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スレイヴ
パソコン音痴のカメイ課長が電脳作家になる物語
- 出版社在庫情報
- 在庫僅少
- 初版年月日
- 1998年8月
- 書店発売日
- 1998年8月21日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2023年8月25日
紹介
大阪の中小企業で、課長になったばかりの亀井遠士郎は郊外に家を新築したのだが、妻と娘の反対で、書斎を持つことを許されなかった。このため亀井は、部下の薦めで手のひらに乗る小さなパソコンを買った。それを書斎にしようというのだ。
亀井が書斎を持とうとしていたのは、マスコミで活躍している大学時代の同級生・ジェリィ平賀をギャフンと言わせる、本質的で普遍的な何かを書くためだった。
小さなマシンは亀井の生活に弾みを付けた。そいつを使って、亀井は電脳回廊を駆け回り、GNUやグーテンベルグ計画などを知り、だれもが情報の奴隷になっている現状に気付いていく。
息つく間もないストーリー。まるでRPGのキャラのように、亀井はコンピューターから経済、生物学、ジャーナリズム、文学、法律、歴史、哲学、思想という各種アイテムでパワーアップされてゆく。抱腹絶倒のコメディ、怒涛のカンフーアクション、疑惑と裏切りのサスペンス、耽美なロマンス、美しい家族愛…。あらゆる要素を凝縮した深い内容と、最後に待ちかまえる大ドンデン返し!『ソフィーの世界』より勉強になり、『百年の孤独』ほど難解でなく、『アルジャーノンに花束を』より涙を誘い、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』より切なく、『人間失格』より元気が出る。小説のスタイルを取りつつ、面白くてタメになる現代人必読の文明批評と言えよう。
目次
はじめにお読みください
ACT 1●とくにジャンルはない
ACT 2●マネドスで復習どす
ACT 3●陰謀
ACT 4●テキストファイルとマグレップ
ACT 5●妻はコピーが嫌い
ACT 6●陰謀ふたたび
ACT 7●電脳回廊は複写の渦
ACT 8●兵隊アリの独り言
ACT 9●モンド救出作戦
ACT10●機械の愛・情報の夢
あとがき
本当のあとがき
謝辞
本当の謝辞
『スレイヴ』をお買い上げのお客様へ
前書きなど
本書はわたしにとっていろんな意味で「挑戦」でした。
ひとつは、現行の著作権法の運用についての挑戦です。職業作家が命を削って書き下ろした名作も、役所の発表データをもとに居眠り半分に書かれた新聞記事も、著作物として同列に保護されているのはおかしい。大枚はたいて買ったソフトウエアのパッケージを破った途端に発生する使用許諾権契約なんて納得できない。一方、学者たちの発見や証明のたぐいは、なんら保護されない。そんな数々の疑問から、執筆は始まりました。
もうひとつは、とらえどころのない情報と人間への挑戦です。
かつて米西海岸でカウンターカルチャーを担った人たちは「情報は自由になりたがっている」と叫びました。情報を自由にするという考えは、わたしも賛同します。しかし、一歩引いて考えると、人間そのものも情報と言ってもいいのではないでしょうか。人間とはなにか。手足をもがれても、人間は人間です。手足どころか胴体を失っても、人間は人間です。人間を人間たらしめているのは脳です。そして脳というのは回路=ネットワークのようなもので、そこには膨大な情報が詰め込まれています。一人ひとりの脳に詰まった情報は、先人たちから営々と受け継がれた(つまりコピーされた)ものの集大成です。人間は機械のような肉体を持っていると同時に、数々の情報を相互コピーする存在ではないだろうか。これを書き進めながら、そんな確信めいたものを覚えました。
さらにいえば、本書のありようが、フリーテキストを本にしたということも挑戦です。
原稿がまだ電子テキストの状態にあるとき、その値段はゼロ円です。多くのフリーソフトと同じく、読者は非営利にかぎって無断複製や無断改変することができます。原典と著作者名等を明記すれば、他のメディアに転載することも可能です。ただし、電子テキストではなく紙に印刷された本として読みたいという人もいます。そんな人のために、ポット出版が原稿を本にしてくれました。ポット出版にしてみると、フリーソフトウエア集を本(CD-ROM)にしたようなものでしょう。
版元から一言
(たぶん)日本ではじめてのドネーションウェア(原稿料は寄付だけ)小説。著者はこのテキストを無料で公開しました。それをポット出版が編集・出版。定価に印税を含んでいないので、気に入ってくれた人は、直接、郵便振替などで寄付してください
関連リンク
上記内容は本書刊行時のものです。