少子化・マタハラ論に足りない労働問題(雑誌掲載記事無料公開)
雑誌『POSSE』編集長の坂倉昇平です。
今年6月、東京都議会で女性の妊娠問題について発言する女性議員に向けられた「早く結婚した方がいい」などの野次が問題になりました。発言者の責任追及や再発防止が重要である一方で、こうした発言が生まれてしまう背景にある労働問題は、さほど注目されていません。
同じ6月には、安倍政権の「日本再興戦略」改訂版が、「日本が成長を持続」する鍵を握っているのは「労働力人口を維持」し「労働生産性を上げて」いくことだとして、「女性の活躍促進」を掲げました。ただし、その直後には「労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した」いわゆる「残業代ゼロ法」が提案されています。
そんなタイミングで、「少子化×マタハラ」を特集した雑誌『POSSE』23号を発売いたしました。
少子化について、内閣府は日本の労働力人口を6577万人(2010年)から3795万人(2060年)まで下がると試算しています。しかしその一方で、現在、女性労働者の25.6%がマタハラ(マタニティ・ハラスメント)の被害に遭い、全女性労働者のうち約6割が出産を機に離職しています。本誌では、マタハラ、少子化、女性労働力の不足の問題を、単なる差別的な意識や「新たな労働時間制度」などではなく、日本の労働システムの構造的な問題としてとらえ、現状認識やこれからの対策をリードする論考を掲載しています。
そのうちのひとつ、浅倉むつ子・早稲田大学大学院教授の記事「法律はマタハラの歯止めになるか?」ではマタハラについては日本の法律で、必ずしも「違法」とされてこなかったという根本的な問題に対して、日本の司法がマタハラを容認している構造や判例を説明しています。
こちらの記事を今回はウェブで無料公開いたしました。
http://www.npoposse.jp/magazine/blog/47.html
ぜひご覧ください。
ほかにも本特集ではマタハラの具体的事例や論考など多彩な記事を掲載しています。
社会的な関心が高揚し、安倍政権が掲げる女性労働問題を、一過性のブームに終わらせたり、逆行する政策に収斂させたりせず、マタハラや少子化問題に対して有効な世論や政策論をつくっていくための特集です。ぜひ本誌を多くの方にご覧いただければと思います。
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