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結婚の新しいかたち
アメリカの夫婦57組の生活
原書: PEER MARRIAGE: HOW LOVE BETWEEN EQUALS REALLY WORKS
- 出版社在庫情報
- 在庫あり
- 初版年月日
- 2003年11月
- 書店発売日
- 2003年12月5日
- 登録日
- 2010年2月18日
- 最終更新日
- 2015年8月22日
紹介
友だち感覚なのに,情熱も続いている――そんな夫婦の仕事と家事,金銭管理,育児,セックスとは? そして結婚生活で得たもの,犠牲にしたものとは? 気鋭の社会学者によるインタビューから,新たな結婚のかたちを模索する夫婦たちの工夫と努力が浮かび上がる。
目次
謝辞
日本語版への序文
第一章 平等という困難
第二章 友情の固い絆
第三章 セックスの民主主義における情熱
第四章 稼ぎ手の役割を取り除く
第五章 共同の育児
第六章 ピア・マリッジの未来
注
訳者あとがき
前書きなど
本書はぺッパー・シュワルツ著Peer Marriage: How Love Between Equals Really Works (New York: Free Press,1994)の全訳である。シュワルツ博士は、一九七四年にエール大学にて社会学の博士号(Ph. D)を取得した。現在、ワシントン大学社会学部教授である。シュワルツ博士の履歴に関心のある方は彼女のウェッブ・ページ(faculty.washington.edu/couples)が参考になることであろう。 訳者はアメリカ留学当時、大学の学部・大学院でのコースを通じて本書に出会った。本書は、学部では主に人間発達専攻の三年生を対象とした家族発達のコースでの副読本として、また、大学院ではフェミニズム、女性学、社会学のセミナー形式のコースでのリーディングの一部として使用されていた。授業以外でも、家族・夫婦研究を行なう研究者たちの間で、本書が話題とされることがしばしばあった。 アメリカ社会での結婚事情は日本と異なる。アメリカの離婚率は、一九八八年以来横這い状態が続いているとはいえ、国際的にみても高い(ちなみに、二〇〇〇年にはアメリカでは一〇〇〇人中四・一人であるのに対し、日本では二・一人、イギリスは二・六人)。ここ十数年来アメリカで起こっている‘save the marriage’ムーブメントは、こうした離婚率の高さへの危惧を示しているといえる。加えて、未婚女性の出産の多さと一人親の家庭、同性愛者の結婚というような、「家族」「夫婦」と伝統的に考えられてきた形にそわない形態を受け入れるか否かの議論が頻繁に行なわれている。その一つの表れとしては、夫婦・家族療法家でソーシャル・ワーカーのダイアン・ソリー氏が、一九九六年に全米規模の組織であるCoalition for Marriage, Family, and Couples Educationを発足させ、年に一度「スマート・マリッジ/ハッピー・ファミリー」という会議(wwww.smartmarriages.com)を開いている。訳者はボランティアとして第一回と二回の会議に参加した。会議には全米から夫婦・家族に関連する研究者、セラピストやカウンセラー、牧師たちが集まり、講演、ワークショップが開かれていた。ワークショップの多くは一般の夫婦・家族の参加が可能で、たくさんの夫婦や婚約中のカップルたちが幅広いトピックに関するセッション(たとえば、コミュニケーションのためのスキル訓練、セクシャリティの理解、中高年夫婦向けの関係維持のためのヒントなど)に参加していた。 このような文化的社会的背景の違いをもつアメリカの夫婦に関する本書を、訳者らがあえて日本語に翻訳してみたいと考えた理由は主に四つあった。第一に、本書の中で夫婦たちが対等な関係を築き上げてゆくプロセスについてのシュワルツ博士のいくつかの考察・指摘が、これからの日本の結婚を理解する上で役立つのではないかと考えたからである。具体的には、まず、対等な二人の関係をフレンドシップという概念を用いて捉え直すことで、結婚に見られる夫と妻との間の勢力関係や上下関係を明らかにしている。夫婦における勢力関係の分析に、同性愛者のカップルやサドマゾヒズムにおける勢力関係を引き合いに出している点も非常にユニークである。同様にユニークな点は、共同的で対等な関係の維持のために、夫婦が社会的、とりわけ仕事での成功をもときに犠牲にすることが必要である、という発想を強調している点である。昨今、わが国でも「友だち感覚」の結婚生活を送るカップルの数に増加の兆しが見える。しかし、概してこうした夫婦は子どもをもたないことを前提としている夫婦であったり、夫も妻もともにキャリア志向のカップルであったりすることが多い。こうした夫婦の間では依然として仕事に高い優先順位が与えられ、仕事との折り合いをつけるべく、対等な夫婦生活に何らかの譲歩がなされているのではないだろうか。これとは異なり、本書の中で著者は、子どもをもちながらも、仕事で譲歩し、二人の対等な関係の維持を何よりも優先させる、といった発想の必要性を指摘している。 「ピア」のニュアンスとして、「人はピアに生まれるのではなく、ピアになってゆく」という著者の主張も一考に値するだろう。著者は、ピア・カップルには過去に離婚を経験した者が多いことを指摘している。伝統的な性役割に基づく最初の結婚での失敗や不満がもとで、離婚後に新たなパートナーとの関係を築く際には、関係維持の優先順位が何よりも高くなり、そのための努力を惜しまず、お互いを尊重し合う関係を強く望むようになる。こうした関係を築くためには困難も伴うが、それを克服し、ピアになることによって得ることのできる報酬をわかち合える夫婦だけがピア・マリッジを築くことができる。「友だち」「親密」「公平」といった諸概念、「仕事よりも夫婦関係」という発想の必要性などに関する日米間の相違も含めて、今後の日本における「ピア・カップル」に関する研究がまたれる。(後略)訳者あとがき
上記内容は本書刊行時のものです。