本の話をしましょう!
外を歩くのが暑い季節になってきましたね。本をたくさん持ち歩くのは、これからの季節、なかなかの試練です。それでもやはり、実物を見ていただきたいという思いから、自社の本を持って書店を回っています。といっても、キーステージ21の出版物はまだ3点。全部持って歩けます。暑い、重い、などと言っては、もっとたくさん持って歩いている方たちに叱られそうです。
ただ、昨年1月に出版した絵本をお見せしても、「ああ、これね」と言っていただけることは少なく…。知っていただけていないことに心の中で涙しつつ、お忙しい書店員さんに短い時間でいかに本の魅力をお伝えするか、毎回が「修業」です。我々出版社がつくった本は、書店に並んではじめて読者の目に入ります。ネットでも本が買える時代ですが、やっぱり店頭で手に取って見ていただきたい。そのためにはやはり、まず書店の方に知っていただかなくては。既刊本と同時に、出版社としての会社の名前を認識していただき、新しい本が出たときに「ああ、あの会社の本か」と思っていただけること(そしてもちろんご注文をいただけること!)。新刊も、知らない会社の本より、知っている会社の本の方が見ていただけるにちがいない(もちろん、魅力のある本をつくることが前提ですが)。そんなことを思って書店訪問をしていますが、それだけではなく、書店の店頭や担当の方との話は、私にとっては宝箱のようなもの。いま売れている本や新刊の情報に出会えたり、知らなかった本に出会ったり、ときには次の本のアイデアが浮かんだり。はじめて伺うときは緊張してうまく話せなかったり、「知らない」と言われるとへこんだりするのですが、それでも、担当の方をお訪ねするのはとても楽しいのです。結局のところ、本の世界で、本にかかわっている人たちと、本の話をするのが私は好きなのだなあと、書店訪問をするようになったこの半年、あらためて感じています。自社の本を、自社の名前を知っていただけていないなら、知っていただけるように動くのみ!です。
出版業界の人はもちろん、それ以外にも本の話をしたい人、実はたくさんいるのではないでしょうか。SNSで本のことを発信している人、本に関する情報にアンテナを張っている人、大勢いますよね。本に関係するイベントも全国的にいろいろ行われています。著者の講演会をはじめ、ビブリオバトルやブクブク交換、ブックトークや本の勉強会…。そしてそれらのイベントは、いつもかなり賑わっています。それなのに、こんなに「本離れ」がさけばれるのはなぜでしょう。電車の中でもスマホを見ている人が圧倒的多数。もっと、本を読んでいる姿が見えても良いのに!自分にできることからということで、私は電車の移動中はできるだけ本を読むようにしています(重いと言いながら、自社の本以外に読むための本も持ち歩くのでさらに重くなるのでした)。そして、カバーは基本的にかけません。こんな人間がこんな本を読んでいるよと、ことさらにアピールするわけではありませんが。近くの人が本を読んでいたら、何を読んでいるのか、こちらもさりげなくチェックしてみたり。カッコよく本を読んでいる人がいると、素敵だなあとつい見てしまいます。先日乗った電車では、結構な割合で本を読んでいる人がいて、本もまだまだいけるぞ!と周りを見回して一人でにんまりしてしまいました。本を読むのがカッコいい!というふうになってほしいものですね。そんなところから、本の楽しさを広めていきたいと思うのです。そして、身近な人たちとも本の話をしていきたい。本の話をできるイベントも、どんどん盛り上がってほしいものです。
余談ですが、昨年、知人に木のイヤリングをつくってもらいました。リグナムバイタという木で、ラテン語で「生命の木」という意味です。表皮に近い部分は灰白色、中心に近い部分は濃い褐色で、経年変化で濃緑色に変化するなど、さまざまな表情をもち、樹脂が万病に効くとして、大切に扱われてきた木です。「生命の木」を身につけることで、その「生命力」の影響を受けられるかなあと思っているのですが…。この木は、世界で最も硬く重い木で、その重さは、水に入れると浮かずに沈むほど。暑い地域の木であるにもかかわらず、生長が非常に遅く、樹高もあまり高くならず、あまり太くもならないのだそうです。ゆっくりゆっくり生長することで、ぎっしりと中身のつまった、重い木質になるのでしょう。そんなふうに、ゆっくり、じっくり、人の心に染み込んで育っていくような、そんな本をキーステージ21でもつくっていきたいと思っています。
今年は既刊本の重版を検討したり、新しい本の企画が動き出したり。いろいろと動きのある一年になりそうです。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
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