匍匐前進10年目。ひとり出版社×2で事務所をシェア。
2022年夏・某日
「実は今の事務所を引っ越そうと思っているんですよ。“ひとり出版社”にはどうも広すぎて……」
地元の出版仲間である野村亮さんがある日、相談に来た。 (さらに…)

2022年夏・某日
「実は今の事務所を引っ越そうと思っているんですよ。“ひとり出版社”にはどうも広すぎて……」
地元の出版仲間である野村亮さんがある日、相談に来た。 (さらに…)
1月某日
昨年12月、パキスタン・アフガニスタンで、医療から農業用水路建設まで長年にわたって活動を続けてきた医師の中村哲さんがアフガニスタンで何者かに銃撃され、命を落とすという辛い出来事があった。 (さらに…)
「 藤村さん、“一箱古本市”って知ってる? そう、東京の谷根千界隈で始まった古本の路上フリーマーケット。ああいうお祭り的なイベントをね、福岡でもやれたらいいなって思うんですよ」
今から11年前、2006年の春先のことである。福岡・赤坂の個人書店「ブックスキューブリック」の店主・大井実氏が、やおら熱く語り始めた。場所はキューブリック近くの小さな立ち飲み屋。メンツは大井氏と私、それにネットで古書店を営む女性の3人だった。酔っ払うにはまだ早い時間だったように思う。 (さらに…)
湯の街として知られる大分県別府市在住の写真家・藤田洋三さんと出会ったのは、かれこれ20年ほど前のこと。昨秋、小社から刊行した写真集『世間』に至るまで、これまで計5作に関わらせてもらった。
この藤田氏、幼少の頃から大工や左官といった職人の仕事が大好きという少年で、その普請現場をひねもす眺めていたという。
「私が小学生のころ、身近に四人の『しゃかんや』さんが住んでいた。その一人は(略)左官の親方だったのだろう、いつも大勢の職人さんが出入りしていたその家には、海草糊を炊く匂いが立ちこめていた」(『鏝絵〈こてえ〉放浪記』石風社刊より)
ここでなぜ「海草糊」が登場するのか疑問に思う方もおられるだろうが、この「糊」は土壁に混ぜる必須の素材だったのである。
ある時、その左官さんが「赤土を盛り上げて水をはったプールを作り、長い間それを放置した」。何のためにこんなことをするのか、小学生の藤田氏には皆目見当がつかない。だが、その疑問は春になって解ける。プールの赤土は壁に塗られるための素材で、じっくり時間をかけて土を寝かせる工程だったのだ。多感な藤田少年は、こうした無名の職人たちの仕事に、まるでこの世の真実を垣間見たような感動を覚えたという。 (さらに…)