「図書館のバケモン」と考える、その役割と可能性
6月4日開催の版元ドットコム会員集会では、福島県から南相馬市立中央図書館の早川光彦・副館長をお招きして、「図書館の役割と可能性」をお話いただくことになりました。
「早川さん」と聞いてピンと来る方は、図書館業界にお詳しい方だと思いますが、石橋毅史さんの『「本屋」は死なない』で元さわや書店の伊藤清彦さんが「図書館にもバケモンはいる」と形容された人物と言えば、「あの人か!」と思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
岩手県内の図書館に勤めていた早川さんは、2004年に原町市(現南相馬市)に“ヘッドハンティング”され、新中央図書館の立ち上げに奔走され ました。しかし、開館から1年3カ月後に震災と原発災害に見舞われ、半年間の休館を余議なくされたといいます。
さらには、いまなお多くの市民が避難生活を続けている現状ですが、今回は「震災に触れないわけにいかないと思いますが、出版社にとってじつはよく分かっていない図書館の現状をメインにお話しいただければ」とご依頼しましたところ快諾いただけたのです。
石橋さんが「まるで本屋のようだ」と伝える中央図書館について、早川さんは「セレクトにこだわるのは私たちの主張ではない、南相馬市民が必要としている本はなにかと考えた結果なんです」と話されたそうです。
そんな南相馬市立中央図書館と版元ドットコムのつながりができたのは、杉並区内で昨年秋に開催された「本の楽市@高円寺フェス2011」でした。
「本の楽市」に出展した版元ドットコム有志で、杉並区が災害時相互援助協定を結んでいる南相馬市に対する支援はできないだろうかと杉並区に相談しましたところ、出展された本から同区の図書館員が選書して、それを南相馬に寄贈してはどうかということになったのです。
そして、今年の初めに52冊を南相馬の中央図書館へお贈りしたのですが、その際の窓口になってくださったのが早川さんだったという縁なのです。
「本の楽市」出展社が寄贈した本のコーナー(写真:石橋毅史)
(※写真をクリックしてもう少し大きい写真をご覧になれます)
最近の公共図書館は、予算も人員も縮減され、さらには貸し出し数(書店でいう「回転率」)を増やさなければならないという事情から、選書から装備まで業者に「お任せ」になることが多いと聞きます。
また、先日は佐賀県武雄市でツタヤを運営するCCCに図書館事業を委託し、雑誌については貸し出しを行わずに図書館内で販売するというニュースもありました。
このような画一化や商業主義化が懸念される一方で、わたしたち版元は「いかにして図書館に本を売るか」という視点が強くあるのも事実です。
そこには、多くのスレ違いもあるのではないかと思うのですが、まずは図書館の「役割」をお聞きし、そして図書館の「可能性」を一緒に考えるきっかけになればと思います。
なお、講演の聞き手役を、石橋さんにお願い申しあげましたところ、「喜んで」とご快諾いただけました。
その言葉が決して社交辞令ではないことは、石橋さんが翌週には南相馬へ向かって、お二人で「版元の人たちに何を話そうか」と相談くださったということからも明らかです。
図書館に本を売りたいわたしたちと、より魅力的な図書館を利用したいわたしたち。
どちらのわたしたちにとっても、興味深い時間になることと思います。
会員以外の方もご参加いただけますので、どうぞお越しください。