書評に載った!…そのあとが問題なんです
青弓社の矢野未知生と申します。当社の書籍はときたま新聞の書評で取り上げてもらえることがあります。著者と担当編集者は「書評の書き手は誰か」「どういう内容か」「評価してもらえているか」を気にするわけですが、それはひとまず措いて、販売の悩み(?)をご紹介します。
新聞に書評が載るのは毎週日曜日です。載ること/載ったことがわかったらすぐに書店や取次倉庫(商品センター)に営業します。当社は、受注して翌営業日に取次に搬入する体制なのですが、大手書店以外は月曜日に出荷しても水曜日や木曜日に書店店頭に届くのが最速で、書評を見た読者が翌月曜日にいっても書籍がないという売り逃し(=読者がほしいときに当該書籍を買えない)が起きているのではないかといつも気になります。
たとえば、当該書籍が刊行直後のものであれば、書店店頭に在庫があることがある程度わかっているのでPOPを送ったり持っていったりする対応で最低限いいと思っています。
他方、刊行後2、3カ月たっている書籍だと返品されて棚にないこともあります。書店が書評に載った書籍を注文しようとするときに、取次の倉庫に在庫があれば時間をかけずに納品できます。ただ、ない場合は書店から注文が自社に届きます。「でも(書店から直接受注しても)上記のように日数がかかる」→「けど置いてもらいたいので書店営業はぜひしたい」→「けど納品まで時間がかかったら返品を増やすだけになり書店も自社にもいいことがない」という悩みがつきないわけです。
具体例を紹介します。当社は昨年11月に『路地裏が文化を生む!』を刊行して、12月に共同通信社の配信記事で書評が複数の県紙に載りました。その後、年明け1月に「朝日新聞」の書評で取り上げられました。
配信記事の段階で書店に営業ファクスを送ったのですが、あまりいい反応はありませんでした。書籍の内容もあるでしょうし、どの県紙にいつ載ったのかを知る手段が意外に少なく具体的な県紙名を挙げにくかったことも原因の1つだったと思います。
「朝日」書評に載ったあと、店頭在庫は大手書店以外はあまり多くなかったので注文が相次ぎました。うれしい悲鳴ですが、後手に回った感がいなめず、その後も営業はしましたが、書評効果は時間とともに薄れていきました。もちろん、店頭での露出が増えた分の売り上げはありましたし、ウェブ書店でもある程度売り伸ばすことができたように思います。ただ、「惜しかった」「もったいなかった」という印象で、営業をより徹底できていれば、納品までのスピードが改善すれば、と悔しい思いもしました。
書評に載ることは著者も出版社もうれしいことです。ただ、載るまでも大切ですが、出版社としては載ったあともかなり重要で、「載ってよかったよかった」で終わってしまうのはいちばん避けなければなりません。とはいえ、すべてを一発で解決する決定打はないので、そのつど地道に対応を積み重ねるのが最善かなとも思っています。
追記その1;「朝日」「読売」は日曜日の書評予定一覧をウェブサイトに掲載しているので、事前に営業できる点でとても助かっています。
追記その2;納品スピードを解消するのに、出版社の営業が書店に書籍を直接納品する(直送・直納)という手段があります。とはいえ、これも人手や送料のことを考えるとすべての書店におこなうことはできません。
追記その3;書評後の対応ではなく、事前準備としては、日々の書店営業の際に、載りそう/紹介されそうな(そう信じたい)書籍は丁寧に営業して、できるだけ長く店頭に置いてもらうようはたらきかけることも売り逃しの解決策の1つだと思います。当社の営業は、首都圏の書店を中心に訪問していますが、「もう少し置いてください」とお願いしたり提案したりもしています。こういったことも地道な積み重ねの1つなのかもしれません(そう信じたいです)。
青弓社のTwitterアカウント @seikyusha