楽しい仕事
小学館と講談社、いや、少年サンデーと少年マガジンのコラボレーション企画、すごいですね。コナンと金田一少年ですか。派手にドカンと花火を打ち上げるのは中小零細には真似できないことなのでとても羨ましく思います。広告代理店もがっちり絡んでるんでしょうけど、それにしても楽しそうじゃないですか。
とは言うものの、羨ましがってるだけでは埒があきません。中小零細でも何かできるはずです。というより中小零細のほうが何かやらないと生き残れません。
実は、弊社(語研)も他社(ポット出版)とのコラボ企画にチャレンジしております。いちおう準備は昨年の10月から始めていたのでサンデーとマガジンの発表の前ですね。語研からは『英語で秋葉原を紹介する本』(4月発売)、ポット出版からは『英語で新宿二丁目を紹介する本』(5月23日発売予定)という本を出します。装丁や本文のレイアウトは同じ出版社の本のように統一されています。コラボ企画・共同企画の例は過去にもありますが、ここまでそっくりの本作りはあまり例がないかもしれません。
企画のコンセプトについては弊社のWebサイトのこちらのページからプレスリリースをご覧ください。
元々昨年の夏頃に考えた「物語仕立てで秋葉原について英語で紹介する本」というコンセプトを企画書に起し、9月に社内の企画会議に提出したのが始まりです。その段階でのストーリーの原案など手元に残っていますが、できあがった書籍の方向性と大きな相違はありません。
まあ、理想と現実というか企画の実現までには紆余曲折ありました。毎週見ているNHKの「クール・ジャパン」で秋葉原が特集された時は企画を急がねばと焦ったりもしましたが、なんとかそこそこのスピードで発売までこぎつけ、正直ホッとしております。
国土交通省肝煎りのビジット・ジャパン・キャンペーンの「YOKOSO! JAPAN」ロゴ使用も最初から考えていましたが、申請したらあっさりと認可されました。オビに入っているのでご覧ください。ちなみに世界最大のゲイタウン新宿二丁目を案内するというストーリーの『英語で新宿二丁目を紹介する本』もロゴ使用の認可を受けています。国土交通省、なかなかやるじゃないですか。
さて、コンセプトを形にすることについてはある程度できたようにも思いますが、広報宣伝や販売促進については課題が山積みです。
今回の企画にはニュース性があるだろうということで各媒体にプレスリリースを送ってみました。業界紙(新文化、文化通信)とネット上の媒体アニメ!アニメ!、アキバ経済新聞、J-CASTモノウォッチ)では比較的気軽に扱っていただけましたが、紙のメディアは今のところほとんど反応がないようです。こういうのは普段からのお付き合いが重要なんですが、語学は実用書の扱いなんで書評と縁がありません。残念です。
書店も、企画そのものには好意的なお店が多くて安心しました。いつもと毛色の違う本なので多めにドカンと平積みで、とは思いますが、厳しさを増す出版不況の中、地味な出版社が急にあちこちで「ドカンと平積みで」とか言い出すと「この会社、危ないんじゃないか」と誤解されそうなのであまり無理はしていません。
これからの課題として書店に「ポットの本と一緒に置いて欲しい」とお願いしないといけないんですが、これも流通上の諸々の関門がありまして、なかなか難しいのが現状です。
解決策のひとつとして「ブックビジョン」というサービスを利用してみるつもりです。店頭に並べて販売することでどれぐらい効果があるのか。過剰な期待はしていませんが、今までと違うことができるだけでも有り難いです。
本当はデジタルビューの発売前全文閲覧というのもやってみようと思っていたんですが、スケジュール的に無理でした。またの機会にということで。
こうしてみると中小零細でもまだまだ色々できそうな気もします。
そういえば、つい先日、町の小さな書店で「本屋プロレス(文字通り本屋の店内でプロレスをする)」というイベントが行なわれたそうです。私は格闘技は痛そうなので見ないんですが、このイベントは楽しそうですね(イベントの様子(新文化)、戦ったレスラーの方のブログ、会場となった伊野尾書店のブログ)。
出版社も書店も、今までやろうとも思ってみなかっただけで、まだまだできることはたくさんあるのかもしれません。やってどうなる、と言われそうですが、少なくともやらないよりは楽しそうじゃないですか。どうでしょう。
今回のコラボ企画、できればシリーズとして続けていきたいと考えています。今のところは大阪(東大阪の町工場の親父が大手メーカーの新入社員と一緒に海外からの客を案内して鶴橋でホルモン食べたり通天閣のそばで串揚げ食べたりしながら日本の中小企業について熱く語る話)と原宿(本物のゴスロリが見たいという女子高の交換留学生と女の子同士で原宿に行ったら若い頃竹の子族だったお母さんが原宿駅で待ち構えていて昔の原宿や表参道を猛烈に説明してくれる話)と神戸・宝塚(貿易会社社長の奥さんとお嬢さんが取引先の娘さんと一緒に神戸を散策してからお嬢さんのお友達の宝塚歌劇学校の生徒さんをたずね、宝塚歌劇について夢を分かち合うお話)を考えています。
先日、神保町でばったり会った某社の方にこう言われました「この企画、谷根千(谷中・根津・千駄木の略、文化の香りのする東京の下町として有名)でウチも乗れませんか?」
谷中には学生の頃住んでました。藝大にやってきたハーバードで日本文学を専攻して「ハルキ(村上春樹)は『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』が一番面白かったかな」と流暢な日本語で語る学生と一緒に漱石や鴎外、乱歩の足跡をたどりつつ愛玉子(オーギョーチィ)や藝大の学食(大浦食堂)のバタ丼食べて最後に谷中墓地で花見をするというストーリーはどうでしょう。
楽しいですよ、出版。
売れないと悲しいですけどね。