こどもの専門家
10月半ばのある日。絵本作家のくすのきしげのり先生と福田岩緒先生にお会いしました。
個々に打ち合わせをする機会はあったものの、私を含めた3人で会うのは実に5年ぶりのこと。積もる話も多く、絵本について、子どもについて語りあう良い時間となりました。
7月に弊社より発売になった絵本『ぼくのにいちゃん、すごいやろ!』は、
くすのきしげのり先生がお話を、福田岩緒先生が絵を付けてくださった作品で、
『ともだちやもんな、ぼくら』(2011年)、『ええことするのは、ええもんや!』(2014年)に続くシリーズ3作目の絵本です。
夏休みを舞台に、小学校低学年の男の子、ヒデトシ、マナブ、ダイスケ、の仲良し3人組が、それぞれ主人公となり、出会った人や出来事から、「ともだち」や「ボランティア」、「正義」などについて考え、成長していく物語です。
くすのき先生ならではの視点で紡がれた物語は、なかなかスポットが当たらないような「子ども」や「気持ち」が多く描き出されています。読んでいるうちに心の底にある感情に気が付き、「そういう気持ち、確かに持ってた!」……と驚くことがたくさんあります。作家専業になられた数年前まで、長い間教員生活を送っていた、くすのき先生。きっとそれは日々子どもたちと近くで接し、愛情と客観性をもって見つめ続けられてきたことの証なのだと思います。
個人的な話で恐縮ですが、このシリーズを制作していた5年間の間に、私も結婚→妊娠→出産と、人生の山場を迎えました。シリーズと共に成長したわが子は、気が付けば4歳に。
絵本にまつわる仕事をしていたので、「子ども」というのは、よく知っていたつもりでいたのに、蓋を開けてみるとまるで予測がつかず、戸惑うことばかり。
そんな日々を救ってくれたのは、くすのき先生、福田先生からいただいた、たくさんのヒントです。小さな命を授かり初めてづくしの日々で、どれだけ助けられたかわかりません。ふとした時に、先生方の言葉が蘇ります。
■大人の都合や出来上がった価値観で判断しないこと。
■思う存分遊んでもらうこと。
■子育て四訓
(乳児期は肌身離さず。幼児期は手を離さず。少年期は目を離さず。青年期は心を離さず。)
こう書き連ねると何でもないようですが、例えば「大人の都合」の優先順位を下げるのなんて、簡単そうで実はとても難しいことです。具体的なエピソードと共にお話していただいた数々の逸話は、私の価値観をも変えてくれました。
絵本作家さんはこどもの専門家なのだなあとつくづく思います。
当たり前のこと、気が付かないこと、そしてその作家さんにしか見ることができない特別な世界があるのです。
その特別なものが、きっと読者の心を揺さぶるのだろうと思います。
冒頭に書いた先生方との会合のあと、
福田先生からメールをいただきました。
絵本のこと、シリーズ3作品のこと、そしてくすのき先生のユーモアについて触れられ、
その最後に、すっかりお母さんになりましたね、と。
「自信を持ってお子さんを愛してあげてください。」
と続いていました。
メールの前半を読んでクスクス笑っていましたが、最後の一文でじわりと視界がぼやけました。
最後に、福田先生からのメールにも書かれていた、くすのき先生のユーモアについて付け足そうと思います。
弊社(の私あて)にお電話をくださるときには、「ミス東京はいらっしゃいますか?」もしくは、「新垣結衣さんはおられますか?」などと言われ、電話にでたスタッフは苦笑。
(どう考えてもミス東京とは程遠く、もう笑うしかない…)
福田先生には、
「イカはフランス語で何というかわかりますか?」と尋ねました。
(福田先生)「うーん。なんて言うのでしょう?わかりませんね」
(くすのき先生)「イカノアシジュポーン」
(解説:イカの足は10本)
大爆笑の福田先生でした。
ふふふ。
お後がよろしいようで。