題は避けることはできませんが,ゲーム機の世代が進化し,業界地図も大きく入れ替わるほどに時間が経過した現在においては,むしろ本書のレトロな記述は熟成されて,新たな楽しさを生じていると言ってもよいと思います。
 技術的な話題のレトロ感を生じている一方,本書の教育分野に関する記述は,不思議なほど古さを感じさせないところも,本書の面白さを引き立てる要素となっています。第1章冒頭にASTDの年次国際会議での展示会の模様が記述されていますが,訳者が2007年にASTDに参加したときに目にした光景は,本書の記述とほとんど変わらないものでした。それに本書で批判されている学校の教室や教室や企業の研修現場における教育アプローチやオンライン講座の内容は,残念ながら現在もほとんど変わっていません。このゲーム業界と教育業界の変化のスピードの違いは,時間が経てば経つほど浮き彫りになってきており,むしろ今日の方が興味深く読める側面もあるでしょう。
 また,本書の第Ⅲ部で取り上げられているデジタルゲーム学習の事例は,いずれも2000年頃までの事例で構成されています。これらの「シリアスゲーム前夜」の事例は,すでに最先端の学習ゲームと呼ぶにはやや古めかしい感がありますが,すでに90年代までの間に,さまざまな分野で豊富な実践事例が存在していたこと示す資料としての価値を保っています。それに情報技術の進化の速さに比べて学習ゲームの進化が遅かったこともあり,事例で示されている内容そのものは今日の日本国内で目にする学習ゲーム事例と同じか,まだ先を行っているものも見られるため,実用的な面でもその価値を保っていると言ってよいでしょう。
 本書出版後に登場したシリアスゲーム事例には,本書で取り上げた事例がさらに進化,成熟したものが数多く出てきています。前述した拙著『シリアスゲーム』でそれらの事例を紹介しているほか,シリアスゲームジャパンのウェブサイト(seriousgames.jp)にも随時最新事例を紹介しています。それらをあわせてご参照していただくと、シリアスゲームのその後の展開についてさらに深く理解していただけることと思います。
 また,原著者が本書に続いて2006年に上梓した『テレビゲーム教育論―ママ!ジャマしないでよ 勉強してるんだから(原題Don't Bother Me,Mom-I'm learning!)』(東京電機大学出版局刊)では,本書で議論された「デジタルネイティブ」と「デジタル移民」の関係を,子育てや学校教育の文脈で詳しく考察しています。新しい世代の学習者像や学習メディアとしてのデジタルゲームについてさらに理解を深めるための文献としてご利用ください。
 最後に,著者が本文中で繰り返し指摘しているように,デジタルゲーム学習は万能な学習アプローチではなく,あらゆる学習問題を解決できるわけではありません。目指す学習課題を達成するには,学習内容の性質や学習者の特性に応じて,学習活動全体のなかでデジタルゲーム学習をどのように扱うかを詳細に検討する必要があります。デジタルゲームというメディアの目新しさに気を取られて,万能なソリューションであるかのような誤解や幻想を抱かないように留意することが不可欠です。さらに本書で語られているように,導入時には周囲の賛同を得るための地道な働きかけと,目指す成果を達成するまでも根気強さが求められます。いかなる変革と同様に,このデジタルゲーム学習にも地道な導入活動がつきものであることを本書は示しています。本書が示す重要な論点として,これらの側面についても読者の皆様にご理解いただけることを願っています。

上記内容は本書刊行時のものです。