祇園祭
京都では、7月17日の祇園祭の山鉾巡行の頃に梅雨が明けると言っていた。さあ、それから土用の丑だ、梅を干さなくちゃと慌ただしい夏の行事が過ぎていく。蝉の声を聞きながら、汗水たらす。
ところが、今年は150年前の蛤御門の変の戦火で失われた大船鉾と後祭り巡行が復活。祇園祭を象徴する山鉾巡行は日程を二分した。そのせいでもないのだろうが、今年の夏は梅雨明けも遅かった。
しかし、7月17日を本番としていた山鉾巡行は、鉾町の人々に言わせると1966年に合同巡行と称して行った仮の措置。これでやっと元に戻ったと。合同巡行からしか知らない者にすれば、本旨が変ったのは今年からではないかとも思えるのだが。
そもそも祭り自体は以前から1ヶ月間続くものではあった。稚児詣から、神輿洗いと最後は八坂神社の茅の輪くぐりまで、つぶさに追えば一ヶ月間。鉾町の商人達は、7月の暑い時を、祭り行事で東奔西走する。呉服屋のだんさん達が、暑い盛りで着物が売れないときには、町内でご奉仕、仲間の輪をしっかり深めて、屏風祭りで互いの家を開放し、あっちの家、こっちの家で夕涼みをしながら噂話に興じる。これが商売の種になる。「京都モデル」と言われる由縁でもある。
先の巡行日の揺れも、結局は、それに関わる鉾町の人々がどう思うかということで変っていく。だんさんらの話し合いで変ることを決めれば、またそれでよろしおす。京都ブランド掲げた老舗も変化に対応できるからこそ生き残っていける。それもまた「京都モデル」ということらしい。
呉服屋といえば売れなくなったとはいえ、京都では着物は健在している。レンタル着物で町を練り歩く若者もごっそり増えた。呉服屋さんには決してありがたくないレンタル着物だが、これをきっかけに着物への窓口が開けばと願う。着物も人のつながりでできあがるもの。本もしかり。いろんな人の手が入るからこそ、愛すべき物となる。
さて、その書籍。汗の落ちるのを気にして本を読む夏読書の時間ですが、それにふさわしい書籍をと、弊社の書籍から選んでみました。
『流域―社会福祉と生活設計(戦後福祉状況をめぐる断章)』小倉襄二著、628頁である。
これは、1966年から2009年まで大阪四貫島セツルメントの機関紙に投稿されたコラムを集約したものだが、福祉を視点に据えて時代の様相を切り取り、40年の長きを俯瞰することができる。
祇園祭りのあれこれに思いを馳せながら、また1967年の朝日訴訟から現代への人権意識の変化や、そして今まさに激動している政治に、汗水たらして重い本を持ち、考えてみたい。
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