1年3カ月ぶりに新刊を出しました。
介護と学参の本を中心に14年間少しずつ刊行を続けてきましたが、ここ数年は認知症の母の介護で、ケアマネさん向け自社本の内容を実践する日々を過ごしています。できることを奪わない、否定しない、がんばりすぎない、著者が本の中で教えてくれたことが、母と私達家族を支えています。
ただ、まとまった時間や先々の約束ができないために仕事は進まず、『小学生からの漢詩教室3』
を昨年3月に出してから、時間ばかりがたってしまいました。
この『小学生からの漢詩教室』は、小学生にも難しくないように、なぞり書き、漢字の書き順のページまであります。そのために図書館にはほとんど入りませんでしたが、時折小学校からのご注文をいただくことはあり、本当に嬉しい気持ちになります。
長く読み継がれてきた漢詩には、絶句ならわずか20字の中に、正確に伝わることばが無駄なく入っています。漢詩そのままの漢字の並びだけでもみごとですが、日本語に書き下した文は古文ですので、現代文にはないリズムのよさがあり、小さいうちからそれらに触れれば、起承転結が整った美しい文章を、早いうちから身に付けることができます。
そこで、なんとか多くの子どもたちに届けたいと思ってきましたが、まだ親世代の購入がわずかです。親御さんが漢詩に興味がないことにはいつまでもこのままだと思い立ち、久しぶりに新刊『おとなのためのやさしい漢詩教室』
を出すことにしました。
著者は予備校の講師ですが、漢文と古文の両方を教えていますので、ことばの解説が丁寧で、詩の背景もわかりやすく書かれています。
以前、満州から引き揚げた方々の文集作りを手伝った際、皆さんが整った文章を書かれていることに驚いたことがあります。その方たちが育ってきた時代には、まだ漢文の影響が残っていました。漱石など、漢文の素養がある文学者が再び現れることはないかもしれませんが、江戸がそうだったように、漢詩を楽しむ普通の人々が増えれば、ことばの世界はもう少し豊かになるように思います。