出版営業が楽しくて。
皆さま、はじめまして。
まむかいブックスギャラリーの木村由加子と申します。
当社は、2008年8月に版元ドットコムに入会しました。
版元日誌へは初めての投稿となりますので、今回は当社の紹介をかねて、近況をお伝えしたいと思います。
当社は社内スタッフ2名と、プロジェクトごとにご協力いただいている、編集、デザイン、web・システム等の専門スタッフ数名で、年6冊の一般書刊行を目標に、活動している版元です。
1冊目を刊行した直後に、版元ドットコムに入会させていただいたのですが、その1か月後に、かのリーマンショックが…。
当時の状況は、業種業態を問わず、どこもシビアーだったと思います。船出したばかりの当社にとっては、ゴングが鳴った直後にいきなり先制パンチを受けた格好で、予定していた計画を大幅に見直すなどして、スタートを切ることになりました。
そして今回、ようやく誕生した当社2冊目の書籍が、
『Gift with BIKE 自転車が私にくれた贈りもの』(土屋朋子 著)
です。
この本は、自転車ジャーナリストであり、全国各地で自転車レースやツーリングを企画している土屋朋子さんが、自転車乗りならではの人生の楽しみ方を、若い世代に向けて書き下ろした1冊です。
(チャリ好きには『わかる~』という熱いフレーズがいっぱいです。エコアウトドア―な方はぜひご一読ください)
この制作にあたり、これまで編集畑できた私は、営業を担当することにしました。
自らが代表をつとめる版元だから否応ない側面もありますが、職業人生を60年と捉えたときに(ちょっと欲張りかな)、前半はものづくり、後半はプロモーション&販売というのも、悪くはないなあと考えたからです。
著者との顔合わせが終わり、制作がスタートすると、私は読者対象となる人々へのヒアリングから始めました。
「自転車」に抱いているイメージは? 自転車に乗っていてどんなことが楽しい? 自転車を広めるには、どんなことを伝えたらいいんだろう?etc……。
そして、そこで得た意見の数々は、プロモーションのヒントにさせていただくと同時に、著者やエディター、デザイナーとも共有しました。
すると面白いことが起こりました。
それぞれの担当者が作り始めていた世界観に、読者対象者の声が混ざり、昨日とは別の展開になったり、思いがけない変更案が生み出されたりしたのです。逆に、せっかくまとまりかかっていた本の構成が、私のバッドタイミングな情報提供で、クラッシュするようなこともありましたが――。
そんなことを面白がりながら1年がかりで創り上げた新刊本。私はこれまでにない形で「本を生み出す喜び」を感じさせてもらったような気がします。
印刷入稿が終わった段階では、版元ドットコムの「書店・図書館へのFAXDM」も、初めて利用させていただきました。
「知名度のない版元だし、反応がなくても次回のプロモーションの勉強ということで」などと弱気にかまえていたものの、送信当日の夜から、注文、注文、注文…のFAXが、たて続けに届きました。
書店の方々が、仕事がひと段落した夜遅くに、版元からのメッセージを見てくださっていることが直に感じられて、本当にありがたいと思いました。
今回の『Gift with BIKE 自転車が私にくれた贈りもの』の刊行にあたって、ひとつひとつのプロセスを手探りで進めてきたプロモーション&販売ですが、刊行から1か月過ぎた頃になって、はっと気づかされた(思い出された)ことがあります。
というのは、私が「手探り」だと思っていた自分の手法は、ずっと以前に勤めていた出版社で、経験させてもらっていたことだったのです。
その出版社では、編集会議で通った企画を進める際に、主だった市場データで裏付けをとることはもちろん、編集者直々に、自社で抱えている読者モニターなどに必ずヒアリングをし、企画のテーマや切り口などのアイデア出しを行っていました。
また年に数回は、発売日に合わせて、営業部以外の社員も各地の書店に分担して赴き、書店の店頭に立ち、自分たちが作った本をおすすめし、本を買ってくださった方々に声をかけ、会話の中にこぼれる意見や要望に耳を傾けていました。
そこでは常に上司から、「読者や書店員の声をきけ、きけ、きけ」と厳しく言われていました。
あまりに厳しかったので(笑)私は記憶の隅に追いやっていたようですが、今にして思えば当然のことだと、この道を進み始めて思ったのです。
当社はまだまだ駆け出しの部類に入る版元ですが、この2冊目の経験を初心として、丁寧に歩みを進めていきたいと思っています。
現在は、読んだあとにお寿司が食べたくなるような本を制作中です。
また、「はじめまして」のご挨拶をかねて、全国の書店を回らせていただいておりますので、書店のご担当者様、お時間のある際はぜひお話させてください。
皆さま、どうぞよろしくお願い致します。