あたらしい仕事、ふたつ。
新年度がはじまりはや2ヵ月。新人&転職組の方はヤル気に溢れ、キャリア10年いまだ社内で最若手の同業他社諸氏にとっては、爽やかな陽気が勤労意欲をそぐ季節になりました。
さて、つい先日まで日本で2番目に小さな(常勤2名なので。最近1名増員)版元だったトランスビューも創業から干支がひとまわり。短期で重版がつづく本がある時期は疾走感がありますが、都合よく企画と季節が出会う訳ではありません。そんな時はマンネリ気分がいっそう能率と楽しさを奪ってしまいます。
しかしそんな時こそ仕込み時、コストに見合う効果があり、継続できる、あたらしい仕事を考えたいと思っています。特に「継続できる」ことは大切。ロングセラーの既刊書リストのように売上げの基盤になります。毎年なんらか積みかさねて、将来の蓄えにしたいと願っています。
そんなあたらしい仕事。
今年のその1。
書店様への共同DM「《注文出荷制》今月でた本・来月でる本」をはじめました。
語研の高島利行さんがセンデン(版元日誌 2013-1-30「その手があったか!」)してくださっているので詳細は省きますが、見計らい配本を行わない版元(2013年5月現在9社、スタート時から2社増えています)からの郵送によるご案内です。毎月末に約1000通を送付し、これまでにご注文をくださった書店様は200店ほど。徐々に情報ツールとして認知していただけているようです。
・「ありがたい情報源です。参加社が沢山ふえると、こちらも選択の幅が広がります」
・「大学内の売店です。先生方や図書館への案内にチラシを活用してます。人文・社会学系の案内を特に希望します」
・「石橋毅史さんの、本屋な日々がおもしろい」」(→通信販売もしています。)
DMに同封したアンケートでもこんなメッセージを頂戴しました。
“本屋さんが注文をしてはじめて出荷される、選ばれたその1冊を大切に届けたい”そんな版元のご参加を募っています。
今年のその2。
ころから の「取引代行」をはじめました。
「ころから」は、2013年3月に創業出版として、米屋こうじ『I LOVE TRAIN アジア・レイル・ライフ』を世に出したあたらしい版元です。
これまでもトランスビューでは、シグロのドキュメンタリーDVD、バンダイナムコゲームスの絵本、
長風舎の書籍の発売や、バナナブックスの運営参画に、小売店との直接取引である“トランスビュー方式”で係わってきました。これらは出版流通とは無縁の企業でしたが、「ころから」は編集と営業・宣伝といった版元の機能を備えています。交渉をかさねれば取次口座の開設も可能だったであろう「ころから」代表の木瀬貴吉さんがトランスビューの流通に託したのは、たんにブツとしての本だけではないのかも知れません。
僕としては、小売店の粗利改善は理念のひとつなので取扱い総量の増加は大歓迎。共通の流通を持ちつつ独立性を保持することは、多様な書籍を通じていろいろなタイプの小売店と関係を持つことが出来る。これもおおきなプラス要素です。
2013年は序盤にして大きく飛躍(するかは判らないが、とにかく意義があると思う)しそう(させたい)な、あたらしい仕事がふたつ。
ふと向暑の空を見あげれば、どちらも1社では1人では成しえないことに気がついた。「取引代行」は“トランスビュー方式”を選択した版元がなければ成り立たないし、共同DM「《注文出荷制》今月でた本・来月でる本」は、アンケートのご回答にあるように幅広い注文を効率的に出来るからこそ意味がある。そもそも《注文出荷制》のネーミングだってスタイルノートの池田茂樹さんのアイディアだ(僕が出した当初案はボツ)。零細企業にしか勤めたことがない僕にはこうした協同が貴重な経験でありまた楽しい。
今回のふたつの仕事は、版元ドットコムと直接関係はないけれど、その活動と人のつながりは大変いかされた。日々の仕事に忙殺されがちな中小零細版元や社内プレゼンにウンザリなご同輩のみなさん、版元ドットコムの定例会にぜひ一度いらしてみてください。延々つづく会議のあとに楽しいお酒とスピード感あるアイディアの展開がまっています。
ところで共同DM「《注文出荷制》今月でた本・来月でる本」に参加する版元の注文を受け付けるフリーダイヤルFAXは、受信した注文書をpdfファイルに変換して各社の担当者へe-mailで転送する仕組みになっています。メールアドレスに届いた段階では、それが自社宛の注文書なのか否か判りません。
添付ファイルをクリックして表示にかかる数秒間……の、ちょっとしたドキドキ。結果、他社本であっても嬉しいから不思議です。
トランスビューのTwitterアカウント @transview