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越中万葉をたどる
60首で知る大伴家持がみた、越の国。
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2013年3月
- 書店発売日
- 2013年4月16日
- 登録日
- 2013年3月8日
- 最終更新日
- 2021年4月23日
紹介
越中ゆかりの万葉歌をたずねるすべての人へ。
「越中万葉」とは、『万葉集』編纂に大きく関わった大伴家持が、越中守に任ぜられ、いまの高岡市伏木にあった国庁に赴任し、越中国で詠んだ歌々を中心とした三三〇首を称するもの。本書はそのうちの60首を精選し、やさしく紹介する。
家持の万葉集収録歌数は全四七三首であり、万葉集の全歌数の一割強を占める。
『万葉集』とともにあった家持は、何を思い歌を詠んだのか。
ルビを多く振り、歌にまつわる風景写真を多数紹介し、立体的に歌の世界をイメージできるように試みました。
執筆は、坂本信幸、新谷秀夫、関 隆司、田中夏陽子、垣見修司、井ノ口史の各氏。
【天平十八年の越中国赴任時、家持は二十九歳。前年の天平十七年に従五位下に叙せられ、十八年三月に宮内少輔に任ぜられたばかりの新進気鋭の青年貴族であった。みずみずしい家持の感性が、初めての越中の風土に触発されて研ぎ澄まされ、都の政争などから離れたこころのゆとりにより、その歌境が豊かに花開いたのが越中万葉なのである。】……「はじめに」より
■大伴家持(おおとものやかもち)
養老2年(718)に生まれた奈良時代の貴族・歌人。大伴氏は大和朝廷以来の武門の家柄であり、祖父安麻呂・父旅人とともに律令制度下の高級官吏として活躍した。奈良時代後期の政争を生き延びた家持は、延暦年間には従三位中納言まで昇った。それとともに、『万葉集』の編纂に関わる人物として古代和歌の世界においても大きな足跡を残している。
天平18年(746)に越中守となった家持は、5年間の赴任期間中に、越中の自然と風土の素晴らしさを223首もの歌に残した。この家持の歌を中心とした337首を「越中万葉」と呼びならわしている。
目次
はじめに・坂本信幸[高岡市万葉歴史館長]
1 ● 秋の田の 穂向見がてり わが背子が ふさ手折り来る をみなへしかも
2 ● をみなへし 咲きたる野辺を 行きめぐり 君を思ひ出 たもとほり来ぬ
3 ● 妹が家に 伊久里の森の 藤の花 今来む春も 常かくし見む
4 ● 馬並めて いざうち行かな 渋谿の 清き磯廻に 寄する波見に
5 ● かからむと かねて知りせば 越の海の 荒磯の波も 見せましものを
6 ● 春の花 今は盛りに にほふらむ 折りてかざさむ 手力もがも
7 ● 玉くしげ 二上山に 鳴く鳥の 声の恋しき 時は来にけり
8 ● 布勢の海の 沖つ白波 あり通ひ いや年のはに 見つつしのはむ
9 ● 立山に 降り置ける雪を 常夏に 見れども飽かず 神からならし
10 ● 矢形尾の 鷹を手に据ゑ 三島野に 狩らぬ日まねく 月そ経にける
11 ● 東風 いたく吹くらし 奈呉の海人の 釣する小舟 漕ぎ隠る見ゆ
12 ● 雄神河 紅にほふ 娘子らし 葦附取ると 瀬に立たすらし
13 ● 鸕坂河 渡る瀬多み この我が馬の 足掻きの水に 衣濡れにけり
14 ● 婦負河の 速き瀬ごとに 篝さし 八十伴の男は 鵜川立ちけり
15 ● 立山の 雪し来らしも 延槻の 河の渡り瀬 鐙浸かすも
16 ● 之乎路から 直越え来れば 羽咋の海 朝なぎしたり 船梶もがも
17 ● とぶさ立て 船木伐るといふ 能登の島山 今日見れば 木立茂しも 幾代神びそ
18 ● 香島より 熊来をさして 漕ぐ舟の 梶取る間なく 都し思ほゆ
19 ● 妹に逢はず 久しくなりぬ 饒石河 清き瀬ごとに 水占延へてな
20 ● 珠洲の海に 朝開きして 漕ぎ来れば 長浜の浦に 月照りにけり
21 ● 中臣の 太祝詞言 言ひ祓へ 贖ふ命も 誰がために汝
22 ● 垂姫の 浦を漕ぎつつ 今日の日は 楽しく遊べ 言ひ継ぎにせむ
23 ● おろかにそ 我は思ひし 乎布の浦の 荒磯のめぐり 見れど飽かずけり
24 ● 多祜の崎 木の暗茂に ほととぎす 来鳴きとよめば はだ恋ひめやも
25 ● ほととぎす こよ鳴き渡れ 灯火を 月夜になそへ その影も見む
26 ● 三島野に 霞たなびき しかすがに 昨日も今日も 雪は降りつつ
27 ● 常人の 恋ふといふよりは あまりにて 我は死ぬべく なりにたらずや
28 ● 焼大刀を 礪波の関に 明日よりは 守部遣り添へ 君を留めむ
29 ● 英遠の浦に 寄する白波 いや増しに 立ちしき寄せ来 あゆをいたみかも
30 ● 天皇の 御代栄えむと 東なる 陸奥山に 金花咲く
31 ● 紅は うつろふものそ 橡の なれにし衣に なほ及かめやも
32 ● なでしこが 花見るごとに 娘子らが 笑まひのにほひ 思ほゆるかも
33 ● わが欲りし 雨は降り来ぬ かくしあらば 言挙げせずとも 稔は栄えむ
34 ● 雪の上に 照れる月夜に 梅の花 折りて贈らむ 愛しき子もがも
35 ● あしひきの 山の木末の ほよ取りて かざしつらくは 千歳寿くとそ
36 ● 夜夫奈美の 里に宿借り 春雨に 隠り障むと 妹に告げつや
37 ● 春の苑 紅にほふ 桃の花 下照る道に 出で立つ娘子
38 ● わが園の 李の花か 庭に散る はだれのいまだ 残りたるかも
39 ● 春まけて もの悲しきに さ夜ふけて 羽振き鳴く鴫 誰が田にか住む
40 ● もののふの 八十娘子らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子の花
41 ● 杉の野に さ躍る雉 いちしろく 音にしも泣かむ 隠り妻かも
42 ● 朝床に 聞けば遥けし 射水河 朝漕ぎしつつ 唱ふ船人
43 ● 今日のためと 思ひて標めし あしひきの 峰の上の桜 かく咲きにけり
44 ● 年のはに 鮎し走らば 辟田河 鵜八つ潜けて 川瀬尋ねむ
45 ● 磯の上の つままを見れば 根を延へて 年深からし 神さびにけり
46 ● 白玉の 見が欲し君を 見ず久に 鄙にし居れば 生けるともなし
47 ● 山吹の 花取り持ちて つれもなく 離れにし妹を しのひつるかも
48 ● 藤波の 影なす海の 底清み 沈く石をも 玉とそ我が見る
49 ● 多祜の浦の 底さへにほふ 藤波を かざして行かむ 見ぬ人のため
50 ● いささかに 思ひて来しを 多祜の浦に 咲ける藤見て 一夜経ぬべし
51 ● 藤波を 仮廬に造り 浦廻する 人とは知らに 海人とか見らむ
52 ● 家に行きて 何を語らむ あしひきの 山ほととぎす 一声も鳴け
53 ● わが背子が 捧げて持てる ほほがしは あたかも似るか 青き蓋
54 ● 皇祖の 遠御代御代は い敷き折り 酒飲みきといふそ このほほがしは
55 ● 渋谿を さしてわが行く この浜に 月夜飽きてむ 馬しまし止め
56 ● この雪の 消残る時に いざ行かな 山橘の 実の照るも見む
57 ● 新しき 年の初めは いや年に 雪踏み平し 常かくにもが
58 ● 石瀬野に 秋萩しのぎ 馬並めて 初鳥狩だに せずや別れむ
59 ● しなざかる 越に五年 住み住みて 立ち別れまく 惜しき宵かも
60 ● 大野路は 繁道茂路 茂くとも 君し通はば 道は広けむ
年表●大伴家持の歌と足跡でたどる 越中万葉略年譜
地図●家持越中巡行推定図
高岡市万葉歴史館の紹介
高岡市万葉歴史館周辺地図
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。