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藤原良経
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2012年1月
- 書店発売日
- 2012年1月13日
- 登録日
- 2011年12月13日
- 最終更新日
- 2012年4月13日
紹介
うたの森に、ようこそ。
柿本人麻呂から寺山修司、塚本邦雄まで、日本の代表的歌人の秀歌そのものを、堪能できるように編んだ、初めてのアンソロジー、全六〇冊。「コレクション日本歌人選」の、藤原良経です。
定家ら新風歌人のパトロンにして、後鳥羽院から絶賛された、夭折の天才歌人。
藤原良経 ふじわらよしつね
新古今時代を代表する、権門歌人。摂関流九条家の出身で、定家らが開拓した新風和歌のパトロン的位置にあって、みずからも「人住まぬ不破の関屋の板びさし荒れにし後はただ秋の風」に見られるような漢詩風の世界に、景情一致の明澄な歌を残した。叔父に『愚管抄』の著者天台座主の慈円がいる。学識豊かな摂関家の御曹司として太政大臣の地位に就いたが、三十八歳の若さで頓死した。『新古今和歌集』仮名序の筆者でもある。
目次
01 冴ゆる夜の真木の板屋の独り寝に心砕けと霰降るなり
02 問へかしな影を並べて昔見し人なき夜半の月はいかにと
03 ながめやる心の道もたどりけり千里の外の雪の曙
04 昔誰かかる桜の花を植ゑて吉野を春の山となしけむ
05 友と見る鳴尾に立てる一松夜な夜な我もさて過ぐる身ぞ
06 あはれなり雲に連なる波の上に知らぬ舟路を風にまかせて
07 見し夢の春の別れの悲しきは長き眠りの覚むと聞くまで
08 古郷は浅茅が末になり果てて月に残れる人の面影
09 夜の雨のうちも寝られぬ奥山に心しをるる猿の三叫び
10 空はなほ霞みもやらず風冴えて雪げに曇る春の夜の月
11 見ぬ世まで思ひ残さぬながめより昔に霞む春の曙
12 吉野山花のふる里跡絶えて空しき枝に春風ぞ吹く
13 いつも聞くものとや人の思ふらむ来ぬ夕暮の秋風の声
14 春霞かすみし空の名残さへ今日を限りの別れなりけり
15 難波津に咲くや昔の梅の花今も春なる浦風ぞ吹く
16 暮れかかるむなしき空の秋を見ておぼえずたまる袖の露かな
17 もろともに出でし空こそ忘られね都の山の有明の月
18 うちしめりあやめぞ薫る時鳥鳴くや五月の雨の夕暮
19 神風や御裳濯川のそのかみに契りしことの末をたがふな
20 昔聞く天の川原を尋ね来て跡なき水をながむばかりぞ
21 光そふ雲居の月を三笠山千世のはじめは今宵のみかは
22 み吉野は山も霞みて白雪のふりにし里に春は来にけり
23 秋風の紫くだくくさむらに時失へる袖ぞ露けき
24 長きよの末思ふこそ悲しけれ法の灯火消えがたのころ
25 春日山都の南しかぞ思ふ北の藤波春にあへとは
26 見し夢にやがてまぎれぬ我が身こそ弔はるる今日もまづ悲しけれ
27 明日よりは志賀の花園まれにだに誰かは問はむ春のふる里
28 秋近き気色の森に鳴く蝉の涙の露や下葉染むらむ
29 きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣片敷き独りかも寝む
30 言はざりき今来むまでの空の雲月日へだてて物思へとは
31 月見ばと言ひしばかりの人は来で真木の戸叩く庭の松風
32 深草の露のよすがを契りにて里をば離れず秋は来にけり
33 雲はみな払ひ果てたる秋風を松に残して月を見るかな
34 知るや君星を戴く年ふりて我が世の月も影闌けにけり
35 人住まぬ不破の関屋の板びさし荒れにし後はただ秋の風
36 里は荒れて月やあらぬと恨みてもたれ浅茅生に衣打つらむ
37 石上布留の神杉ふりぬれど色には出でず露も時雨も
38 行く末は空も一つの武蔵野に草の原より出づる月影
39 忘れなむなかなか待たじ待つとても出でにしあとは庭の蓬生
40 草深き夏野分け行くさ牡鹿の音をこそ立てね露ぞこぼるる
41 何ゆゑと思ひも入れぬ夕だに待ち出でしものを山の端の月
42 誘はれぬ人のためとや残りけむ明日より先の花の白雪
43 老いらくの今日来む道は残さなむ散りかひくもる花の白雪
44 天の戸をおしあけ方の雲間より神代の月の影ぞ残れる
歌人略伝
略年譜
解説「新古今和歌集を飾る美玉 藤原良経」(小山順子)
読書案内
【付録エッセイ】心底の秋(抄)(塚本邦雄)
上記内容は本書刊行時のものです。