人生の転機になった本の出版元で働いています
はじめまして、日本林業調査会の小坂と申します。
調査会というと研究員がいて、何か調査をしているというイメージを持たれるかも知れません。私もその一人で、大学の時には学術学会に関係する団体かと思っていました。
実際、災害などがあるとテレビ局から電話がかかってきたりします。もちろん研究機関ではありません。小社は、森林・林業を専門とした出版社です。
タイトルにある人生の転機について。1冊の本が人生を変えました。と言ったら大げさですが。私は大学時代に林学を専攻、当時はあまり熱心な学生ではなかった。森林という名の付く学科だったため、てっきり森林・環境保護について学ぶものと思い、林業とは思っていなかったのです。多分これは多くの学生が思っていることで、何度も大学を辞めようと思いましたが、とりあえず続けていました。ニュージーランドが好きで移住したいと思っていましたので、研究対象にNZ林業を選べば行く口実ができると。勿論自腹ですが。しかし、大学にはNZ林業に詳しい先生がいなかったので、担任から渡されたのが、小社で出している「諸外国の森林・林業」でした。この本を読んで、著者の先生に会いたくなり、人づてに面会の約束を得て、その後、著者の先生のもとで大学院に進み、林業の研究に夢中になりました。
それからしばし、本は大事に持っていましたが、林業の出版社を知ることもなく、日々は過ぎていきました。言い訳ですが、当時は就職氷河期真っ盛りで、林業うんぬんどころではなかった。ずっと林業には関係のない職種で働いていました。
家族の都合で遠方へ引っ越しをしてからは、ますます林学から離れていき、もう林業に関係する仕事に就くことはないのかと諦めていました。
しかし突然、関東に戻ることになり、偶然にも林学関係で求人があったという話を聞き、応募。その時点で、転機になった本の出版社だとは気づきませんでした。家に帰って、本棚を見返してみたら。とても不思議な気持ちになりました。縁というか、何というか。
自分の進路を決めた本の出版社で今、働いている。不思議です。遠回りして戻ってきた感じです。
先日、日本文学研究で有名なドナルド・キーン先生の講演を聞きに行った時に、経歴の紹介で、若かりし時に店頭で見つけた英訳の源氏物語が、安かったから買った。それが研究者になるきっかけだったという話を聞いて、恐れ多くも自分の過去と重なるものがあり、感動したのです。一緒にいた後輩とその話をしたところ、同じような体験で進路を決めたとのことでした。あらためて、本の持つ力はすごいと思いました。きっとたくさんの人の人生の転機なっているに違いない。
私は、今は主に書籍の受注、出荷などを担当しています。返本も処理していますが、ボロボロの姿で戻ってくると、とても悲しい。そういう思いもあって、出荷する時は、この本が、誰かの大切な本になったら良いなという気持ちで毎日梱包しています。9月からこの仕事を始めたばかりで業界事情にあまり詳しくなく、このような個人的なことを、長々と失礼しました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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