之潮、これ以上
ハンモト(版元)という言葉は、業界以外では理解されにくい。
「え? 旗本」「橋本?」とか。
で、「出版社」と言い直す。
『日本国語大辞典』はもっているのだが、置き場所に困って200Km以上離れた倉庫兼別荘においてあるし、ジャパンナレッジも利用していないからなんとも言えないが、「版元」は多分江戸時代後期に業界用語として誕生した用語だろうと思っている。
わが社(と言っても女房と二人だけですが)の「之潮」という名前も似たところがある。
「ノシオ」さんですか、とか。
「コレジオです」というと、「はあ、これじお」ときて一瞬間がある。
領収書を書いてもらう時もいちいち説明するのが面倒で、つい「カタカナで、・・・」と言う。すると「コレイジオ」などと書かれたりする。
Collegioは、広辞苑では「コレジヨ」(ポルトガル語)や「コレージュ」(フランス語)としている。当方は漢字表記でthis trendの意味をもたせているのだが、「之潮」をネット検索するととんでもないことになる。「×××之潮×××」は中国語の文脈に頻出するらしい。
「之潮」の由来は、ホームページに掲載していますので、ご興味のあるかたはどうぞ(http://www.collegio.jp)。
2003年3月創立ですから、5年半を経過しているのに、出版点数が8点。
『月刊Collegio』(今は季刊)をカウントするとようやく40点を超す。でもそっちはほとんど「PR誌」(メッセージ誌と言っているが)だから赤字部門。
とにもかくにも「産業廃棄物はつくらない」という「エコ路線」を志向・実践してい(ることになり)ます。「××万部のベストセラー」などと一時浮かれても、その半分ほどは炊きつけにもならない「返品」の山か丘ですからね。
それで、突然ですが、「21世紀の日本は江戸時代」なのです。
米の飯を食べて「鎖国」するのです。
出版も江戸時代です。
1000部完売すればベストセラーのお祝いをするのです。
前にダイトリをやっていたハンモトでは、確実に稼げていながら出版途絶していた「江戸の古文書」系を復活しておいたので、いまもそこそこ食べているようですが、まあ、なんといってもトレンドは「江戸」ですな。しかしながら「柳の下に泥鰌10匹」か「雨後の筍」「団栗コロコロ」状態の「江戸本」の現状についてはテッテー批判しておきました(『図書新聞』2008年7月19日号「学術」欄書評)。
でも皆さん「江戸」と言って理解しているつもりなのは、実際は後半期以降。
そして、江戸のはじまりはよくわからないのです。
そこは戦国時代と地続き、武断殺伐の風がある一方で、個性奔放、創造的でアナルコな力強さの残照があった。「野武士」というゲリラが活躍する余地が残っていた。「野」があった。
こちらも、当面(というか、ずっとというか)ゲリラ戦を専らとする。
都心に出向かず。業界に染まらず。
×××山に籠もって。
実際に「必要」で、50年後にも「使える」ものを、少しずつ世に送る。
「フィールド・スタディ文庫」の『江戸・東京地形学散歩』は初刷完売状態で、現在増補改訂版作成中。同『川の地図辞典 江戸・東京/23区編』は、ネットで大変盛り上がりました。こちらは現在「多摩東部編」を準備中。
以上、紹介というか、ご報告というか。