専門書発行出版社の本づくり
版元日誌も2度めの投稿です。本づく り、それに販促も含め、各版元も工夫をされていると思います。版元の数だけ企画編集販促あるといわれる業界にあって、今回はわが社の本づくりの苦悩と販促への取り組みの一端を記してみようと思います。
小社の主な発行物は大学テキストを主体とした専門書、学術書です。 「知識を伝え思考を刺激する一冊を」心をこめて作り、それを読者に届けたい。大学テキストは、教える先生の主張する説によって内容が異なり、 そこに類書のないものができあがってきたりもします。どういった内容を盛り込み読者に届けるか、読ませるための工夫はどうすればよいかなど、 著者と相談しながら企画を立てていくのは、非常に楽しいひとときです。
しかし、当然のことながら利益をあげなければ会社として成り立って いきません。一般書と異なる大学テキストの特徴は、執筆者が自ら教える講義内容に即したものを書き、それをテキストの形にして採用する。つま り、執筆者の下で学ぶ学生さん方が最大の読者になるということです。企画を立てる時も、テキスト採用を前提でということになります。
以前の大学では大教室で教授お一人で何百人、時には千を超える学生 さん方を教えるという講義が主流でしたが、少人数でよりきめ細かい講義が求められ、大学改革が進むなか、そうした講義は少なくなっています。 それは、そのテキストを必要とする学生さんの人数も減るということです。そうすると、共著でご執筆いただいて著者複数名に採用していただくな ど、版元としてもテキストを必要な人数を確保するためにちょっとした工夫をしていかねばなりません。
ここで、複数名で書かれたもので注意していかなければならないの が、全体としていかにまとまりのある内容にしていくかということ。ある先生が書かれたA章ではA’という主張がされていた のに、別の章では全く反対の主張がなされていた、また、同じ図表が複数章にあるなどということを回避し、内容レベルも共通ラインに合わせていくという作業が必要です。ここは編者もしくはまとめ役をやって下さる方と相談しながらいかに折り合っていくか、編集者の腕の見せどころです。
少々赤裸々な事情を記しましたが、同様の出版物を発行されている版元には似たり寄ったりの事情があると思います。
しかし、大学カリキュラム改革による講義の多様化、少人数制化の波に加え、昨今の本離れの傾向は従来のそんな対応では追いついていかない状況にあるように感じています。やはり講義テキストとしてだけではな く、一般読者の知的ニーズに合った内容のものを編み上げ、書店でも展開していきたいところです。
小社では委託配本を行っておりませんし、上のような販売形式をとる ことが多いため書店営業の担当を置いていません。この状況でどのように書店にアピールしていくか。FAX送信、DM送付もこれまで片手間にまちまちでしたが、この度、継続的に取り組む体制づくりを進めています。
この版元日誌でも紹介された「注文出荷制」DMにも9月から参加させていただくことにいたしました。書店への販促についてはまだまだアイディアを加えていかなければなりませんが、より 多くの読者に手がけた本を届ける努力をこれまで以上にしていきたいと考えています。