デジタル教材で元気になる
こんにちは。さくら社です。子どもも先生も元気になるような本づくりをモットーに、教育書を中心とした出版活動をしています。
さて。いま話題のデジタル教育。教科書改訂と同時に来春からデジタル教科書もお目見えすると、その是非を問う声も賑やかに盛り上がりを見せています。そんなデジタル教材、じつはさくら社でもDVD+BOOKとして刊行しています。
『子どもが夢中で手を挙げる算数の授業 小学1年生~6年生』(各1~5巻)
6学年に各5巻で全30巻。4ヶ月での一挙刊行は、よちよち歩きの零細出版社としてはかなりがんばっちゃった感じですが、これがおかげさまで、各地の教室にて大好評♪ そこで、どうしてこれが誕生するにいたったか、のお話をしてみたいと思います。
今を遡ることおよそ15年、90年代半ばのこと。当時小学校教師をしていた彼は、ある日、算数の時間に当時としてはめずらしいノートパソコンを教室に持ち込んで表計算ソフトを使い、表をグラフにして子どもたちに見せました。
数字の表組みから、クリックひとつで棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフに「変わる」!表の数値を変えるとグラフも「動く」! その瞬間、子どもたちからは歓声が上がったそうです。
受け持ちは6年生。もうすっかり算数の時間には意識が遠のく子も出てくるお年頃です。それが……そのときの子どもたちときたら、みんなもうグラフを見たくて見たくてたまらない。
こんな小っちゃなノートパソコンの画面ですから、一度に全員は見られません。そこで、交代で順番に見せることにしたのですが、「自分の順番が来るまで、静かにきちんと自習しないと見せないよ」という強圧的な指示もみんなお行儀よく黙々と励行。そして、順番が回ってくると、画面に釘付けになりながら、「わーっ!」「すごーいっ♪」
ふだんの教室の様子からは考えられないことでした。これまで、どんなにがんばって教えようとしてもなかなか響かなかったあの子どもたちが、数字とグラフに集中し、次の展開を待っているのです。それは、教師にとって衝撃的な出来事でした。
それまでも、もちろん授業の工夫はしていました。教師なら誰でも、子どもたちをできるようにしたい、わかりやすい授業をしてあげたい。彼も、指導法を勉強するだけでなく、教具をたくさん手づくりし、がんばりました。おかげさまで授業は盛り上がるのだけれど、しかし、一年間を通じて毎時間盛り上げることはできません。そこまでの量の教具をつくることはできないからです。だって、たいへんですから。
また、哀しいことに、どんなに熱意を持って教えても、わからないものはわからない。いやむしろ、教師ががんばればがんばるほど説明はくどくなり、子どもは、その説明を聞いているのがイヤになってきます。説明を聞くだけでは、受け身一方になってしまうからです(だからといって、活動一辺倒の授業もナンセンスですけれど)。
それが、表計算ソフトを少し見せただけで、一生懸命つくった教具よりも盛り上がった……。
単純に、じっとしているものに比べて動くものには自然と目がいくということもあります。しかし、ここには算数(の指導)の本質が表されていたのです。
算数は、「たす」「ひく」「かける」「わる」をはじめ、基本的に動詞でできています。平均は「ならす」。比較は量や速度を「比べる」。速度は言うまでもなく、動きを数字で表すものでしょう。だから本来、算数や数学は、動きを見せなければわかりにくい性質のものなのです。
そして、動きを繰り返し見ることで、誰でも(子どもでも)その法則性を感覚的につかむことができるようになるのです。
なのに教科書では動かすことができない。そこに大きな問題があったのではないでしょうか。それを補うための、黒板の手書き図や、手づくり教具。しかし、それらでできることは、かける労力のわりには、あまりにも小さすぎます。そして、たいていの場合、一回の授業にかけた準備や労力は、一瞬にして役目を終え、ほとんど繰り返し使われることがないという、はかなすぎる運命を持っています。授業内容はどんどん進んで、変わっていきますから。
「黒板では不可能だったことを、可能な限りわかりやすく、誰にでも使えるように」
それが、彼のテーマとなりました。そして、彼は小学校教師から、算数ソフトという教材開発者へと転身したのでした(やがて、その思いはさらに高じて教育書出版のさくら社をつくるにいたります)。
そのような次第で、さくら社のデジタル教材(算数ソフト)は、
①動く
②「動く」から法則を自分で感覚がつかめるようになっている
③「自分で」考えるようになるクイズやパズルのような演出がある
といった特長を持っています。
また、さくら社の算数ソフトには「桃太郎道場」というコーナーがたびたび登場します。これは、戦前に「受験数学の神様」と呼ばれた藤森良蔵が小学校低学年の保護者向けに説いていた「桃太郎の繰り返し」のお話に基づいています。
「桃太郎」のお話では、鬼退治の前に、イヌが来て、サルが来て、キジが来る。いずれも同じく、きびだんごをもらって家来になる、とまったく内容が繰り返されます。そう、ここが大事なところ。同じ話も三回繰り返せば、法則が理解できるのです。イヌが来て、サルが来て、キジが登場したときには、子どもも自分からお話の続きを言いたくなる。
それが「わかった!」の瞬間です。
そんなさくら社の算数ソフト、ぜひ一度触ってみてください。これを通して願うことは、
「日本中の子どもたちが算数好きになりますように! そうして教室が元気になりますように!!」