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遠い風の日
- 初版年月日
- 2013年8月
- 書店発売日
- 2013年8月13日
- 登録日
- 2013年7月18日
- 最終更新日
- 2013年8月8日
紹介
あなたに、逢わなければならない理由がある―
透き通るほどに純粋な恋心。
憧憬にも似た過去への追憶。
再び巡り合った男女が紡ぐ、至純のラブストーリー。
三月も終わりに近いある朝、二人は静かに旅立った。
厳しい冬を堪え、遅い春が少しずつ感じられる季節になってきた。朝靄が空気を湿らせ、暖かな微風が心地よい。
街はようやく眠りから覚めたばかりで、まだ静けさに満ちている。
その朝靄の中、寄り添うように、祐介と菜奈子が歩いていた。(中略)窓から流れる風景を眺めていた菜奈子は呟いた。
「あら、雪よ」
その言葉に祐介も窓の外を眺めた。(中略) (本文より)
目次
目次
「遠い風の日」のイメージ曲に寄せて 4
「遠い風の日」のテーマ曲 5
1章 夢の続き 7
2章 遠い記憶を辿る 29
3章 めばえた愛 41
4章 恋の予感 69
5章 流れ星 89
6章 止まった時計 105
7章 嘘と現実 111
8章 魅せられて 129
9章 流浪の旅路 145
10章 運命の悪戯 161
11章 遥かなる旅立ち 179
12章 夢の跡 191
書き終えて (あとがき) 215
前書きなど
書き終えて (あとがき)
歳を重ねると、無性に子供のころが懐かしく想い出されてきます。
久しぶりに故郷の街を尋ねると、小学校や中学校もコンクリートの建物に替わってしまい、校庭の片隅に建立された二宮金次郎の銅像も壊されたまま、野ざらしになっています。
神社の秋祭りもひっそりとして、氏子が暇そうに酒を飲み、祭典の旗だけが、秋風にパタパタ揺れていた。
町の中を歩くと、空き地が目立つ。日中なのに人影もなく静まりかえっている。
懐かしい想い出も風景も変わり、微かな記憶の中で呆やりと眺めていました。
そのような光景を目のあたりにして、幼いころが無性に恋しくなり、浮かんできたのが「遠い風の日」のテーマでした。
この題名が決まると、忘れ掛けていた記憶が泉の如く湧いて、ペンが原稿用紙の上を走り出しました。
物語の始まりは同級生、菜奈子からの電話でした。菜奈子と祐介は、幼いころからの幼な馴染み。今の時代のような遊び道具はなく、ただ外で走り回っていた毎日。ゲームもテレビもない時代でしたが、それなりに楽しい日々を過ごしていたのです。
ある日、「隠れん坊」の遊びをした。倉庫の中で一緒に隠れた時、菜奈子に不思議な感覚を祐介は感じた。
高校生になった雨の日の体育館で、フオークダンスを踊った時も、菜奈子に愛のようなものを感じてしまった。そのように、少しずつさまざまな出来事を重ね、菜奈子も祐介に恋をしてしまうのです。
この小説は、フイクションですが、誰もが経験する初恋を題材にしました。
わたくしは小学生の時、二人の女性の担任の先生に習いました。
一、二年生の担任の先生は、長い髪の優しい憧れの人でした。三年後に結婚のため学校を辞めました。先先が転居するたびに、その家に必ず遊びに行っていました。今で言う、ストーカーの走りだったのですね。昭和四年九月の生まれで現在も健在です。
四年生からは、赴任してきた先生が担任になり一年間教わりました。その先生も弁護士の方と結婚し東京に住み、同人誌や民主文学(ペンネーム・川口 緑)で活躍しておりましたが、一九九五年、六十三歳の時に脳出血で急逝されました。
わたくしが小説を書くようになったのも、小学校で二人の女性の教師と出会ったからです。温泉街の町で育ち、小学校、中学校時代にさまざまな刺激を受け、その想いが小説を書く動機になっています。
今でも楽しかった学生時代の記憶が甦ってきます。わたくしの故郷と恩師、友人に心から感謝をいたします。
題字と和歌の書(本文六十七頁)は、書道家の横田嶺子先生にお願いいたしました。
金山 邦雄
上記内容は本書刊行時のものです。