非常識な人々
今年の9月で編(あむ)書房も4年目に入った。10冊目の『図書館逍遥』(小田光雄著、2001年9月14日発売)は刷り部数は少ないが、確実に本好きの人に支持をされているようで、返品も今のところ少ない。出版不況の折、まあまあというところだと感謝している。最終的には返品がどれくらいになるのかまだわからないが、この本は図書館にずいぶん入れていただいた。こちらとしても図書館に入れていただきたい本として意図して出版はしたが。
ところで、3年前に会社を立ち上げたときに「これからはeメールの時代になる。きっとホームページで注文をとることになるだろう」と考えた。しかしそれは大間違いだった。HPのつくり方が悪いのかもしれないが、メールでの注文は思ったよりもぜんぜん少ない。HPの効果は宣伝に役立っているだけかもしれない。
もっと言ってしまえば、自社の宣伝よりもむしろ利用されている感じがする。最近よく売り込みのメールが入る。それはイラストレーターであったり、著者であったり様々だが、少なくともこちらの会社がどんな本を出しているのかぐらいは調べてからメールを出して欲しいものだ。先日もいきなり、「僕のHPの詩を読んでください。そして詩の出版に手を貸してください」という依頼。どうも詩が苦手のせいもあるが、彼のHPにまで行って彼の詩を読まされてしまった。そのあとで、「冗談じゃない、忙しいのになぜこんなふうに非常識な人につきあわなくちゃいけないんだろう」と腹がたってきた。
こういう人は本当に多い。イラストレーターにしてもテープ起こしの仕事にしても、相手の仕事ぶりや人柄を知ってからでなければ、小社のような零細出版社であっても、まず仕事は依頼しない。まして著者ともなれば、見ず知らずの相手と仕事をすることはぜったいに有り得ない。アメリカの大学の講師をしている日本人からいきなり国際便で原稿を送りつけられて、「お宅で出版して欲しい」と言われたこともあった。私から見るとトンデモ本だ。大出版社なら日常茶飯事のことかも知れないが、零細出版社にしてみれば「なに考えているんだろうこの人!」となってしまう。もちろんすぐに国際便で送り返してしまったが、お金はかかるし、いやな思いはさせられるし、非常識な人々が多いのにあきれる。
他にも非常識な人々がいる。就職活動中の大学生だ。真面目な人もなかにはいるが、たいていはこちらの出版物を読んでもいない、どんな本をだしているのかさえ調べもしないで「採用予定をお知らせください」というメール。採用予定など永遠にないのになあ。身勝手な人々にうんざりさせられる。それともこれは今の社会では常識なのか? 自分の都合だけ考えている人々ばかりの世の中はなんともさみしい。