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しろさんのレモネードやさん

吉備人出版では、6月12日に、『しろさんのレモネードやさん

という絵本を発刊いたします。
本書は、小児がんだった榮島四郎さん(しろさん。小学5年生)の発案による絵本です。
しろさんたち絵本の制作メンバーはみな横浜市など関東圏に在住ですが、それがなぜ岡山の吉備人出版から発刊されることになったのか。
いろいろと紆余曲折がありました。 (さらに…)

倉敷市児島は国産ジーンズ発祥の地

 「国産ジーンズの発祥の地」は、岡山県倉敷市の児島(こじま)です-というお国自慢をさせてください。
ジーンズは、もともとアメリカ西部でゴールドラッシュ時代に、炭坑夫の丈夫なズボンとしてリーバイスらが考案したもの。そのアメリカ製の衣料を日本で国産化したのが、倉敷市児島にあった「マルオ被服」という、学生服を製造している会社でした。
 この会社の経営者が学生服からジーンズの製造に切り替えを図かり、国産ジーンズを完成させたのは、1960年ごろのこと。当時、学生服はビニロンという繊維でつくっていたのですが、より丈夫なテトロンという新繊維が登場。同社はこの新素材を入手できず、業態の転換を迫られていました。そこで社長は常務と専務に相談し、ジーンズの生産を決意したのです。 (さらに…)

書店大競争時代

 「書店の面積が岡山県は全国一」ということを、昨年、最初に知ったときには実感がありませんでした。岡山では去年の夏、東京に本社のあるS書店が岡山駅構内に、広島に本社のあるF書店と、CDレンタルと書店を兼ねて大手フランチャイズのT店2店が郊外にオープンしました。そしてこの3月、福山市に本社のあるK書店が岡山県最大の店舗面積700坪で郊外型店をオープン。さらに5月には、それを上回る900坪で神戸本社のK書店が岡山駅前にオープンします。地元新聞社も、「市場規模が縮小する中、売り上げ増を狙う県外勢が、豊富な品ぞろえの大型店を相次いで出店」と、「書店大競争時代」を書き立てました。
(さらに…)

アテネと感動

アテネオリンピックで日本人選手が活躍している。メダル獲得数も過去最多となりそうということだ。テレビや新聞で報じられる選手たちの姿に、思わず応援もするし感動もしてしまう。何度も繰り返される報道で、上位入賞して注目される選手の過去や周辺の裏話を知ると、勝利の瞬間の映像とともに目頭が熱くなりさえする。我々がそうした非日常の感動を求めているかのようにでもあるし、マスコミも意図して多くの紙面や時間を費やして報道している。それはそれで良いのだが、一方で原発の点検漏れ事故や、沖縄の大学への米軍ヘリ墜落など、大問題があまりにも小さく扱かわれていることに危惧を感じずにはいられない。

さて、岡山には「後楽園」という約300年前に造られた大名庭園がある。国指定の特別名勝で、金沢の兼六園、水戸の偕楽園と共に日本三名園の一つに数えられる。4年前に、小社から『岡山後楽園の四季』という写真集を発刊した。今でも少しずつではあるがコンスタントに売れている作品だ。
この写真集に掲載している写真を、撮影者の難波由城雄氏が横幅約2メートルに拡大した大きなパネルを約20点作成し、これまで岡山県内をはじめ、京都や名古屋、東京など小さな会場で写真展を開いてきた。そして、今年の初夏、海を越えてオランダのチルズブルクという町の市立図書館の一室で開催された。こうしたどの写真展も、写真集を見て感動した人たちのお世話で開催されてきた。

オランダの写真展も、1年ほど前に、後楽園の側にある土産物店でこの写真集を見たオランダ人が「ぜひ自国で後楽園の写真展」を、ということで開催になった。 20点の大型パネル写真を展示した会場には多くのオランダの人が来場し、日本から持って行った写真集も完売した。「日本の庭園美を初めて見て、感動されていました。涙を浮かべながら見ている人もいて、日本人と感性が違うのかもしれない」と、会場に行った難波氏が話してくれた。

日本固有の文化を紹介したもので、日本語の文字のない写真集ということで、海外に出ていったこの写真集。掲載している写真の作品力が国を越えて人を動かし、写真展の開催という形で広がっている。難波氏は、「あの写真を撮ったとのは、何かに動かされて撮らされていたのだと思う。今、撮れと言われても、もう撮れないよ」と言う。スポーツも文化も一途に頑張る人を誰もが応援し、感動が人を動かすのだと思う夏であった。

『岡山後楽園の四季』書籍の紹介

『岡山後楽園の四季』のWebサイト

地方で出版10年

 東京在住の方が岡山に立ち寄って話しをしている中で、「岡山はなんか違いますね。ゆったりするような、昔に返ったような感じがする。東京とは随分違うし、京都とも違う」と言っていたという話をまた聞いた。「田舎だね」という意味もあるのだろうが、最近は好意的に受け入れている。この10年間、地方で本をつくってきて思うのは、東京の人が感じるこの地域特性こそ掘り下げていくテーマであり、こんな面白いテーマはない、ということである。

 自然の環境や人、地理的条件、歴史的背景などが醸し出す、地域特有の雰囲気というのは、どこの地方にもある。日本全体を面白くするには、各地でこうした地域の特性を際立たせ、地域にいる人たちが主張していくことではないだろうか。その中で地域の出版社は、大きな役割を担えるのではないかと感じている。地域出版の編集活動は、特殊なテーマを扱うのなら別だが、東京で本をつくるよりも面白いことかもしれない。

 地方で本をつくるのは、例えば東京に比べて読者人口が少ない、著名な著者がいない、印刷や製本、デザインや流通など、ハンディキャップは意外と多い。しかし10年もやってくると、これらもやり方によって少しずつ克服できてくる。重要なのはテーマとその切り方である。幸い岡山には古代に吉備の国として栄えた歴史がある。そして桃やマスカットに代表される農産物が採れる温暖な気候や魚介類が採れる瀬戸内海のある自然があり、そこで育った人がいる。これで扱うべきテーマは十分である。

 地方出版では、古くから「地域を耕す」という言い方をよくしてきた。本にすべき内容を土を返すように掘り出し、文化の育つ土づくりをしていくということであろうか。それは地域の人と関わり合いながら、企画して編集し、誰でも気軽に読める本というパッケージにして後世に残すことである。読者が著者になり、著者が読者にもなる。地域の人とその地域の文化をネタに本をつくり、消費もその地域でする。地域でつくり地域の人が利用するわけだから、文化の地産地消ともいえる。もちろん関心がある人なら、それは全国どこからでも手軽に取り寄せることができる。地域出版は田舎でやる仕事としても面白い。

 ただ、地域出版でその経営をみてきて思うのは、本をつくるだけでは成り立たないということである。行政や企業の仕事も請け、パンフレットや記念誌、ホームページの編集も手がけ、10年目を迎えることができた。地域文化全般を扱い、本は表現手段の一つと考えることである。これからも地域の特性を生かし、さらに地域でしかできないことを追究していきたい。そして本にこだわりながら本だけにとらわれず、地域の人と文化を編集する会社を目指したい。  
 最近は次の10年を見据えて、出版企画の業務を兼ね、著者探しと読者の開拓という観点から、文化教室を手がけていこうと計画している。地域出版の模索は続く。

体験 ネットショッピング!

 ネットで書籍購入の経験はあるが、その他の商品を購入したことはまだなかった。
 先般、ヤマト宅急便が主催するオンラインショッピングについての講習会に出掛けた。講演の内容は、食料品など全国の特産品を扱い、会員数13万人を超え、40万アクセスを突破したというあるショッピングモールについての話であった。このショッピングモールは、物流をヤマト宅急便が引き受けている。
 講師はこのショッピングモールの管理運営をし、複数の企業のホームページのコンサルティングをしているという人物。「なるほど」と感心するような話も多かったので、紹介しよう。
 まず、アクセス数を上げるための、仕掛けを細部まで考えているという。例えば、インターネット利用者が何に関心を持つかということをマーケティングすると、「美人」とか「旅行」などに高い関心があるそうだ。そこで、トップページには女性の顔写真を配し、全国をエリアに分けてローカル性を演出する。
 クリックするボタンの形や色もデータに基づいている。正方形、長方形、丸、三角など形の違うボタンがある場合、人がどの形のボタンにクリックするかというと、丸だそうである。色は赤がよいということである。二重丸で赤のボタンなら、さらにクリック数はアップするという。万事がこのようにデータ分析され、ホームページのデザインや構成を決めているそうだ。
 阻害要因も分析され、「面倒だな」とか「ええ〜、送料がかかるのか」などのひっかかりがないようにすることも重要だそうだ。スムースなクリックの連続で、気が付けば購入申し込みを完了していた、ということにしたいらしい。ネット運営の裏話にしきりに感心したのであった。
 インターネットを利用する人口は年々増え、ネット利用の用途も電子メールや「情報収集・検索」などが利用率が高かったが、最近の特徴としてはネットショッピングなどの消費関連の利用率が伸びているそうだ。日本の電子商取引は現在約3兆円ほどで、3年後には5倍になると予測しているらしい。
 この講演会から帰って、そんなに言うのならということで、会社からそのショッピングモールのホームページにアクセスし、「なるほどお〜」と感心しながらクリックし、せっかくだからネットショッピングを経験してみようと、東北地方の海鮮珍味を注文した。
 受注後すぐに、業者から受注メールが返信されるということだったが、数日たっても何の返答もないので不安になり、問い合わせをしようと思っていたら、突然送られてきて、包みを開いてみると珍味のパッケージのフタがあいていた。「昼食のおかずにするつもりだったに、今日はご飯の用意をしてきていない」とか「生鮮食料品なのにフタがあいているとは」という声が社内からあがった。
 このケースはまれなことだったかもしれないが、「ネットネットと言っても結局は人間だよね」という話に落ち着いた。

地方の話題、市町村合併

 昨年の夏から何本かの企画と平行して、『岡山県の総合観光情報誌』を制作している。岡山県観光物産課が、これまで行政資料として2年に1回つくっていたものを、書店で販売して広く県民にも掲載情報を利用できるようにと提案し、コンペの末に業務委託で受けたものだ。A4判で400ページを超えるデータ集のため、昨年の秋から市町村の観光担当者とデータの確認などで資料のやりとりを繰り返している。
 岡山県内に市町村は78ある。これだけあると世帯数2000戸以下、人口5000人以下などという町村は少なくない。こうした小規模の町村の住民は、役場に勤めている人をほとんど知っている。役場のおじさん、おばさんである。
 78の市町村それぞれに役場があって役人がいる。中には事務処理が苦手な方もいらっしゃるのか、送付したはずのデータを「受け取っていない」とか、「無くした」とかという行政マンの方もおられる。小さな弊社の社内で、「この人は普段はどんな仕事ぶりだろう」と憤りながら言うと、その町村の出身のスタッフがいて、「ああ、その人の家は・・・・」などと、家庭の事情が情報収集できる。それで、「そうなの。その人もたいへんなんだ」という話になる。
 偶然とはいえ、地方を象徴するようなエピソードの1つであるかもしれない。県内エリアで「友達の友達」というケースはよくある。東京などでは考えられないでしょう。ちなみに岡山県の世帯数は、約70万戸、有権者数約150万人。
 これまで、岡山県内の市町村数78が多いか少ないかをあまり意識することはなかった。今回の「岡山県の総合観光情報誌」の仕事をしてからは、明らかに多いと思う。最近の行政改革に伴う市町村合併の流れにのってしまうが、行政も仕事の量と質を考え、それに即した人員数、効率を考えなければならならなのは当然である。
 全国的にも、今まさに市町村合併が推し進められている。現在、全国で3000を超える市町村を1000程度にしたいらしい。国と地方合わせて借金700 兆円という財政状況が、合併推進の理由のようだ。行財政の効率化をし、地方分権の受け皿づくりに対応していくという。
 合併自体に大きな無駄が生じるだろうし、国による「アメとムチ」をかざしての強引ともいえるやり口に批判の声もあるが、やらないわけにもいかないだろう。ただ、効率を追求しすぎると、行政サービスが低下するだろうしから、難しいところだ。
 岡山県内で、市町合併をめぐり住民投票をした町村がある。結果は7割反対と出た。田舎の村で、住民間に町村合併の論議を起こさないまま住民に直接聞けば、反対が多数を占めるというのは事前に予測できる。
 大事なのは、住民一人ひとりが、どんな行政を望んでいるか、地域の将来をどう描いていくかを考えることができる意識改革をすることだろう。そして、その頭で投票する政治家を選んでいかなければ、合併をしたところで大きな違いはないだろう。
 岡山県でも県内全域にわたって市町村合併が検討されている。どことどこがくっついて、どこが離れたなどと、男と女のような話が地方紙をにぎわせている。