「暴対法」は市民を守れるか
暴力団対策法、いわゆる暴対法の「改定」により今年1月からスタートした代理訴訟制度で、次々と各都道府県の「暴力追放運動推進センター」が、住民に代わって暴力団の組事務所の使用差し止めを求める訴訟を起こすことができる「適格団体」に国家公安委員会から認定されている。
これは、今までは暴力団の組事務所に対して「出て行ってほしい」と訴訟する際に、住民が矢面に立たなければならず、危険極まりない状態だったのだが、訴訟の際、センターが原告として最前線に立つ ことで、暴力団の嫌がらせを恐れる住民の心理的、金銭的負担を軽減する狙いがあるという。
各都道府県の暴追センターによる代理訴訟制度は、かねてから慎重に検討されていた。そうはいっても、公益財団法人である暴対センターは、企業からの寄付金で運営しており、訴訟費用を誰が負担するのかという 財政的な弱点と、弁護人候補が果たして現れるのか、という心配があった。ついにこの2点がクリアとなり、住民から制度利用の申し出があった際、暴対センターは各都道府県の弁護士会民事介入暴力対策委員の弁護士、県警と組事務所の使用差し止め訴訟が妥当かどうかを検討。周辺住民の同意も得て裁判に踏み切る予定だ。
それにしても、原告として、住民の代表の名前は本当に出ないのだろうか。いろいろ心配な点はあるが、推移を見守りたい。
小社刊、『「改定」暴対法―変貌するヤクザと警察』(田口宏睦著、岡田基志監修)は、暴力団、警察両面からの視点で、「暴排」の機運が高まる今という時代、どのように「暴力団を捉えるか」考えるさまざまなヒントを徹底した取材でちりばめてある。ぜひ一読願いたい。