書店員向け情報 HELP
出版者情報
在庫ステータス
取引情報
大江健三郎とその時代
「戦後」に選ばれた小説家
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2019年9月9日
- 書店発売日
- 2019年9月9日
- 登録日
- 2019年7月18日
- 最終更新日
- 2021年10月14日
書評掲載情報
2020-01-19 | 毎日新聞 朝刊 |
MORE | |
LESS |
紹介
文学と時代の相克
生誕から現在まで、戦後文学の頂点を極めた作家の全貌に迫る
四国の山深い地に生まれ、上京後まもなく東大生作家としてデビュー、23歳で芥川賞を受賞、1994年にはノーベル文学賞受賞。華々しい活躍とともに時代の寵児となった小説家は、核や憲法九条など戦争と平和をめぐる問題について社会的発言を続けた知識人であり、オピニオンリーダーでもあった。本書では、半世紀以上にわたり書き継がれた数々の作品と発言を隅々まで渉猟し、相互に影響し合った作品と時代の関係を丹念に解き明かしていく。気鋭の戦後史研究者が挑む、画期的評伝。
「本書は、大江健三郎の文学と発言とを辿りながら、戦後日本社会を論じていくが、大江に注目するのは、単に彼が「有名人」だからではない。そうではなくて、大江自身が、近代日本をめぐる思想史的関心を持続させてきたからこそ、彼を軸にすることができるのだ。より具体的に述べると、「共同体」と「超越性」という二つの概念を意識しながら、大江の試みを戦後史のなかに置き直していく。その上で、大江健三郎を主人公にして戦後日本社会の諸問題や論点とその変化を記述したい。」(本書より)
目次
はじめに
大江健三郎の存在感/本書の問題意識と構成
序章 四国の森から東京へ――一九三五~一九五七年
家庭内教育と学校教育/本との出会い/モラルとしての憲法/最初の詩と松山での生活/東大時代の習作と「火山」/英詩からの影響/フランス文学との出会い
第一章 「政治の季節」のフロントランナー――一九五七~一九六三年
「奇妙な仕事」と学生運動/「他人の足」/同世代のスターへ/「芽むしり仔撃ち」と勇者の倫理/「見るまえに跳べ」の性のイメージ/〈われら〉の理想と現実/戦後世代のリアリティ/「怒れる若者たち」の戦略/性という方法/「安保改定阻止国民会議」・知識人・全学連主流派/安保闘争のさなかの訪中/ギリアク人・「混血児」・朝鮮人・山の民による複数性/「セブンティーン」の「純粋天皇」/田中良と核戦争の恐怖/性的人間
第二章 〈周縁〉の共同体、共同体の〈周縁〉――一九六三年~一九六七年
広島取材と長男の誕生/「正統的人間」と「被爆ナショナリズム」/原爆を小説に書けるのか/『日常生活の冒険』と被爆者/破局を生き延びる鳥/「戦後民主主義者」としての自覚/広島から沖縄へ、アメリカへ/核廃絶の意思/文学によるアジェンダセッティング/『万延元年のフットボール』の達成/歴史解釈をめぐる闘争とスーパーマーケット/暴力と民衆/江藤淳との論争/狂気と父=天皇/八・一五記念国民集会/戦後民主主義批判とベ平連/アジアに向かって閉ざされた「核基地」
第三章 抵抗する者たちの実存と構造――一九六八~一九七九年
核時代と森/「新しいスピリチュアリティ」/核時代の想像力/金嬉老事件とあさま山荘事件/『洪水はわが魂に及び』/終末という問題/祈る対象のない「祈り」/「新しいスピリチュアリティ」と実存主義の拮抗/『ピンチランナー調書』と七〇年代の核をめぐる意識/サブ・カルチャー的な「核時代のドンキホーテ」/日本社会の変化/哄笑の可能性/核時代の『秘密戦隊ゴレンジャー』/実存と構造/『同時代ゲーム』と遠心力の神話
第四章 「祈り」の共同体へ――一九八〇~一九九九年
「私生活」の焦点化と『雨の木(レイン・ツリー)』/ポスト・モダンの実践としての小説/八〇年代初頭の反核運動/ブレイクと『新しい人よ眼ざめよ』/「イーヨー」と木/連合赤軍事件の傷痕/プラザ合意と「日本人論」の隆盛/『人生の親戚』から『静かな生活』に至る女性の語り/「船」としての教会、「塔」としての恢復/「世界はヒロシマを覚えているか」と金芝河/ノーベル文学賞受賞・文化勲章辞退/バッシングと保守論壇の台頭/集大成『燃えあがる緑の木』/本拠地のないコミューン/個のなかの複数性/オウム真理教事件と『宙返り』
終章 死者たちとともに――二〇〇〇年以降
死者たちとともに/老人たちのテロ計画/東日本大震災/「最後の小説」としての『晩年様式集(イン・レイト・スタイル)』
おわりに
あとがき
参考文献
上記内容は本書刊行時のものです。