会社設立から10年
私は、アイシーメディックスの代表をさせていただいております堀切です。
10年前にこの出版社を設立しました。
社名の「アイシー」とは、「インターナショナルコミュニケーション」の略で、日本で作った本を世界にもっていきたいとの自分のビジョンとしてつけました。また「メディックス」とは、よくメディカル関係の本と間違えられるのですが、「メディアミックス」の略で、いろいろなメディアと一緒に発信したいという思いから、「アイシーメディックス(ICMedix)」とつけた訳です。
どこの出版社もそうでしょうが、実績も名もない出版社を立ち上げるにあたって、一冊目を作り上げる時には大変な苦労をしました。何もかも始めから一人でやらなければならず、どのように製作、印刷、販売をしていいのかも分からないまま、とにかく取り掛かりました。
ある方から自分史を出したいと依頼を受けたのが一作目。しかし、その自分史の原稿をいくら読んでも、それだけでは売れるようなものとは感じられなくて、ダメ元で直木賞作家を見つけてお願いすることにしました。作家の手により一人の人の半生を書き上げてもらいたいと考えたのです。
人間のことを書いていただくに当たって、ミステリージャンルが得意な作家にお願いしようと思い、探しました。依頼する方法も知らなかったものですから、名簿を見つけて直接電話をし、事務所まで会いに行きました。印税のことなども聞かれましたが、いくらくらい出せばよいのか分からないまま、その作家の先生の一言一言や行動などから判断し、印税額や内容を決めていき、スタートしました。
それ以前に、雑誌のカメラマンや出版プロデュースのような仕事はしていましたが、始めから最後まで一冊の本を作り上げる細かい工程を把握しないまま出版社を興してしまいましたので、無謀といえば無謀なことだったのかもしれません。
しかしその反面、出版界の常識に捉われることなく自由な発想の下でいろいろなことを考えることができました。そして、国内、海外のブックフェアーにも足を運び、出版の世界の考え方や動きについて、独自に感じ取ることができてきました。
出版界は今後も、携帯電話など他メディアに押され不況が続くといいますが、毎日電車の中で本を読んでいる人を数えていますと、活字文化に対する興味と期待は決して落ちていないと感じています。
出版業界が隆盛であった頃を体験し、現状と比較することができていたならば、私はもっと悲観的な考えをもっただろうと思うのです。しかし、そのような時代を知らない私にとっては、まだまだビッグチャンスが出版界にあることを確信し、日々の仕事をしています。
どうぞ宜しくお願いいたします。