版元ドットコム繁盛記
月曜の朝、予期せぬことがおきた。
始業前にも関わらず、電話機が3回線ともぜんぶ鳴っている。
メールを開くと、版元ドットコム経由で、お客さまからの注文が殺到している
(といっても、この時点ではまだ15件くらい)。
書店さんから送られてきたFAXが、ゴミの山みたいにうずたかく積みあがっている。
その前の週の土曜日(4月13日)に、日本テレビの「激闘カリスマ先生5人 ダメな子育てを叩き直せるのか!? スペシャル」という特別番組で紹介された『ベビーサイン』(径書房刊)が、激烈ともいえる反響を呼んでいたのだ。
「ベビーサイン」という言葉は、日本では、たぶん、初めて使われる言葉だ。本の詳しい内容は「版元ドットコム」のサイトで検索していただきたいが、ひとことで言うと、親が、赤ちゃんのサイン(=しぐさ、くせ)をあるメッセージとして意識的に受けとれば、まだ話せない赤ちゃんと会話をすることができて、子育てにも良い効果をもたらす、というような本だ。
子育て本がハヤる今の時代、いい加減なものも多いだろうが、これはじっくりと丁寧につくった本で、赤ちゃんを前にして悩むお母さん方にはかならず役にたつ本だと自負している。
とはいえ、今回これほどの反響があるとは、もちろん思いもしなかった。テレビの影響力というのを、実感した(ちなみにそのテレビ番組の視聴率は17%。これは特別番組としては高視聴率だったようだ)。
もうひとつ実感したのが、いわゆる口コミの大きな力だ。
今回、インターネットの掲示板で、『ベビーサイン』を買うには「版元ドットコム」が便利(送料無料!)だという情報を見た多くのお母さん方が、実際に本を買ってくださった。
さて、仕事にイレギュラーはつきものかもしれないが、一冊の本がこれほどのご好評をいただくことは、自分にとっては一生に一度あるかないかのことかもしれない。10日間で4回も重刷するなんてことは、もう二度とないと考えたほうがいいだろう。
テレビ放映のあった二日後の月曜日、それまでの在庫はその一日ですべて無くなった。
いそいで重刷することになった。業者さんが至急で対応してくださり、重刷分は約一週間後に取次(問屋)さんに搬入されることになった。しかし、落ち着く間もなく、まだ出来ていないその重刷分が保留(予約)でいっぱいになってしまった。
そして、それと同じことを3度くり返した。刷っても刷っても、在庫がない。
書店さんからの怒濤のような電話注文は一週間つづいた。
3回線ある電話は朝10時から夕方6時くらいまで、まったく鳴りやまない。
電話応対のために、声がかれてしまった。
私「あの、もう在庫なくなってしまったので、重刷ができるまでお待ちいただけますか?」
書店さん「すごく売れてるよ、これ。倉庫に50冊くらい残ってるんじゃないの?宅急便で送ってよ」
私「いや、本当に全然ないんです。すみません……」
書店さん「10冊でいいからさぁ、送ってよ」
私「ほんとうに、ないんです!」
テレビを見た、というお母さんから直接お電話をいただいたこともけっこうあった。これには対処しきれず、「版元ドットコムで買ってください」などとたいへん失礼な対応をしてしまったこともあった。お詫びしなくてはならない。
版元ドットコムでは、4月15日から30日までで、計299冊の売上げ。
これは、小さな我が社にとって、かなりデカイ数字だ。
ありがたいことである。
4月後半はあっという間に過ぎた。
その間、版元ドットコム事務局の日高さんと岡田さんにおかけしたご苦労はひととおりのものではない。おふたりはご自身の抱える日々の仕事をストップしてまで、処務に専心してくださった。記して、感謝したい。
ありがとうございました。こんどゆっくり飲みましょう。
時間が経過していれば、ちゃんと事後報告もできただろうが、未だ熱はさめないような状況で、しどろもどろの報告になってしまった。
落ち着いたら、またどこかで。
(現在、社員4人のうち、ひとりは痛風になり、歩行困難。
ひとりは四十肩になり、腕が上がらない。残りの若い二人は、まあ元気です。)
最後に、本を買ってくれたお客さま、どうもありがとうございました。
実際に『ベビーサイン』を試された読者の方のご感想をお待ちしています。