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ドラマと方言の新しい関係
『カーネーション』から『八重の桜』、そして『あまちゃん』へ
- 出版社在庫情報
- 在庫僅少
- 初版年月日
- 2014年8月
- 書店発売日
- 2014年8月9日
- 登録日
- 2014年7月18日
- 最終更新日
- 2023年8月3日
紹介
近年、方言がドラマにおいて果たす役割がきわめて重要になってきた。
例えば、『カーネーション』から『八重の桜』、そして『あまちゃん』…。
本書は、言語研究の立場から、ドラマの方言を捉え直します。
果たして、ドラマの方言が変わってきているのか。
それとも、方言がドラマを変えたのか。
実際にドラマのことば指導を行っている俳優や、NHKのドラマ制作班の方々を迎え、その謎を考え、「ドラマ方言」が誕生する過程に迫る。
2014年3月に行われた「ドラマと方言の新しい関係」シンポジウムの完全書籍化。
目次
はじめに―ドラマのなかの方言はおもしろい●金水 敏
本書を読む前に知っておきたい
『カーネーション』『八重の桜』『あまちゃん』のあらまし
Part.1
ドラマ方言の新時代
1 フィクションの言語と方言●金水 敏
「役割語」について―人物像と結びつく話し方
リアルな話し言葉
フィクションの話し言葉
ドラマのなかで方言をどこまで取り入れるか
2『あまちゃん』が開いた新しい扉 ―「方言コスプレドラマ」ができるまで―●田中ゆかり
NHKの大河ドラマと連続テレビ小説
ドラマ方言と方言指導
「なんちゃって」から「リアルさ追求」へ
『あまちゃん』が開いた新しい扉―四つの装置
まとめ―方言とヒロインのかたち
3方言とアイデンティティー ―ドラマ批評の立場から―●岡室美奈子
『八重の桜』『カーネーション』『あまちゃん』―三人のヒロインたち
新島八重―会津を離れても変わらない言葉
小原糸子―岸和田に留まり続ける言葉
天野アキ―人工的に身に付けた言葉
ヒロインと地元の関係を反映する方言
Part.2 公開インタビュー
方言と格闘するドラマ制作現場
●登壇者●
内藤愼介(NHKドラマ番組部エグゼクティブ・プロデューサー/『八重の桜』制作統括)
菓子 浩(NHKドラマ番組部チーフ・プロデューサー/『あまちゃん』制作統括)
林 英世(俳優/『カーネーション』岸和田ことば指導)
金水 敏
田中ゆかり
岡室美奈子
『八重の桜』―手探りで進めた方言
『あまちゃん』―キャラクターによってレベルを変えた訛り
『カーネーション』―岸和田の人に嫌われないように
時代劇のなかの方言の難しさ―ヴァーチャル×2
俳優の努力
現実とヴァーチャルの方言のズレ
長期放送のなかで成長する言葉
「じぇじぇじぇ」は本当にある言葉?
方言が混ざる現場
アキの「ズコリュー(自己流)東北弁」
脚本を第一に尊重
フロアとのやりとり
ドラマ作品関連文献
参考文献
シンポジウム開催記録
おわりに●田中ゆかり
前書きなど
はじめに―ドラマのなかの方言はおもしろい
◉金水 敏
ドラマは、きわめて総合的なエンターテインメントであり、芸術である。すなわち、シナリオ、演出、演技、カメラ、照明、音声・音響、音楽、美術といったさまざまな要素が絡み合い、調和することで優れた作品が生まれるのである。従って、ドラマを楽しんだり評価したりするにもいろいろな切り口がありうる。
私たちはそこに「方言」という切り口を付け加えてみたいと思い、シンポジウムを企画した。それは方言がドラマにおいて果たす役割が近年きわめて重要になってきていると考えるからである。たとえば、NHKの大河ドラマや連続テレビ小説―通称「朝ドラ」―では、次にどこの地方が舞台となるか、という話題が常に取りざたされ、町おこしの大きな起爆剤として期待されていることは周知のとおりである。その舞台となった場所の地域性をうまく表現するために、方言が重要な役割を果たすことは言うまでもない。また、印象的なドラマの登場人物のキャラクターを形成する要素として、方言が重要な役割を果たしていることも言を俟たないだろう。
しかし一方で、方言をドラマに取り込むことには問題も多い。一つには、方言は共通語に比べてわかりにくい、通じにくいという面を持っている。また、方言のクオリティを保つためには、ことば指導などそれなりのコストを投入する必要がある。
テレビの歴史の中では、ドラマに方言が本格的に取り込まれるようになって30年以上を経ているが、フィクションの歴史の中で見ると実はそれほど古いことではない、という事実もある。『あまちゃん』では方言の用い方として新しい扉が開かれたという見方もできる。方言とドラマの関係は、まさに今も変化しつづける途上にあるといってよいように思われる。
このシンポジウムでは、ドラマの中の方言についての研究者の成果をお示しするとともに、実際にドラマの作り手であるプロデューサーさんやことば指導の方に〝公開インタビュー〟のかたちでお話をうかがった。そのスタッフみなさんが方言を含めたドラマのクオリティをどのように高め、また維持・管理しているかといういわばドラマの〝裏側〟のお話もうかがうことができたのである。このたび、シンポジウムの記録を冊子のかたちでお届けできる機会を得たので、当日の模様をぜひ皆様にもお楽しみいただければ幸いです。
上記内容は本書刊行時のものです。