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NPOマネジメントハンドブック
組織と事業の戦略的発想と手法
- 出版社在庫情報
- 品切れ・重版未定
- 初版年月日
- 2004年7月
- 書店発売日
- 2004年7月31日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
NPO法成立以降増え続ける団体数。本書はNPO運営に必須の要素である非営利法人制度,税制優遇措置,特殊なマネジメント,ボランティアとの関係,理事会の役割,プログラムプランニング,リスクマネジメントなどわかりにくいポイントを明快に提示する。
目次
はじめに
第1章 NPO概論
1 NPOとはなにか?
NGOやボランティア団体との相違/非営利の意味とパブリック・サポート
2 非営利法人制度とNPOの組織構造
日米の非営利法人制度/NPOの組織構造
3 法人制度と税制優遇措置
法人化と税制優遇の重要性/法人化の必要性とプロセス/税制優遇の必要性とプロセス
4 NPOセクターの現状
世界のNPOセクターの概要
アメリカのNPOセクターの状況/日本のNPOセクターの現状
第2章 NPOマネジメント概論
1 NPOマネジメントの歴史的背景
チャリティからビジネスへ/経営指導組織の登場と評価への関心の高まり/マネジメント意識が希薄な日本の非営利セクター
2 NPOマネジメントの特殊性
企業、行政と異なるマネジメント/ミッションに基づくマネジメント/NPOの支持基盤と受益者/収入源と組織の支配方式に基づく分類
3 NPOマネジメントの領域
膨大な管理運営業務/幅広い領域にわたるマネジメント/MSOが提供するコース例
第3章 ボランティア・マネジメント
1 NPOとボランティア
ボランティアとは?/ボランティアの三つの分類/ボランティア・マネジメントの必要性
2 ボランティア・マネジメントのトータル・プロセス
募集前のマネジメント
1―1 ミッションの策定/1―2 プログラム全体の構成/1―3 職務明細/1―4 募集関係の業務
募集開始から仕事開始まで
2―1 書類選考/2―2 面接、採用、配置/2―3 オリエンテーションとトレーニング
仕事開始以降のマネジメント
3―1 スケジュール管理/3―2 ボランティアへのお礼/3―3 ボランティアの評価/3―4 ボランティア・プログラムの評価
第4章 理事会のマネジメント
1 理事会とは?
理事会が求められる理由/理事会のマネジメントの必要性/理事会の構成と理事の募集
2 理事会の六つの役割
NPOの政策立案/プランニング/財務管理/ファンドレイジング/事務局長の採用と監督/コミュニティとの橋渡し
3 理事会と職員の関係
役割分担と管理・監督のシステムの重要性/事業計画と予算の作成と執行/採用、評価などの人事問題/ファンドレイジングにおける関係/プログラムにおける役割分担
第5章 ファンドレイジング
1 ファンドレイジングとは?
ファンドレイジングが必要な理由/収益事業とファンドレイジング/ファンドレイジングはアドボカシー
2 ファンドレイジングの基礎
ファンドレイジングの三つの要素/寄付者のキーワードはLAI/使途を特定した寄付依頼/効果的な寄付依頼の方法
3 ファンドレイジングの実際
寄付依頼に不可欠なケース・ステートメント/企画書の作成のポイント/ファンドレイジングとしてのイベント
4 戦略的なファンドレイジング
ドナーを育てる寄付のピラミッド/全体像を描くマスター・プロポーザル
第6章 プログラム・プランニングとNPOの予算
1 NPOの実体、プログラム
プログラムとプログラム・プランニング/プログラム・プランニングへの反発/プランニングの重要性と意義
2 プログラム・プランニングのプロセス
プランニングの四つのステップ
ステップ1 実施の準備/ステップ2 情報の収集/ステップ3 企画の立案/ステップ4 資金の確保
3 NPOと予算
予算の意味と留意点/予算の種類とポイント/人件費と間接費の算定
第7章 戦略計画
1 戦略計画の概要
将来を見据えるための戦略計画/戦略計画のメリット/計画推進に反発する理由/戦略計画に関わる人々
2 戦略計画のプロセス
戦略計画の四つのステップ
ステップ1 戦略計画の準備段階/ステップ2 NPOの内外の情報の収集
SWOT法の手法と意義
ステップ3 情報の分析と計画の作成/ステップ4 戦略計画の実施と評価
第8章 リスク・マネジメント
1 NPOのリスクとリスク・マネジメント
リスクの二つの側面/不確実性とリスク/リスク・マネジメントの対象とリスク
2 リスク・マネジメントのシステム
ステップ1 責任者と内容の決定/ステップ2 リスクの査定
頻度と規模から判断する準量的査定
ステップ3 リスクへの対応策の決定
リスクへの四つの基本的な対応策
ステップ4 対応策の実施/ステップ5 対応策のモニターと評価
主要参考資料
前書きなど
はじめに 一九九八年に特定非営利活動促進法、いわゆるNPO法が成立、施行されてから六年が経過した。いまでは、新聞やテレビで、このアルファベットの三文字を目にしない日はない。国政レベルの選挙や自民党の総裁選挙においても、NPOの役割についての議論が活発だ。大学では、NPOに関するクラスだけでなく、専攻も登場し始めて、人気を博している。一〇年余り前、アメリカのNPOシステムを紹介し始めたとき、日本に根づくのかという懐疑的な声が強かったことに比べると、隔世の感がある。 これまでに認証を受け、法人格を取得したNPOは、全国で一万五〇〇〇を超えている。急成長するNPOセクターというイメージが広がりつつあるものの、NPOの前途は必ずしも洋々としたものではない。著者が教鞭をとっている大阪市立大学大学院創造都市研究科都市共生社会研究分野が今年三月に実施した調査によると、大阪府と兵庫県のNPOのうち年間予算が三〇〇万円未満のところは四四%にのぼる。予算規模を問わずNPOの四分の三は、所轄庁に毎年提出する会計や事業の報告の作成の負荷が「非常に大きい」または「大きい」と答えている。 NPO法人は取得したけれど、これから運営をしていけるのかどうかわからない。そんな不安を抱えているNPOの関係者は、少なくないのではないだろうか。実際、NPOの現状に詳しい人々の間からは、二~三年後にはNPOが次々と潰れる事態が生じてもおかしくないという暗澹たることばも聞かれる。税制優遇措置の取得が事実上閉ざされていることもあり、企業や個人の寄付は微々たるものだ。行政の補助金や助成財団の助成金も、増大するNPOの資金需要に応えきれていない。 たしかに現実は厳しい。しかし、NPOは、元々、打ち出の小槌ではない。経営努力を怠れば倒産という厳然たる事実は、営利企業でもNPOでも変わらないのだ。では、どうしたらいいのか。マネジメント能力をつけることは、一つの回答である。とはいえ、NPOの歴史の短い日本では、NPOのマネジメントの手法が、関係者の間に十分浸透していない。大学で教えるNPOは、学術的なものが中心だ。中間支援組織は、さまざまなセミナーを提供している。しかし、その多くは、法人格の取得の方法や所轄庁への報告書類の作成に関連した会計などの管理業務の領域のものだ。 こうした問題、あるいは限界を少しでも改善したい、というのが本書の願いである。だが、日本で未発達なNPOマネジメントという領域である。このため、執筆にあたっては、アメリカで使われているNPOマネジメントのノウハウを参考にした。マニュアルやガイドブックではないが、プラクティカルな内容が中心のため、学術書的な体裁をとる必要はないと考え、出典などは記していない。基本的には、アメリカで出版されている膨大なNPOのマネジメントに関する出版物やインターネットからの情報をベースにしつつ、著者自身の二五年にわたるアメリカでのNPOにおける経験に基づいた考えを付加して、執筆した。 著者の経験において最も大きいものは、日本太平洋資料ネットワーク(JPRN)における活動である。JPRNは、著者が創立者のひとりとして、一九八五年にアメリカのカリフォルニアで設立したNPOだ。NPOマネジメントという点に限定すれば、一九九九年から三年間実施した「実践的NPOマネジメント米国研修」の企画、実施を通じて包括的な知識を収集、整理することができたと考えている。この研修プログラムの一環として、著者が編著者となり『非営利組織のマネジメント・マニュアル』を発行した。本書は、この出版物を全面的に加筆、修正、追加した内容になっている。 本書の特徴は、大別して四つある。第一は、本書はNPOのマネジメントについて紹介するためのものだが、NPOの基本的な内容全般について理解できるような構成になっていることだ。第1章のNPO概論が、これにあたる。すでにNPOの基礎は十分理解しているという読者は、この章を抜かして読んでいただいてもいいだろう。 第二は、単にマネジメントのノウハウを紹介するだけではなく、NPOのマネジメントが必要な理論的な根拠を明らかにするよう試みたことである。これは、第2章のNPOマネジメント概論のことだけではない。第3章以下で個別のテーマを検討する際にも、それぞれのテーマに応じて、マネジメントが必要な理由について説明している。NPOのマネジメントを単なるプラクティスではなく、理論的な枠組みから考えていくための試みであるとともに、その必要性を指摘しようとしたためだ。 第三に、NPOのマネジメントを戦略として意識していることがある。本書のサブタイトルを『組織と事業の戦略的発想と手法』としたことにも関連している。マネジメントということばは、対症療法、すなわちその時々の問題に対処するための個別のノウハウのようにみなされる傾向があることを否定できない。戦略ということばを用いることで、NPOのミッションの下で、物事の全体を把握し、先を見据えながら、ゴールやオブジェクティブを達成するために組織が意図的に用いる手段としてマネジメントを位置づけようとしたのである。場当たり的ではなく、論拠を踏まえ物事に対処していく姿勢、といってもいいだろう。 最後に、NPOのマネジメントのなかで、最も重要度が高いと考えられる六つのテーマについて具体的に説明したことである。第3章のボランティア・マネジメント、第4章の理事会のマネジメント、第5章のファンドレイジング、第6章のプログラム・プランニングとNPOの予算、第7章の戦略計画、第8章のリスク・マネジメントが、これだ。NPOのヒト、カネ、プランという三大要素のうち、特に重要なものである。なお、財務管理やITなどもNPOを運営していくうえでは不可欠のものだ。しかし、これらのテーマについては、他の書物やセミナーが少なくないこともあり、本書では触れなかった。 長年、NPOの経営を行い、NPOのマネジメントについて指導してくると、マネジメントとは、コロンブスの卵のようなものだと感じることがある。とてつもない秘密があるわけではない。いわれてみれば、「なんだ」というものが少なくないのである。だが、セクターとして、マネジメントの蓄積が乏しい日本のNPOの関係者の多くにとって、ここで紹介したNPOマネジメントの基礎的な知識や手法が新鮮に映るだろう。近い将来、それがごくありふれたものになってほしい。こういう願いを込めて執筆したことを、付け加えておきたい。(後略)
上記内容は本書刊行時のものです。